ケイケイの映画日記
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2014年03月30日(日) 「白ゆき姫殺人事件」




原作が湊かなえなので、どんなに意地悪い内容だろうか?と期待しながら見に行きました(笑)。私のように映画をたくさん観ている人間には、特に目新しい題材ではなかったですが、ミステリー仕立てでtwitterを上手に題材に取り入れ、氾濫するネットやマスメディアに対して、リテラシーを育てる重要さを感じさせる仕上がりになっており、面白く観ました。監督は中村義洋。

化粧品会社美人OLの三木典子(奈々緒)が、殺された上丸焦げにされた遺体で見つかります。ちょうどその頃、ワイドショーのしがないディレクター赤星(綾野剛)の元に、典子と同僚の友人の里沙子(蓮佛美沙子)から、事件についての電話が入ります。容疑者として、やはり同僚の城野美姫(井上真央)が疑われていると言うのです。赤星はさっそく取材に取り掛かり、匿名の容疑者として、連日美姫の私生活から過去までが暴かれます。果たして美姫は、本当に犯人なのか?

赤星が里沙子との携帯での会話を、そのまま実況中継の如くtwitterに垂れ流す様子は、もうそれだけで「ダメじゃん、こいつ」感満載(笑)。裏付けのない情報が、ネットに飛び交っているのを暗喩しています。

地味で面白みのない女性として同僚から語られる美姫。ストーカーのように付きまとわれたと証言する上司(金子ノブアキ)。如何に彼女が純粋な女性かを訴える大学時代の親友みのり(谷村美月)。変わり者であったかのように証言する中学時代の同級生たち。各々モザイクをかけた証言者の様子も映します。そして出来上がったのは、不気味な女性として美姫が浮かび上がるように、番組に演出され編集されたテープです。

それを端的に現したのが、両親のようす(ダンカン、秋野暢子)。必死で涙ながらに娘を庇う母の様子はカットで、土下座して謝る父親の様子のみ挿入。もちろん、全てそうではないでしょうが、連日私たちが目にするテレビの報道には、往々にしてこういう事もあると、肝に命じる必要ありです。

証拠は状況だけで、一切警察の報道はなし。なのに連日ワイドショーでは匿名で、ネットでは実名や写真を晒され、犯人として叩かれまくる美姫。自分には関係のない人まで、まるで魔女狩です。この様子は本当に怖い。私もこうやってネットに生息する人間の一人ですが、この日記から私が誰か、探そうと思えばきっとすぐなのでしょう。注意を払って書いているつもりですが、どこかで見知らぬ人が、私の感想を不快に思い同じような行動を起こしたら?あぁ怖っ!

様々な人たちが同じ場面を語るのですが、そこには必ず自分の主観が交じると言う描写が上手い。そして記憶の曖昧さと捏造。典子の「そんな事言ってくれるのは、〇〇ちゃんだけよ」の言葉が二度出てきますが、二人の女性が自分だけに向けて言った、と描写されて、これは上手いなぁと感心。

記憶と言うのは実に曖昧で、昔感動した作品を再見した時、感動したセリフは一言だけで、後は自分が付け足した記憶で愕然とする時があります。酷い時なんか、場面すら違う(笑)。これなら私だけの問題で済みますが、仕事や他人が絡むと実に面倒です。記録の大切さも痛感します。

井上真央は、証言により様々な顔を演じ分けており、微妙な箇所も繊細に演じ分け、意外と演技派だと感心しました。菜々緒は演じているのを始めて観ましたが、これが拾い物。テレビの時は綺麗な子だなぁだけでしたが、性格の良い美人OLだけのはずないじゃん、この子が〜、感を、最初から絶妙に漂わせているのです。女性は美人に生まれるのが絶対得だけど、それだけでは人生全てを謳歌するのは無理ですよって、教訓も感じるのは、美人へのやっかみかしら?(笑)。

始末のつけ方はちょっと強引な気がしますが、まぁいいでしょう。伏線は既出済でしたから。立場の逆転で、マスコミやネットからの攻撃も一変する様子も盛り込んでいます。至近な例では、世間の小保方晴子氏の扱いに苦々しく思っていたので、描写のバカっぽさに、少し溜飲が下がりました。

今では生まれた時からネットが存在する人もいるでしょうね。ニュースソースはネットやマスコミ、人からの伝聞、それだけでは事実を語るのは不十分だと感じたら、それだけでも意義のある作品。ある人の灯す灯りが、自分の目で観て感じる事の大切さを表現していて、暖かい気持ちになりました。


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