ケイケイの映画日記
目次過去未来


2019年07月09日(火) 「Diner ダイナー」




ワォー!超楽しかった!蜷川実花の作品は、「さくらん」「へルタースケルター」と観ていて、二作とも面白く観たのだけれど、この作品が一番。世間様では賛否両論分かれているみたいですが、今回はっきりしました。私には蜷川実花合います。大好き!

母に捨てられた寂しい生い立ちを持つオオバカナコ(玉城ティナ)。日給30万円に釣られ、怪しげなバイトに手を出して、拉致されます。寸でのところで命拾いしたのも束の間、ボンベロ(藤原竜也)が帝王のようにシェフとして君臨する、殺し屋ばかり来るダイナーのウェイトレスとして送り込まれたカナコ。その直後から悪夢のような日々が始まります。

世界観がとても面白い。グロテスクで乙女、禍々しくてセンチメンタル。画面はどこもかしこも色彩に溢れ、キッチュで華やか。例えるなら、アメリカ映画によく出てくる移動遊園地とかサーカスみたい。

キッチュな感じは内容もそう。安いです。てか、中身はない(笑)。原作は虐待された、親に男娼として売られた、実父に殺されそうになった、心ならずも母親を殺した、等々、彼らの心が壊れ、殺し屋になった背景が描かれているそうですが、その哀しさはばっさり割愛。原作を読んでいる三男によると、悲惨すぎて万人受けしないと思うとか。

その代わり、自己評価が著しく低かったカナコの心の変化を描き、ちょい気の利いた台詞を配し、後は出演者全員、もう〜かぶくかぶく。殺しが主体なので、血は見るのですが、ドバっとした流血は花びらで表現。私はこういうセンス、好きだなぁ。死んだボスの真相なんか、すっ飛ばしても何の影響もないんですが、何と亡くなった監督のお父さん・蜷川幸雄が遺影で登場。主演の藤原竜也は蜷川幸雄と縁が深く、まぁ監督とは親戚みたいなもん。楽屋落ち的な使い方ですが、私は父への敬愛を感じて、良いと思います。

そんなカブキもんばかりの中、普通のシェフの出で立ちながら、燦然と輝き、貫禄さえ感じさせた藤原竜也。私は美形のとっちゃん坊や的にずっと感じていましたが、虚構過ぎる世界には、その個性がズバッとはまって、コスプレなんかしなくても、全然作品に溶け込んでいたのは、嬉しい誤算でした。

その他は、玉城ティナちゃんて、物凄く可愛いのね。お芝居もまずまずだし、メイド服が似合い過ぎて可愛すぎてもぉ〜。真矢ミキも久しぶりの男装がとってもカッコ良かった。帽子に手をやる仕草や何気ない仕草など、ハードボイルドかつエレガント。やっぱ虚構の世界では、宝塚の男役は無敵の魅力よね。その手下に真琴つばさまで出てきて、アクション見せてくれました。元ヅカのトップ二人が出てくるなんて(それも男装!)何と贅沢な。

スキン(窪田正孝)が、「ボンベロを守って」とカナコに告げます。まぁ〜こんな頼りないお嬢ちゃんに何言ってんの?と思いましたが、ラストの銃撃戦の時、すんごい納得。守る→生かす→生きる希望を抱かせる→生きるのを諦めない、って事でした。中身スカスカと言っている人、ここ読み取ってね〜。スキンの台詞は、無駄な台詞じゃないんだよ。カナコは立派に役目を果たしていました。

さぁ寄ってらっしゃい観てらっしゃいの、見世物映画です。私はすごく楽しかったけど、この感想読んで興味が湧いたら、是非ご覧下さいね。


ケイケイ |MAILHomePage