ケイケイの映画日記
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2021年01月31日(日) 「なぜ君は総理大臣になれないのか」




12月より映画館は絶賛自粛中で、この作品も先週の土曜日の昼下がり、日本映画専門チャンネルで視聴。当時の民主党から国会議員に立候補した小川淳也議員の、現在までの17年間を追ったドキュメントです。未曾有のコロナ禍の中、何故これほどまでの混迷を政治が招いたのか、自分なりに感じられる、実に貴重な作品でした。監督は大島新。

先だっての国会でも注目を浴びた小川議員。1971年香川県に生まれ東大を卒業後、自治省(現在の総務省)に入省。2005年初当選。民主党、民進党、希望の党、無所属を経て、現在立憲民主党の議員です。

小川議員は、とにかく一環として清廉にして高潔。国のために自分が何が出来るか?それだけを強く模索している政治家だと、作品を観て感じます。それがプロフの政党の変遷だけを見ると、ブレブレの人なのかと思えますよね。まずここが怖いと思いました。逆もまた真なのでしょう。

観ていて中盤くらいに思ったのが、この人は国政ではなく地方政治の方が向いているのではないか?でした。それを夫に言うと、「元官僚やろ?地方ではなく、やはり国を見据えたいのと違うか?」成る程。北海道の鈴木知事は、都庁に勤務だった事を思えば、合点も行きます。


前原議員の右腕であったため、筋を通して希望の党に入党しますが、例の小池都知事の「排除します」発言で、政界再編成か?のムーブメントは敢え無く凋落。代わりに男を上げたのは、立憲民主党を立ち上げた枝野議員。バスの中で、参謀役の友人に「世間では、今枝野さんかっこいいになっているよね。うん、かっこいいもん。無所属で立候補した方が良かったかな・・・」と吐露する。あの騒動の中、こんな困惑を抱えていた議員が居たとは、全く考えていなかったので、彼の弱気は正直者に感じます。

若かりし頃の整った童顔は純朴そのものでしたが、当選回数が増える程、顔つきは精悍さを増していきます。しかしまだまだ「いい人」の顔です。相変わらず、清廉・高潔なのですね。彼は変わらない。政治家はどんなに笑顔を見せようが、内心のしたたかさ、腹黒さが顔に出ている人が多いです。良くも悪くも、それが「プロ」の政治家なのでしょう。

私は全編通じて一番感じたのは、この好感の持てる小川議員のアマチュア感です。それを痛感させたのは、誰あろう小池都知事。彼女は選挙での敗北を、当時「ガラスの天井に阻まれた」と言いましたが、違う違う。彼女に国民が期待したのは、国民の感情に寄り添い、弱者も強者も分け隔てなく包み込む、女性特有の包容力だったと思います。それが、容赦なく自分に従わない者は捨てて行く姿に、国民は落胆したのだと、当時私は思いました。

してみると、今回のコロナの政局の混迷の一端は、小池知事に責任あるんだと、目から鱗でした。あの時彼女が、旧民主党を全部包み込んでいたら?政権が交替していたら?世界中、誰もが正解が解らないコロナ対応です。希望の党が政権を握ったとして、上手く機能したとは、それこそさらさら思いません。でも少なくとも、今よりは、もう少しましだったんじゃないかなぁ。

しかし小池知事は、「世紀の失言」後も、順調に都政を邁進。スキャンダルまみれの自伝が出ようが、妖怪のような自民党の重鎮議員と丁々発止しながら都政を勧めているのは、自分の損得であるのは透けて見えるのに、人気は落ちない。すごいよ、百合子。これは皮肉じゃありません。失点をいつの間にか挽回し、成果が良くわからないのに、凄く汗をかいて成果が出ているように見える。とにかく自分を良く見せる演出が上手い。これこそプロの政治家じゃないかな?人気商売の一番手は、政治家なのだと痛感しました。

小川議員は、自分は欲が圧倒的に足りないので、総理大臣にはなれない、と言います。欲かな?そうじゃなくて、小川議員に圧倒的に足りないのは、小池百合子的狡猾さと、演出力じゃないでしょうか?うん、やっぱり総理は無理だわ(笑)。

彼の政治思想は「前原さん程右ではなく、枝野さん程左でもない」。しかしそれこそ、今多くの国民が望んでいる政治思想じゃないでしょうか?アメリカの大統領選挙で、トランプが破れ、日本では安倍元総理が退き、大阪都構想は市民からNOと引導を突き付けられ(二度も!)、愛知の大村知事リコールには、大掛かりな不正が確認され。世界中がコロナに疲弊して一年、私は極右や右翼的な考えが支配していた世の中が、変化しつつあるように感じています。

彼に足りないものは、狡猾さだけではなく、政治家らしからぬ信条を貫くための孤高さかな?でも「政治家には反対」と、両親・妻・二人のお嬢さんが口々に言いながら、一生懸命小川議員を応援する姿を見ると、これは可能かも?御家族が支えてくれるはずです。清廉・高潔・孤高と言えば、私が思い起こすのは、三木元総理。おぉ、総理!(笑)。立憲民主では、可能かもしれません。小川議員、この作品を観て大好きになりました。本当の意味で、国民に慕われる「プロの政治家」に、是非なって下さい。




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