ケイケイの映画日記
目次過去未来


2012年07月31日(火) 「ベティ・ブルー 愛と激情の日々」




日本公開25周年記念のデジタルリマスター版のリバイバル上映です。私はその五年後くらい、レンタルで観ました。「私あなたを尊敬したいのよ」。年の離れたゾルグ(ジャン・ユーグ・アングラード」に向かって懇願したベティ(ベアトリス・ダル)の言葉は、当時の私の夫への心境と重なり、平凡なこの台詞が忘れられませんでした。念じ続けて10年くらい経って、そんな「無理」な願いを持つよりも、自分が成長する方が早いじゃん!とハタと悟ってからの私は、本当に人生が楽になったもんです。副題にある「愛と激情の日々」の部分が記憶の大部分を占めていましたが、今回は、激情と共に純粋さと瑞々しさをいっぱい感じます。年取ったからかしら?監督はジャン・ジャック・ベネックス。

田舎町の海辺のバンガローに暮らす30過ぎの修理工のゾルグ。気ままにあてもなく暮らしていた彼の元に、19歳の野性的で魅力的な少女・ベティが転がり込みます。そのまま一緒に暮らす二人ですが、エキセントリックなベティの行動のため、常に波乱万丈の状態です。ベティには夢があり、ゾルグの書いた小説が出版される事でした。

のっけから二人の全裸のファックシーンなんで、初見の時はどぎまぎしたもんです。今回はボカシなしだったので、月日が経ったものよのぉと感慨深かったのですが、以降全てボカシあり。まぁ全裸のシーン満載の作品なので、致し方ないかも。特にアングラードの全裸が多くて、日本では目のやり場に困る女性も多いと思うので、これはこれで良かったかもです。

エキセントリックで気違いじみた行動をしばしば取るベティですが、人格障害系の子ではなく、ひたすら年の離れたゾルグを愛するが故、常軌を逸してしまうのですね。決して自分だけを見て欲しいのではありません。愛する男の成長も願っているのです。結果的にゾルグを困らせているだけです。ここは昔は、厄介な娘だとしか、理解出来ていませんでした。ゾルグは気ままな30代ですが、守るものもなく生き甲斐もなく、ただ生きているだけの暮らしの中、飛び込んできたとびきり魅力的な女の子ベティに、男性として父性的な感情もったのだと思います。それもこれも、ベティの自分への深い愛情を感じていたからでしょう。

腹が立つと手がつけられないベティ。車にペンキはぶっかけるわ、ゾルグの雇い主には暴行するわ、あげく放火。普通の男なら一目散で逃げ出すはずが、ゾルグは一度も逃げ出さない。今までの人生で、やり遂げた事がなかったのかも知れない。ベティを守ると決めたのでしょう。だから彼女が何をしても、喧嘩はすれど、気持ちはぶれません。今回はここに二人の年齢差をしみじみ感じました。私もどんなに甘えさせてくれるのだろうと、年の離れた夫と結婚しましたが、8歳くらいじゃ全然足らなかったのだと、今回痛感しました。

とにかく主役二人が素晴らしい!野性的で獰猛なのに、ゾルグに向ける愛はひたすらに愛らしいベティを、これでもかと言うくらいベアトリス・ダルが魅力的に演じています。彼女はこの作品が一番です。ジャン・ユーグ・アングラードは、この作品の前後に「ニキータ」も観たもんで、当時私のハートを鷲掴み状態でしたが、今回もとにかく素敵!もう外見から何から、一番好きなタイプです。だから「私あなたを尊敬したいのよ」が、あんなに深く心に残ったのでしょうね。気違い娘ベティは、私の心の奥底と重なる部分のある子だと、当時感じていました。それが表に出なかったのは、理性が勝っていたからですが、もうそんな部分がなくなって、私も年を取ったなぁと、痛感します。

妊娠していないくらいで、何故あんな状態に?と、当時はそこだけ咀嚼出来ませんでしたが、彼女の一連の行動は、精神疾患を持っていたと想像するのが妥当です。妊娠反応が出る前に睡眠薬を飲んでいたし、この頃から病気は活発化していたのですね。そして落胆の後の幻聴や幻覚。なるべくしてなった結果でした。

ラストは今も昔も、あれで良かったかどうか、わかりません。言えるのは、ゾルグの思考は幼く、ベティはあれで本望だったろうと言う事です。だってゾルグは彼女の御蔭で本当の作家になれたのですから。守られてばかりに見えたベティも、一途に愛を捧げていたんです。

激情の部分しか本当に覚えていなくて、でも二人でペンキを楽しそうに塗るシーン、ベティの親友カップルとの毎日、ユーモラスな食品店の店主夫婦とのやり取りなど、今回はクスクスよく笑いました。そして二人がずっとちゃんと仕事をしていたことに感心しました。仕事もし家事もし、笑いもありの日常だから、二人の絆も深まったのですね。愛欲だけじゃ、本当の愛情は成り立たないと言う事です。明日の出勤の際は、若い女性職員さんたちに、自信を持って勧めてみようと思います。


ケイケイ |MAILHomePage