ケイケイの映画日記
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2010年02月21日(日) 「恋するベーカリー」




あ〜、面白かった!熟年離婚した夫婦の心の機微を繊細に描きながら、臆面もない赤裸々な性愛表現もユーモアたっぷり描いていて、とっても楽しかったです。主演はここ数年またまた絶好調のメリル・ストリープ。監督はナンシー・メイヤーズ。

辣腕弁護士のジェイク(アレック・ボールドウィン)と離婚して10年のジェーン(ストリープ)。三人の子供たちを無事育て上げ、経営するベーカリーも順調と、頑張ってきました。末っ子の大学卒業式に同席する予定の元夫婦は、前夜ふとしたはずみからベッドイン。離婚原因になった妻とは上手くいっていないジェイクは、ここぞとばかり再びジェーンに求愛。困惑する彼女には、バツイチの誠実な建築家アダム(スティーブ・マーティン)も気があるようです。さてジュリーの心はどちらに?

結婚19年で離婚したこの夫婦の描き方が絶妙です。昨今離婚も当たり前の時代ではありますが、バツ2の亡くなった私の母曰く、「結婚の時の二倍エネルギーがいるのが離婚」の言葉は、今も昔も変わらないのでは?ついでに言うと、アメリカでも。ジュリーのように仕事も成功し子供たちも健やかに育った人でさえ、痛手を癒すのに10年かかると繰り返し描写される繊細さに、まずは感心。

元夫婦の久しぶりのベッドインはすごくわかる。子も成した長年馴染んだ相手ですもの、はずみでのワンナイトラブとは全く違うでしょう。痛手がやっと癒えた頃、またまた元夫が求愛してきたのですから、ジュリーの困惑ぶりは当たり前です。そして今回はジェイクが既婚者ということもあり、形としては不倫、今度は自分が愛人となるのです。寝取られた男を寝取り返しただけで、ざまぁみろ!というところですが、元妻というプライドが絡むので、事は複雑(原題は「IT'S COMPLICATED」=「それは難しい」)。この辺の女心も、ストリープがやはり抜群の上手さで演じているので、観ているこちらも切なくなります。

「君はまだジェイクのことを完全にふっきれていないのではないか?」とジュリーに語るアダム。彼もまた妻に不倫されての離婚だから、理屈ではない感情がわかるのでしょう。ジェイクの妻が、ジュリーを熱く見つめる夫の視線を哀しげに観ていたり、ジェイクが妻の連れ子に手を焼くも、責任の重さを改めて感じるシーンがあったり、不妊治療の患者が押し並べて年の差カップルだったり、略奪婚の行く末も大変なのだと描いています。

50代というのは子育てもある程度終わり、時間的には余裕も出てくる頃です。ジュリー自身も良き悪友や仕事に恵まれ、子供たちには定期的に会えてと、孤独ではありません。しかしそこはかとない寂しさは常にある。孤独と一口に言うけれど、本当の孤独を知る人は少ないでしょう。しかしジュリーの託つ寂しさは、いつか私にも来るのだと言う思いは、万人のものだと思います。その気持ちが、いい歳をして恋に右往左往する中年たちを、愛しく感じさせるのでしょう。

一つだけ納得出来ないのは子供たちの描き方。微妙な距離感を持って父親と接する描写は秀逸なのですが、親に対しての反応が全て三人いっしょだというのは、これいかに?私も子供は三人、それも男ばっかりですが、同じ両親から生まれても、子供はみんな別の個性・考え方を持っているはず。三人いっしょにベッドで悶々とするシーンは、親の離婚で彼らはアダルトチルドレン風になってしまったと、心の傷を表現しているのかもしれませんが、諍いの絶えない家庭に育った私としては、少々気持ち悪く感じました。もう大人なんだからね、もっと親を思いやりなさいね。

ストリープはもちろんですが、中年男優二人がとてもいいです。ボールドウィンはメタボの身体を惜しげもなく(?)披露して、抱腹絶倒のシーンを演じています。強引で少々傲慢ながらチャーミングです。「母のように甘えられるのが妻」という固定観念は、アメリカの男も同じなんだなぁと、しばし感慨にふけりました。マーティンはいつもより大人しい彼でしたが、誠実で聡明、そして繊細な感覚の持ち主であるアダムを、好感度抜群で演じていて、彼のお陰で元夫婦がしっかり浮かび上がったと思います。ちなみにアレック&マーティンは今年のオスカーの司会者に予定されています。この映画が好評だったからなんですね。

ラストの温かさが素敵。こんな大変な思いをするのに、人は誰かを愛する事を、生涯続けるんですねぇ。煩悩上等、中高年も張り切っていきまっしょい!


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