ケイケイの映画日記
目次過去未来


2008年06月01日(日) 「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」




うーん、よく出来たお話なんだと感じましたが、あまり面白くは無かったです。予告編の政治コメディタッチは嘘っぱちで、真面目な政治劇だと聞いていたので、それなりに身構えて観ましたが、それでもわかりにくいところが多しでした。米ソの冷戦を止めた政治家のお話、とだけ頭に入れていたのですが、内容はソ連の侵入で苦境に陥るアフガニスタンを、アメリカが支援したお話でした。これは私がバカというより、世界情勢に関して無知なのが痛かったのでしょうね。


下院議員のチャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)は、美人の補佐官ボニー(エイミー・アダムス)他、チャーリーズ・エンジェルと呼ばれる美女軍団の秘書を得て、お気楽な議員活動を行っていました。ある日パトロンであり愛人でもある、テキサスで六番目に富豪のジョアン(ジュリア・ロバーツ)から、ソ連の侵攻に苦しむ、アフガニスタンを救って欲しいと頼まれます。アフガニスタンのことはまるで無知だった彼ですが、訪れたかの地の窮状を見て発奮。以降チャーリーの奮闘が始まります。

よーくよーく考えると、軽妙なタッチの中、ユーモアを混じらせ、シニカルで捻りの利いたお話なのだと思えるのです。でもよーくよーく考えないといけないので、観ている間、面白くない。

はみだしCIAのガスト(フィリップ・シーモア・ホフマン)も加えて、エジプト、パキスタン、イスラエルといった近隣諸国も巻き込んで、政治だけではなく宗教が絡んだり、武器の調達はえーと、どこからだったんだっけ?と、私の知識では全然ついていけないので、画面が素通りしていきます。なのでコピーの「たったひとりで世界を変えた、本当にウソみたいな話」というのが、実感できないのです。すごいことなんだろうなぁと思いつつ、私の中で盛り上がらなかったというのが、正直な感想です。ここが肝心の話なんですよね。

しかし政治的には功績がなく、再選だけを重ねる一議員の、愛すべき人柄はよく伝わってきました。お酒や女好きでだらしない側面を見せておいた後の、アフガンの人々の悲惨な姿に立ちあがる姿は、若者のような清々しさです。自分の無知さを素直に認める、政治家らしからぬ姿にも好感。これはチャーリーが政治的手腕がなくて、中枢にいなかったためにしがらみが薄く、頑張れたのかとも感じました。

今のアメリカとアフガニスタンの関係を思うと、こんな過去があったのかと複雑な心境です。アフガニスタンはこの時の武器の購入や戦場での訓練など、アメリカに支援してもらっていたことを、そっくりそのままソ連ではなく、アメリカ相手に闘っているということですよね。うーん、本当に複雑。結局戦争は戦争を産むということでしょうか?軽いタッチで描きながら、監督のマイク・ニコルズは、このことを言いたかったのかと思いました(当たってんのかしら?自信なし)。

俗っぽく下世話な会話をしながら、アフガニスタンの罪もない人々を空から銃撃するソ連兵。それは虫けらを駆除するような様子です。それをアメリカから調達した武器で撃ち落とす、アフガンの「普通の人々」。今はソ連兵の代わりに、その飛行機にはアメリカ兵が乗っていると、言いたかったんでしょうか?


ハンクスは持ち前のキャラが上手く活かされ、プレイメイトやストリッパーと遊び、果てはコカイン疑惑の主となろうと、それが愛嬌に見えるチャーリーを、人間臭い人だから、人の痛みもわかる人なのだと感じさせ、いつものように安定した演技です。ジュリアは、前に出演した、「クローサー」のバカ女よりは、数段良かったです。でもニコルズは彼女が御贔屓だから、連続出演させたんでしょ?仰々しい髪形やお化粧など、全然美しくないのだな。特にあのでかい口に真っ赤なルージュなど、食われてしまいそう。80年代の富豪女性を再現したかったとしても、もう少し綺麗に見えるようにしてあげても良かったかなぁと思います。

ホフマンも彼がこの作品を引き締めていると読んでいたので、楽しみにしていましたが、確かにお芝居は上手だったんですが、私がいまいちガストの役割が飲み込めず、そのためにやっぱり素通りして行きました。政治も勉強しないといけないなぁと痛感。一番良かったのは、エイミー・アダムス。賢く有能で、かつ愛らしい補佐官を好演していて、とっても良かったです。

紛争終焉後、とあることを議会に提案しながら、他の議員に却下されるチャーリー。ソ連を潰したから、もう支援は必要ないとの判断なんでしょう。それがラストの「でも最後にしくじった」に繋がるのでしょう。戦争で支援されたことなど、誰も覚えていないのですね。それも常に国と国との利害関係が必ず絡む、戦争の本質なのでしょう。戦争には真の真心も正義もなし、ということでしょうか?




ケイケイ |MAILHomePage