ケイケイの映画日記
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2007年08月04日(土) 「魔笛」




わー、楽しい!が、オペラは皆目わからない素人の私が、映画といえど有名なモーツァルトのこのオペラを観ての素直な感想です。多分ヒットするだろうの予感がしたので、あえて映画の日ははずし次の日にしたのに、スクリーンは小さいOS名画座からとっても大きいOS劇場に代わったのに、それでも超満員でした。私も生憎前から二番目しか空いておらず、ド迫力で観たため少々酔い気味でしたが、本物のオペラ歌手の歌声を堪能出来て大満足でした。監督はケネス・ブラナーです。

第一次世界大戦のさなか、兵士タミーノ(ジョセフ・カイザー)は毒ガスによって命が危ないところを、夜の女王(リュードフ・ペトロバ)の三人の侍女に救われます。タミーノを気に入った女王は、ザラストロ(ルネ・パーぺ)にさらわれた娘パミーナ(エイミー・カーソン)を救いだして欲しいと頼みます。パミーナの美しい写真に魅せられたタミーノは了承。女王から魔笛を与えられたタミーノは、兵士パパゲーノ(ベンジャミン・ジェイ・ディビス)と共に旅立ちます。

元のオペラは中世の時代だそうで、今回は戦場を舞台に変更だそうです。のっけから戦闘場面で、バタバタ兵士が討ち死にしますが、優雅というかなんというか、振付のようなたち振る舞いなのに全然違和感がありません。それ以降も、登場人物の心が突然に高揚したり落ち込んだり、はたまた説明不足だったりします。しかし普通の映画やミュージカルなら不満が残るところですが、これは古典のオペラなんだと思ってみているので、気になりません。

オペラを辞書で引っ張ってみると、「歌唱を中心とした舞台劇。扮装した歌手の歌と管弦楽・舞踊・振りなどで構成される。一七世紀初めにイタリアに起こり、ヨーロッパで発達した。歌劇。」とあります。この作品も情景や登場人物の心模様は全て歌で表現されますが、その歌が当たり前なんですが素晴らしい!

私は本当にこの手のクラシックには疎いのですが、そんなど素人でも普通に演じている以上にビンビン情感が伝わってきます。出演者な皆本当に舞台に出ているオペラ歌手だそう。容姿も少しクラシックな美形が揃い、映画俳優との違いも感じます。中でも歌唱がひときわ素晴らしかったのが、夜の女王役のペトロバ。私の耳には彼女が一番上手く聞こえましたが、どうかな?

舞台を映画にするんですから、何か味付けは必要です。歌いあげる女王の大きな口が映し出されたり、写真のパミーナが動いたり、おしゃべりパパゲーノの愛嬌を表現するのに、色鮮やかにふんだんにCGも取り入れたりと盛りだくさんです。大人子供風の趣は私には楽しく感じられました。歌でしか聞いたことがなかった、パパゲーノとパパゲーナの場面を観られて大満足です。

墓標に刻まれた名前に日本人もあってびっくり。年齢も20前後ばかりで、古典のオペラの脚色と言えど、こういうのを挿入するのは監督の反戦の意味の主張なんでしょう。

パミーナを救い出すためにストイックに邁進するタミーノにも、人間味たっぷりの落ちこぼれ風パパゲーノにも、それぞれ理解を示す演出が好ましいです。舞台もこうなのかな?それと肝心の魔笛なんですが、一度もタミーノは吹きません。天にかざすだけなのですが、これでいいんでしょうか?そしてかつてザラストロと夜の女王は恋愛関係にあり、パミーナは彼の子をにおわす演出もありましたが、これも原作ではどうなっているのかな?

私は文化的に理解が深い家庭に育ったわけでもなく、今の自分の家庭も楽しいけれど俗っぽさ満開です。それに不満があるわけじゃないですが、せっかくの人生、芸術的なものや文化的なものにも触れて、人生の楽しみにしたいじゃないですか?お陰さまで素養がなくても、年を取るとアバウトにでも作り手の意図を感じる力は養われているようで、中年になってから新鮮な刺激をたくさん受けています。

この作品もオペラに詳しい方には不満があるかも知れませんが、私にはすごく楽しくて、是非本物の舞台も観たくなりました。あれこれやりたいことがあるって、楽しいなぁ。場内は年齢層の高いご婦人が多かったですが、案外皆さん私のように思っているかもですね。






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