ケイケイの映画日記
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2019年08月15日(木) 「よこがお」




う〜ん・・・。俊英・深田昇司監督作品で、とても楽しみにしていました。でもなぁ。私にはどうしても解せない致命的な箇所があり、初動で既につまづき、そのまま突っ走ってしまいました。とても残念です。今回ネタバレです。

優秀な看護師市子(筒井真理子)が訪問看護に訪れる大石家。そこにはニート気味の長女基子(市川実日子)がおり、祖母の看護を担当する市子に、憧れ以上の感情を抱いています。ある日、大石家の次女で高校生のサキが誘拐されます。ほどなく保護されますが、犯人は大学生の市子の甥。愕然とする市子ですが、事実を知る基子は、誰にも言わないでおこうと、市子に懇願します。

私がどうしても捨て置けないのは、警察の事情聴取に市子が呼ばれない事。呼ばれないどころか、立ち話も接触もなし。誘拐は大罪です。とある殺人事件の重要参考人が、いつも立ち寄る店の人から聞いた話しですが、とにかく何度も警察が来るのだとか。同じ事ばかり何度も聞かれ、記憶が曖昧な部分で少し違うと、前回とは違うと突っ込まれる。思わず「私が疑われているのですか?」と、聞き返した程らしい。もちろんその人は、容疑者が馴染み客だっただけで、それ以上も以下もない人です。

誘拐は殺人と同じくらい大罪だと思いますが。この場合家族全部の交友関係、大石家に出入りしている人全部から、犯人との繫がりを探し出すはず。実際市子を通じてサキを見たのは確か。犯人は市子の甥であると露見するのは、週刊誌なんかのもっともっと前のはず。この部分が、どうしても解せません。

市子はどうして基子の言いなりになるのか?患者(基子やサキの祖母)が気になるのは、良くわかる。市子は世の中で引く手数多の看護師です。この事がバレて、金銭的に困る事もないはず。むしろきちんと釈明して、担当を変えて貰えば済む事です。家族が事実を知れば、自分の顔も見たくなかろうと、想像出来なかったのかな?ここで事実を明らかにすれば、婚約者の医師(吹越満)に内緒にするのは、不誠実ですが、可能だったはず。

そしてまた解せないのが市子と基子の関係です。基子が介護福祉士になるための勉強を市子は見てやっています。、大石家の中での事なら、本来はNGですが、人のする事です、ぎりぎりセーフだと思う。しかし、家の外の喫茶店で勉強を見てやる必要性は?基子はニート気味で家に居場所がないでしょうが、介護福祉士になる夢を、親は喜ぶはず。何よりサキの勉強まで市子はみている。どうして家じゃダメなの?何より担当家族との個人的な付き合いは、医療・看護・介護ともご法度のはずで、この光景を他の担当患者や家族に見られたら、特別な付き合いを推測され、困るのは市子だと思いますが。

そして、正にこの時、甥はサキを「見初める」のです。それをわかっているはずなのに、何度も「私、本当の事を言おうと思うの」と言っても、結局言わない。基子が何を言おうと、関係ないです。間接的な自分の責任を棚上げして、叔母だと家族に告げない市子を、私は厚顔無恥な女だと思いました。

そして市子は、ナースステーションの同僚との会話で、基子をやや持て余している。なのに、どうして彼女の言う事を聞くかなぁ〜。市子も本当は叔母だと言いたくないのでしょう。でもその理由が私にはわからないのです。

市子を慰める名目で、動物園デートに誘う基子。ここで密やかな性にまつわる体験を告白しあう二人。誰にでも一つや二つ、そんな秘め事はあるでしょう。しかし、「そんなつもりはない」と語る市子の思い出話に、私は引きました。小学生の男子が寝ている間に勃起するなど、看護師なら理解の範疇じゃないの?

アイデアありきで、あれもこれも継ぎはぎだらけに思えました。甥の母親がオーバードースで死んでしまって、市子が甥の身元引き受けするプロットもそう。この母子、母子家庭だったの?父親は?母子家庭である説明なんか、どこにあったの?生きているの死んでいるの?生きているなら、身元引き受けは当然父親です。これも強引に市子に甥の引受人をさせたいがための流れで、腑に落ちない。

そして甥のパンツをずらした件を、変態として脚色して、マスコミにばらした基子に復讐するため、基子の彼(池松壮亮)に近づき、首尾よくセックスまで持ち込んで、その現場写真を撮って、基子に送信する。復讐がしょぼすぎ(笑)。その時も眠っている彼の横で自撮りと、自分だけのヌードの自撮りを取りますが、そのヌードが角度的に陰部。市子ってやっぱり、変態じゃないの?(笑)。

冷静に考えて、一番悪いのは甥。その次は自己保身にかかった自分ですよ。逆恨みではないけれど、基子の暴露も身から出た錆だと思います。基子に復讐なんて、お門違いも良いところです。他にも無実の濡れ衣の児童性的虐待ですが、その疑いをかけられた市子を、子供を見守る仕事につけさせたのは、私は悪趣味だと思います。

「淵に立つ」の時は、あれこれ意味を反芻して楽しめましたが、今回はツッコミが多すぎて、思わせぶりなシーンも全く乗れず、面倒臭いだけでした。キャッチコピーの「彼女は無実の加害者なのか?」の問いには、私はイエスと答えたい。

今回楽しめたのは、筒井真理子様の美しいお姿と演技のみ。この人、60前ですよ?年齢から考えると天晴れなヌードを見せたり、息子ほどの年の池松君とキスしたりベッドインしても、全く違和感なし。いやー、ご立派ご立派!監督のミューズなんですね。そこは監督、目が高い(笑)。

力量ある監督さんではあると思います。次回も見ますので、期待しています。


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