ケイケイの映画日記
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2016年07月09日(土) 「エクス・マキナ」




SFが苦手の私が、容易にストーリーが予想出来、意外性もなく終わってしまいました。何でこんなに高評価なのかと訝しく、見どころはチャーミングなアリシア・ヴィキャンデルの演技と造形だけだと思っていましたが、一晩寝てみると、それだけじゃないかな?と思い出した作品。アレックス・ガーランド。オスカー視覚効果賞受賞作です。

世界最大手の検索エンジンの感謝に勤めるケイレブ(ドーナル・グリーソン)。社内募集から選ばれ、社長のネイサン(オスカー・アイザック)が隠遁生活を送る人里離れた邸宅に招かれ、一週間を過ごす事になります。しかしそこは、ネイサンが人工知能の開発に明け暮れる研究施設でした。ケイレブの役割は、彼が開発した人工知能のテスト。人間と比べて、遜色はないかと、会話するのです。現れたのは、美しくて若い女性の姿のAI・エヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)。興味を惹かれたケイレブは、段々とエヴァに魅かれて行きます。

とにかくアリシアのAI姿が、素晴らしい!一瞬で魅了されました。顔や手足の一部が人間なのですが、関節はむき出し、お腹は透明で機械も見える。頭も画像のようなのですが、アリシアの絶妙の演技もあって、エレガントで、とてもキュートなのです。検索エンジンが頭に詰め込まれているので、会話も大人っぽく身のこなしも優雅。それなのに、生後間もないため、赤ちゃんのような無垢さも感じる。もう無敵です。エヴァがカツラを被り、洋服を着ると、途端に普通の美女になってしまい、私はずっとむき出しの造形で観ていたかったほどです。

観終わった直後は、オンナのAIなんか作るからだよ〜とだけ、思っていました。でもちょっと待って。登場人物は、もう一人メイドのキョウコ。名前からして、日本人です。この女性、英語はわからず、メイドとして使われ、ネイサンの夜伽まで応じています。昔、欧米の男性の理想は、アメリカ人の給料を貰い、中華料理を食べ、日本人の妻を持つこと、と言われていました。昔の大和撫子には、従順で尽してくれるイメージがあったからです。だからキョウコか?会話しなくて済むから、余計都合がいいってか?キョウコの秘密やその他も、容易に予想がつきました。

お里が知れるこの思考、次代の最先端を行く開発者が、未だに持っている。それでいいのか?いや、ダメでしょう。マチズモ思想に支配されたり、人種差別主義者、極右思想の持ち主、戦争大好きな人などに、人工知能が開発されたら?ぞっとします。人工知能は全人類に対して、機能されるように作られるべきだと、私は思っています。その事が言いたくての、ネイサンの造形だったのかしら?と感じました。

ならケイレブは?ちょっと可哀想に思いましたが、もしエヴァが男性だったら、ケイレブは同じことをしたでしょうか?ジュゼッペ爺さんは、ピノキオが男の子だったから、人間の子供として自分の元に帰ってきたのを、喜んだんでしょうか?大事なのは、親子として愛を育める、「人間の子」の部分だったと思います。エヴァはケイレブに対して、それが感じられなかったのかと思います。

実用性を求めるのか、ピノキオを求めるのか、AIのニーズも今後様々になって行くのでしょう。怖いような観たいような。ちょっと長生きしてみたくなりました。


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