ケイケイの映画日記
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2011年02月03日(木) 「RED レッド」




I'M BACK〜〜〜!テレビのCMで流れてますね。エアロスミスの「バック・イン・ザ・サドル」の出だしで、御年62歳のスティーブン・タイラーが絶叫してるのだわ。この感じでバンバン70年代のハードロックが流れるのかと思っていたら、一か所だけで肩すかしでした。でもすかされたのはここだけ。ビッグネームのジジババ俳優たちの痛快なアクションコメディでした。監督はロベルト・シュヴェンケ。

元腕利きのCIAの諜報部員フランク(ブルース・ウィリス)。今は年金生活者で、顔も知らない担当の年金係のサラ(メアリー・ルイーズ・パーカー)と、電話で話すのが唯一の憩いです。ある日見知らぬ男たちに襲撃されたフランクは、間一髪逃げ出し初めて会うサラの元へ。敵はCIAだと感づくフランクは、電話の盗聴からサラの身にも危険が及ぶと察し、半ば誘拐のような形で同行させます。何故命が狙われるのかわからないまま、かつての上司ジョー(モーガン・フリーマン)の元へ。やがて元同僚にしてライバルのマーヴィン(ジョン・マルコヴィッチ)、英国MI6の諜報部員ヴィクトリア(ヘレン・ミレン)、成り行きで米ソ冷戦時代の大物スパイ・アイヴァン(ブライアン・コックス)までが手を組み、謎を解明することになります。

夜中に自宅でキッチンに向かうフランク。足音もなく彼を狙う数人の武装した男たち・・・。その後がどうなるかは、もう予想通り。年食ったって、そこは伝説のCIAエージェント、その辺に転がっているメンツなんて敵じゃないのだね。毎度お馴染みの銃撃戦&爆弾投下ですが、こっちは老いぼれ、相手は新進の精鋭たちと思えば、木端微塵にしてしまう様子が爽快です。

元ソ連のスパイ、アイヴァンとのやり取りが楽しいです。ウォッカなんか酌み交わしちゃって、冷戦時代は今は昔の物語、CIAは存続していますが、KGBはなくなったんだもんね。優秀なエージェントだったジョーも、今は身体を壊して老人介護施設に身を委ねているし、マーヴィンなんか、若干(いや、だいぶかな?)頭がおかしくなってます。

しかし今はペンションの女主人のヴィクトリアは、静かな余生を送っているかと思いきや、「裏で仕事をしているの。現役の頃が忘れられない。人間って変われないものよ。」ですと。裏でしっかり「人殺し」をしている彼女が一番普通というこの不思議。アイヴァンなんか、「もう何年も人を殺していない・・・」としょげてたもんなぁ。この辺、ベトナム帰還兵などを描く「真面目なドラマ」なら、その悲劇を描くでしょうが、こちらお気楽コメディ、その辺は掘り下げず華麗にスルー。アイヴァンの「○○を殺せるなんて、夢のようだ」のセリフに爆笑した私ですが、スパイの性(さが)も、チラッと感じます。

ということで、スイッチが入ったが最後、このジジババたちの弾けようは、まるで幼稚園児の運動会のよう。この辺を演技巧者でならすお歴々が、実に楽しそうに演じています。ウィリス以外は、アート系作品でも常連ですが、腕のある役者の、モノの違いを見せつけられてとっても愉快です。

超特別出演に御年92歳のアーネスト・ボーグナインがに出演。もう本当にお元気でね〜、セリフ回しも滑舌よく、とてもお年には見えません。好々爺になった今も、特異な強面の風貌で数々の作品で名演技を見せていた片鱗もしっかり伺えて、とにかく嬉しくって。ボーグナインから見れば、フリーマンは男盛り。ウィリスやマルコヴィッチは青年ですね。だからあなた、現役CIAエージェントのウィリアム(カール・アーバン)なんざ、洟垂れ小僧な訳ですよ。しかし洟垂れ小僧の良いところは、若さに任せて正義感が強いこと。CIAの一員として、忠実に職務を全うするも、最後にいい仕事してくれます。

主役たちはみんな本当に良かった!最近この手の役柄が多いウィリスはお手のもので、まだまだアクションも大丈夫そう。フリーマンはやっぱり存在感抜群。セクシーハゲの第一人者・マルコヴィッチも、今回はお茶目な役で楽しませてくれます。私が感心したのは、ブライアン・コックス。愛嬌ある容貌でユーモラスな役柄でしたが、ちゃんと恋する男の純情さが滲んでいました。「彼女」に向ける眼差しに愛があるのよね。

そしてヘレン・ミレン。言わずと知れた大英帝国の大女優ですが、本当にカッコいい!60半ばの女が、「相変わらず色っぽいな」と言われて嫣然と微笑んだかと思うと、鋭い眼差しで獲物@人間をシュートするんですから、素敵すぎ。美貌はいつかは衰えるもの、女だって生きてきた年輪が大事だよってことですね。この人として女としての満点の現役感は、是非目指したいです。

忘れちゃならないのが、私が大好きなパーカー。押しの強いハリウッド女優が多い中、お芝居が上手なのに、決してでしゃばらない彼女。退屈な日常に飽き飽きしていたアラフォー女性サラが、夢か幻かの危機また危機の中、少しずつフランクと愛を育んでいく様子を、彼女ならではの控えめな演技で表現していて、良かったです。

アクションも老友たちに合わせて、趣向を凝らしていたので無理がありませんでした。終わってみりゃ、CIAやお国の批判も尻すぼみ、下手すりゃお安いコメディで終わるところを、スピーディーな演出と名優たちのお蔭で、いくつも格がアップしてます。誰が見ても楽しい作品です。こうやって、楽しく年を取りたいもんですねぇ。


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