ケイケイの映画日記
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2016年08月07日(日) 「シン・ゴジラ」

8月中に観れば良いかと思っていましたが、評判良いので、早速観てきました。私は子供の頃映画館やテレビで昭和の「ゴジラ」シリーズを何作か観たり、平成ゴジラは三男か好きだったので、映画館やレンタルでほぼ観ていますが、それほど思い入れがあるわけではなく、記憶もあやふや。一昨年のハリウッドの「ゴジラ」も、そんなのも観たね、程度でキャストしか覚えちゃいない(笑)。そんな私が観て、今回のゴジラは、大変面白かったです。脚本・総監督は庵野秀明。特技監督は樋口真嗣。

東京都に謎の巨大生物が現れ、都を壊滅状態にします。緊急に会議を開いた政府は、対策を練り、巨大生物と対峙します。

まぁ筋はこれだけです。最初の幼虫状態のゴジラのビジュアルが、何とも気持ち悪くて。私の記憶のゴジラの子供と言うと、ミニラですから(笑)。今回初の完全CG化ゴジラは、当然このままではなく、その利点を生かして、、段々と進化していく様子が禍々しく、上の画像が完成形です。いつものゴジラ。



ゴジラが東京湾から上陸する様子は、津波で飲み込まれた街を描き、3.11を彷彿させます。ゴジラの咆哮と共に燃え上がる街には、私の脳裏に焼き付く神戸の街も思い出しました。これは意図的だと思いました。

政府は緊急に会議を開くも、政策・公式発表も後手後手に回り、現実とリンクします。閣僚・官僚交えての会議での応酬が、クスクス笑えます。総理は最初は大杉蓮、次の捨て石の暫定政権では平泉成が演じますが、どちらもバカっぽい。観ていると総理として一番大事なのは、周辺の側近や閣僚選びなんだと痛感します。裸の王様にならないために。特に暫定だった平泉総理のグッジョブを観ると、国の一大事のためには、プライドもかなぐり捨てる必要も感じました。

徹底的にウェットな感情を廃し、恋も友情も親子の絆を描く事もなし。皆が国を救う事に奔走します。この作りはすごく良かった。下手に描くと、緊張した画面が一気にユルユルになるので、これは正解だと思いました。なので、大災害が起きた起きた時の、シミュレーションのセミドキュメントドラマを観ているような感覚が、ずっと持続します。

政治家のドラマとしても、狡猾ながら、冷徹な分析で政治的手腕を発揮する竹野内豊に対して、ホットでクールな両面を併せ持つ野心家の長谷川博己を前面に出して描き、政を司るには、この両輪が必要なんだなぁと感じました。

自衛隊が命の危険を顧みず出動する時、「彼らも覚悟して入隊しています」と、上官が答えます。これは日本の安全を守るための覚悟、です。決して他国の戦争に首を突っ込む覚悟じゃないはず。この台詞を敢て言わせたのは、私はそういう含みもあったかなぁと、勝手に解釈しています。

咆哮しながら光線を放ち、東京を破壊して行くゴジラ。ゴジラが何故生まれたのか?その意味を考えると、その姿は神の使いとして神々しくもありました。
ここまで来なければ、人間はその罪深さを気付けないのでしょうか?アメリカの茫然とする提案を、懸命で阻止しようとする日本の民に、このゴジラ映画から、教え請う事はたくさんあると思いました。

ただ一点、どうしてアメリカからの特使が石原さとみなんだろう?日系人の設定でしたが、英語と日本語の配分も上手く機能していないし、私の稚拙な聞き取りでも、彼女の英語はネイティブではない。フェロモン出して得する役でもなし、何故彼女の起用とあの演出?彼女が出てくると、一気に画面が安くなる。東宝なんだから、心境著しい長澤まさみじゃダメだったのかしら?女性陣では、いつも能面、でも仕事は抜群に出来るリケジョをユーモラスに好演した、市川実日子が良かったです。

私は「エヴァンゲリオン」も知らないし、この作品で使われた数々のオマージュも、おぼろげにしかわかりません。でも断言出来るのは、ゴジラ映画としても、政治ドラマとしても、素晴らしい作品だと言う事。世界に出して恥ずかしくない作品に仕上がっていると思います。一瞬だけの出演で、たくさんの俳優・監督が出演しています。それを数えるのも楽しいかも?8月は原爆記念日のある月。8月に観る意義も意味もある作品だと思います。


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