ケイケイの映画日記
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2008年05月05日(月) 「紀元前一万年」




三日に夫と観てきました。我が家は夫も医療関係なので、この日からがGWの始まりです。夫と同年代の男性の映画友達の皆さんは、多趣な方が多く、休日の使い方もお上手ですが。しかし我が夫は生憎と無趣味のステロ型の中年男でして、休日は家でゴロゴロ、予定がなければ一日中パジャマで過ごすのが至福の人なわけね。当然疲れなんか取れるはずもなく、またしんどい次の一週間に突入で、とにかく一年中「しんどい」から解放されない、日本において最大公約数的な中年男性です(可哀想なんよ、お父さんたちは)。ほっとくと干物になるのですね。でもうちの夫は男前で、干物にするにはもったいなく、時々私が連れ出すわけ。

本日は夫の服を購入するのが私の目的。「お父さんの服買いに行くで」というと、「また今度」というので(面倒臭いから。そのくせヤツしたがる)、「お父さん、定期買わんとあかんやろ?いっしょに難波行こう」と連れだし、騙くらかして高島屋へ。本人も気に入った品をゲットし上機嫌になったためか、「もう難波で『紀元前一万年』観て行こう!」と仰る。えぇぇぇぇ!明日ラインシネマで観るんとちゃうん?この作品と「最高の人生の見つけ方」と観たら、ポイント溜まるので、「チャーリー・ウィルソンズ・ショー」はタダで観る予定やったのに、とは私の心の声。布施に戻って観ようや、などど言うと臍を曲げて「もうめぇへん!」と言うのは、ながーい結婚生活で学習している私。「そうやね〜、ほな難波で観て行こうね、おとーさん」ということで、なんばTOHOで観てきました。お金はラインシネマで落としたい私の気持ちも、説明しても長くなるし。映画は予想通り、とってもローランド・エメリッヒな作品でした。

紀元前一万年の世界。狩猟民族の若者デレー(スティーブン・ストレイト)は、同じ村の少女エヴァレット(カミーラ・ベル)と恋仲です。エヴァレットは幼い頃、自分の村を「四足の悪魔」に襲われて全滅して生き残りだったのを、この村の巫女に育てられたのです。その「四足の悪魔」が、デレーたちの村を襲い、たくさんの村人を拉致して行き、その中にエヴァレットもいました。彼女を救うため、命をかけてデレーは追いかけます。

とっても普通の作品です。キャッチ・コピーの「誰も見たことのない世界は、「過去」にあった。」というのは、それは嘘です!というくらい、観たことある光景ばっかです。確かにCGでは、観たことないかも。脚本の方も小耳に挟んだところでは、監督エメリッヒは「構想から撮るまでに15年かかった」と仰っているそうですが、あんた、これで15年か?というツッコミ満載です。

デレーの父親が尊い思いを抱いて、村を出て行ったプロットが上手く生かせていません。デレーが何故あのサーベルタイガーを救ったのか、私には謎。これが重要な伏線になっているので、余計に気になります。いっしょに闘う村の長ティクティクが、大怪我しているのに、ターミネーターばりに速効治るのが不思議。エヴァレットに横恋慕する敵の隊長など、とってもいい味を出していたので、もっとキャラに肉付けして、醜男が美女に叶わぬ恋をした切なさを出せば、ぐっと作品が味わい深くなったでしょう。決定的なのは「ラスボス」。あんなもんで、あんなんになるか〜〜〜?(ネタバレなので、特に伏す)。この既視感、何やったやろ?ああそう!「スターゲイト」といっしょ!とにかく、部分部分で説明は一応はつくんですが、小さな脱力を繰り返すわけ。

だけど私は、この作品を割と気に行っていますだってエメリッヒですもの大味な大作だと予想して観たかったんですから。エメリッヒと言う人は、大筋に疑問が残っても、枝葉の部分に人の好い愛嬌があって、私は嫌いではありません。(スティーブン・ソマーズも割と好き)

この作品も、最初村の長になれたはずのデレーは、卑小な自分の心に気づき、証しの杖を返してしまいます。しかしのちのちの展開を観れば、彼が「選ばれし勇者」であったのは明白で、自分の運命から逃げても、それは追ってくるものだと感じられます。

肌の色の違う、言語も違う者同士の正義のための結束は、観ていて気持ちの良いものです。

母を殺され一人ぼっちになったデレーの村の少年と、他部族の少年の心の交流がほほ笑ましく、デレーの村の子の復讐の果たし方が一捻りあって、ジーンときました。

デレーの父から幼い息子を託された村の長ティクティクが、血に惑わされることなく、自分の息子とデレーを分け隔てなく見守る様子が、器が大きくて観ていて清々しいです。

デレーの村では悪者だったマンモスが、敵に捕まり倒れるまで働かされているのを観た少年の、「マンモスが可哀想だ」の一言は、昨日の敵を憐れむ素敵な感受性です。サーベルタイガーの存在など、仲良くとは違う意味で、この時代は、生き物と人間の共生が大切だったんだなと感じました。

エヴァレットを演じるカミーラ・ベルがめちゃめちゃ可愛い!顔が泥だらけでもあんなに清楚で可愛いのですから、そりゃ男たちが命をかけるのも、すごーく納得でした。神秘的な運命の少女にピッタリでした。



ベルに比べて、主演のストレイトは、可もなく不可もなくで、既にもう顔も忘れかけです。これでブレイクしそうにはないなぁ。私の予想が外れれば嬉しいですが。

以上、すべて大味なんですが、枝葉の部分でたっぷりほっこりしたので、私は満足でした。夫の感想はというと、私のツッコミ部分が気になって、あんまり楽しめなかったそう。お父さん、そういう観方は甘いのよ。だって、ローランド・エメリッヒの作品なんやから。


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