ケイケイの映画日記
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2017年07月17日(月) 「破門」(BSスカパー全8話)




うちはスカパーではなく、ケーブルなのですが、ちょうどチャネルNECOで全話放送で、録画して観ました。映画の「破門」を観た時、これは多分マイルドに脚色しているのだろうと検討はついていましたが、骨格やストーリーは同じでも、変更している箇所多々ありでした。結論を言うと、断然ドラマがいい!でした。

ストーリーは、映画で描かれた部分は原作の「破門」で、ドラマはその前に原作の「疫病神」が描かれています。時間の関係もあるでしょうが、映画では最初から、嫌よ嫌よも好きなうち、的な桑原と二宮の関係性でしたが、ドラマではずっと二宮が振り回されており、あくまでビジネスで繋がった関係性が強調されていました。その振り回され方が、本当に命がけ。あれは死んどっても、おかしないな。

映画のインテリやくざ風の佐々木内蔵助に対し、こちら北村一輝の桑原は、とことんイケイケで、濃いのは顔だけではない。二宮の生死がかかっていても助けに来ないし、自分の気分で二宮を堅気扱いしたり、極道扱いしたり。あー、なんのかんの言っても、所詮はやくざやわと思わせつつ、ポイントポイントで男気を見せたり、間一髪で二宮を救ったりを描き、表面の暴力性だけではない、桑原の多面性と人間味を映します。観ている者の感情は、そっくりそのまま、二宮の桑原への評価の変更となるのです。まぁその後も踏んづけられるねんけど(笑)。映画の二人が、さっさと絆めいたものを深めるのに対して、ドラマの二人は常に付かず離れず。お互い腹の探りあいをするような、ドライな感じが続きます。

決定的に違ったのは、二宮のキャラ。濱田岳が演じていますが、映画の横山祐の、ただのヘタレ、グータラとは違い、完全なギャンブル依存症。頭の中は一山儲けて、借金を返すことばっかりです。そして父親の看病中の母親に、金を貰う等、ヘタレを通り過ぎたクズっぷり。それが桑原に連れ回されるうち、金ではなく生死を賭けた「賭け」に、ひりつくような快感や高揚感を感じ始める様は、やはり極道の血(父親が極道幹部は同じ設定)なのか、それともギャンブルジャンキーのせいか?人間の持つ闇の深遠を垣間見せる二宮を、愛嬌を兼ね備えて、好かれるキャラにしたのは、一重に岳ちゃんの好演だと思います。
散々酷い目に遭わされ、あれだけ嫌っていた桑原の窮地に、「俺と桑原さんは、一蓮托生や」と決意する姿は、いよ!男前!と、大向こうから声を掛けたくなるほどです。

しかーし!岳ちゃんも大変良いのですが、何と言っても北村一輝っすよ。もうかっこいいの、なんの。映画が少々柄は悪いけど、全国で受け入れられる大阪弁だったのに対し、こちらネイティブ大阪人の北村一輝、巻き舌も滑舌良く、柄の悪さ全開(笑)。あー、これは育ったもんしか、話されへんイントネーションやわと思う箇所が、数知れず。「行くで」が「行くでぇ〜」。「なんじゃ!」が「なんじゃい!」等々。大した事もないのに、「死んでまえ」(死んでしまえ)と言ったり。他の地方の人はびっくりするでしょうけど、「死んでまえ」は、「お前はアホか」くらいの値打ちしかないフレーズでしてね、「死んでまえ」が上手く決まったシーンでは、妙なカタルシスがありました。あれ、北村一輝のアドリブと違うかなぁ。

この役は、かっこいい!しか思い浮かばない程素敵でした。どれくらい素敵かと言うと、素人を殴っても素敵に見える(笑)。まぁ小清水ですけど。ヤクザ同士の時も、回し蹴りやらスッと綺麗に右手が出て、パンチ食らわす場面も、まぁ素敵だわ〜と。北村一輝は売れっ子なので、あちこちで見かけますが、もうこれからは、平凡な二枚目なんかせず、ヤクザヤクザの合間に、変態・殺人鬼役なんか、どや?とにかくキャラは濃い方が合います。この高揚感、「仁義なき戦い」をシリーズで観ていた時にも、ありました。

このドラマがスカパー製作だったのも、昨今の世相から、この高揚感が危惧されたのでしょう。ドラマは大阪の裏カジノも出てきましたが、映画では外国のカジノ。二宮のキャラ変更も、その辺を配慮してのことでしょう。じっくり描けているので、ドラマの方が良かったですが、改めて映画も上手く処理して、まとめているなと、思いました。

ただいま「破門」ロス中です(笑)。でも大丈夫、録画なので何度でも観られるのさ。続編の「螻蛄」も作られているので、こちらも是非とも観ようと思います。


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