ケイケイの映画日記
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2019年03月08日(金) 「翔んで埼玉」




壮大な茶番が謳い文句の作品。茶番も茶番、大茶番。でも本気出して作った茶番は、秀作になり得ると言うお手本でした。ご当地埼玉も大ヒットと聞いて、ディスられてるのに、埼玉の人って器が大きいなぁと感心しておりましたが、観れば納得。大爆笑の中に、埼玉愛も風刺もたっぷりの作品でした。監督は武内英樹。

とある時代。埼玉県民は、東京に行く時は通行手形が必要等、東京都にひどい差別を受けていました。東京都知事(中尾彬)の息子百美(二階堂ふみ)が生徒会長の白鳳堂学院でも、その差別は踏襲されていました。ある日、この学院に容姿端麗で洗練された帰国子女の麻美麗(GACKT)が転校してきます。生徒の耳目を一新に浴びる麗ですが、彼こそは埼玉開放戦線のメンバーだったのです。

確かにコミックの百美はあんな扮装ですが、ふみちゃんやり過ぎだよと予告編では思っていましたが(つけま3枚くらい重ねているし)、何の何の、決して薄くない個性の、若手きっての演技派のふみちゃんでさえ、あれくらいやらないと埋没するほど、他のキャストが濃い(笑)。

白鳳堂学院のカーストトップは、まるで宝塚の様相だし、知事夫人(武田久美子)は、マリー・アントワネットだし(笑)。四十男のGACKTの高校生姿が違和感ないと絶賛されているようですが、その褒め方はベクトルが違う(笑)。元々GACKTが異次元の住人みたいだから、このふざけた世界観に違和感ないんだよ。他にも伊勢谷友介に京本雅樹、ブラザートムに竹中直人、益若つばさに小沢真珠、麿赤児まで!普通なら、うわ〜、もういいですと言いたくなるはずが、小ネタの積み重ねで笑いを取るのが鉄則の作りなので、みんなここまで弾けてくれるのかと、感動すらしてしまうのね。

バカバカしいお笑いの中に、風刺もきっちり。埼玉だけが東京にバカにされているのではなく、千葉や茨城も同様なのに、「埼玉に言われたくねーわ」と好戦的。いやいや敵は東京だよ?埼玉同士だって、うちは埼玉でも都会、お前んち埼玉の田舎と、ここでもカーストを作る。これどこでもある話しですよね。
極めつけは、麻生久美子の妻が、ブラザートムの夫に、「あんた新婚旅行でグァムに行った時、フロム・トーキョーって言ったよね?」。愛しているのに田舎と恥じているのですねぇ。ダメな思考なんですが、なんだか切ない。

でもこれ関東圏だけの問題だよ?私は埼玉と言えば、西武ライオンズとクレヨンしんちゃんの住所(春日部)しか知りませんが、ダサいとか思った事ないもん。千葉や茨城もそう。草加せんべいは浅草の名産品だと思っていて、埼玉の人、ごめんなさい。あぁでも、関西でも第四位の県はどこだ?的な特集、テレビでやっていたな。滋賀・和歌山・奈良で争うのだか。これ東海や九州など、全国各地で争いが勃発しているんでしょうね。

レジスタンスの様子は、手の込んだギャグの応酬で、めっちゃ笑います。私は千葉と埼玉の有名人対決が一番好き!

それと伊勢谷友介とGACKTのキスシーンがありましてね、おぉ、四十男同士だって、美しければBLねと、うっとりしておったのですが、私が思わず想起したのが、この作品の原作者魔矢峰央の「パタリロ!」の、バンコランとマライヒ。以前に中年以降の女性は、同年代の男性より同性愛に寛容だと言う統計があると読みました。それって絶対「パタリロ!」のお陰だよ。この作品の百美(女にしか見えんが)と麗だって、そうだしな。意外なところで、魔矢峰央の先見の明を発見しました。

埼玉県人は、埼玉への愛を再確認して、東京都民も、傲慢だった自分たちを反省し、めでたしめでたし。どこに住んでも、郷土を愛し誇りを持って生きましょう!と言う素晴らしいメッセージが込められた作品です(←マジですから)。


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