ケイケイの映画日記
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2017年12月17日(日) 「オリエント急行殺人事件」




結婚記念日に夫と見てきました。最近は旅行が多いのですが、今年はランチと映画とイルミネーションを観ようと相成りまして、まず映画の選択。本当は夫好みの「アベンジャーズ」の予定でしたが、ランチをフルコースにしたため長引き、「『オリエント急行殺人事件』は?お父さんストーリー知ってる?」と聞くと、知っているとの返事。怪しいので「犯人は誰?」と聞き返すと、「そらお前、海賊やろ(ジョニデ)。」と自信満々。   

と言うことで、「知らない」事が判明したため、一人で見ようと思っていたこちらにシフト(笑)。元作は中学生の時ロードショーで観て、大好きな作品です。なので楽しみにしていたのですが、色々残念な出来でした。監督はポワロを演じるケネス・ブラナー。

イギリスでの事件の依頼を受け、オリエント急行に乗車中の名探偵ポワロ(ケネス・ブラナー)。しかし雪で脱線事故に遭った車内で、アメリカ人富豪ラチェット(ジョニー・デップ)の殺害されます。乗客は12人。果たして、この中に犯人はいるのか?ポワロの灰色の頭脳は、推察していきます。

圧倒的に足りないと感じたのは、華やかさです。今作も、ミシェル・ファイファーやジュディ・デンチ、ウィレム・デフォーなど、それなりに豪華な配役ですが、元作は当時を考えれば、その比じゃなかったです。キャストの多くが、主役を張る名優やスター俳優じゃなかったかなぁ。

元作のキャスティングは、ここをクリック

私は原作未読なので、当時賛否両論だったアルバート・フィニーのポワロにも、臭みがあって仰々しいと思うくらいで、可もなく不可もなく。まぁ中学生だからね。なので今作のブラナーのポワロにも、別に違和感はなしでした。

あったのは役者としてではなく、監督として。親愛なる映画友達によると、原作に忠実なんだとか。でもポワロって、アクションをこなすの?灰色の頭脳の持ち主は、そんな事脳みそ筋肉の体育会系の刑事に任せない?内容は有名過ぎるくらい有名なので、変更は出来ないでしょう。それで今感を出そうと、黒人医師アーバスノット(レスリー・オドム・Jr)を登場をさせての、人種差別の描写なのかと思います。でもこの作品に、それは必要かな?小手先で挿入した感満載で、取ってつけたようです。だから罪悪感が薄く、これなら無い方がまし。

アンドレニ伯爵夫妻は、何故にダンサーなの?伯爵役セルゲイ・ボルーニンは高名なダンサーだそうで、それなら何故ダンスシーンを入れないの?あの唐突な回し蹴りは意味あるのか?元作のジャクリーン・ビゼット&マイケル・ヨークは、若々しいのにエレガントで、繊細な新妻を守るヨークの姿が印象的で、なるほど伯爵様(外交官でもある)だったのに、今回の野蛮な伯爵様は、非情に残念でした。

デンチの演じたドラゴミロフ公爵夫人は、さすがの存在感でしたが、それでも元作のウェンディー・ヒラーに私的には軍配が。私がヒラーを観たのは、その時だけでしたが、とにかく怖いお婆さんで、怖いだけじゃなくて、凍てつくような厳しさも感じ、声が低くて、本当は男の人なのか?と思ったほど。ヒラーも原作通りの醜女ではなかったけど、お年寄りにしては綺麗に見える部類のドラゴミロフ公爵夫人って、どうよ?

何し負う名女優のデンチですから、彼女の演技には文句はなく、これは演出が淡白なんじゃないかと思い至り。デンチばかりじゃなく、ジョニデにしろ、私の好きなファイファーにしろ、ペネロペ・クルスにしろ、その他全部、元作より演技がどうのこうのじゃなく、存在感が薄いのです。負けていないのは、ポワロだけ。

そこで、あぁなるほど。これは監督が自分が一番目立ちたかったのだなと納得。強烈な個性と存在感で、観客を煙に巻いたフィニーのポワロでしたが、終わってみれば、彼は狂言廻しでした。しかしこの作品のブラナーは、アクション見せたり、過去(今かも?)の恋を再三匂わせたり、一番の花形でした。なので、オチが解明された時に、カタルシスや憐憫の感情が半減。話しを盛り上げるより、自分の見せ方を気にし過ぎです。キャストは気の毒だったなと、今は思います。特にジョニデのラチェットには、期待していたんだけどなぁ。憎たらしさ満点、殺されて当然だと、溜飲が下がったリチャード・ウィドマークには及ばなくて、残念です。

風景もCG、料理もそれ程愛でられず、正直言うと、前半は寝オチしそうになるのを、食い止めるのに必死でした。作品のラストでは、どうもナイルに行くそうで。「ナイル殺人事件」も面白くて、いい作品で、恰幅よいピーター・ユスチノフのポワロも好きでした。ナイルに行く時は、どうぞポワロと監督は別々でお願いします。


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