ケイケイの映画日記
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2007年05月08日(火) 「女囚701号 さそり」(レンタルDVD)

実に素晴らしい!作品じゃなくて梶芽衣子が!元々好きな人でしたが、完璧に惚れました。昨日梶さそりを「どんくさくて、ちょっとがっかり」と書いて、ホント申し訳なかったです。すみませんでした!!!

松島ナミ(梶芽衣子)は恋人の刑事杉見(夏八木勲)のため、囮捜査に加担。相手にばれて輪姦されてしまいます。そこへ杉見が登場しますが、彼は自分の出世のため、ナミを利用したに過ぎませんでした。怒り狂うナミは、杉見を殺そうとしますが、失敗。裁判でも何も語らず服役することに。ナミが収監された刑務所は所長(渡辺文雄)の監督の下、懲罰と言う名の受刑者への暴行や食事抜きなどが大びらに行われている、凄惨な場所でした。ナミが生きている限り、いつ自分の身に危険が迫るかわからない杉見は、受刑者の一人片桐(横山エリ)に、ナミを殺すよう命じます。

この作品を借りてきたと夫に話したところ、「当時の観客は何を期待して、この作品を観たと思う?」と聞かれて、「さぁ。バイオレンス?」と答えると、「ちゃうちゃう。女子刑務所ってどんなところか、覗き見したかったんや。それだけの作品や。」ときっぱり言うのです。確かに女囚物は一つのジャンルで、キャットファイト、女囚のヌード、同性愛、看守との肉体関係など、こういうものが盛り込まれているのが必須アイテム。この作品にも存分に織り込まれてはいますが、「さそり」については、女囚物という連想より、ずばり梶芽衣子が真っ先に連想されるんじゃないでしょうか?

冒頭脱獄するナミとユキ(渡辺やよい@「けもの部屋」と同じ役名、でも違う人。)のシーンから、犬に噛みつかれるわ警棒で殴られまくるわ、もう大変。女囚物では不自然に厚化粧のままの人も多いですが(それはそれで場末感が出てグッド)、二人とも綺麗なのでナチュラルなメークです。そしてさそりお得意の睨み。これが最初から炸裂してます。

輪姦シーンはびっくりしました。「広島死闘篇」では濡れ場で浴衣着用だった梶芽衣子ですが、その前年に作られたこの作品では、服を破かれ乳房が露出しています。それが昔懐かしい白のブラスリップなのが、ナミの普通の女性さ加減を感じさせます。そして杉見を刺しに行く場面では、マントを脱ぐと暴行されたまんまの格好で向かっていきます。そう、片乳ほりだしてドスを振り回すのです。この場面、衣服着用と片乳じゃ、ナミの激情を表現するには雲泥の差です。後半にはレズシーンまでこなしています。梶芽衣子はこの当時本名の大田雅子から改名して間もない頃だったはず。それなりに売れてはいた人の、この根性ぶりにまず惚れてしまいました。

それ以降も下劣な看守たちに、人権蹂躙も甚だしくなぶりものにされたり、これまたあばずれ満開の同じ受刑者たちに、これでもかといたぶられるのですが、ナミは決して弱音をはかず、それどころか向かう気満々。それが饒舌に語られるのではなく、全部目と表情で表現しきってしまうのがすごいです。

確かに夫のいう事も一理あるのでしょうが、観客が熱狂したのは、ナミのこの孤高の姿なのではないでしょうか?とにかく格が違うのです。それを表現するのに、梶芽衣子のクールな美貌は、本当に気品がありマッチしていました。とにかく強くてカッコイイのです。今の時代はカッコイイ女性もいっぱいですが、当時の女優は女性らしさを中心に求められていたはずで、どこかウエットな女心を忍ばせている人ばかり描かれていたはずです。劇中のナミのクールさを補うのが、梶芽衣子自ら歌う「怨み節」だったのですね。惚れ惚れしたので、自ら語る「三年前まで私は普通の女だった」人が、いったいどこでこんな戦闘能力を身につけたのか、一切不問にしたいです。

他にも全編夫の言う見どころは満載で、盛り上がりっぱなし。受刑者のオールヌードはバンバン出てくるは、三原葉子はパンツ丸見えでサイコロ振るは、あげくに歌舞伎メイクで裸でナミを追いかける姿は急に照明が変わり、ホラーっぽいです(爆笑もんですが)。扇ひろこが謎の受刑者で出てきて、三原のいかさまを見破り、「素人相手にこんな真似すんじゃないよ!」(刑務所の中なんですかー)、と言うだけで、過去は語られませんが、この人も昔別の映画で壷を振っていたのを知っている観客には、説明は要らんかったんでしょう。

想像を超えるあまりにあまりな場面ばっかり見せられた私は、それ行けー!やれー!いてまえー!と、ナミが自分をいたぶった相手を次々しとめ、復讐を達成する様子には、溜飲が下がりまくりでした。極悪のやくざにしか見えない看守や、下品ではすっぱばっかりの受刑者の中、ユキ役の渡辺やよいは一服の清涼剤のよう。彼女は「けもの部屋」でも、近親相姦しようが、厚化粧で売春しようが、この作品でも生理の血を流しながら逃亡しようが、とにかく可憐。梶芽衣子だけが際立つ作品だと思っていましたが、渡辺やよいの素晴らしさを知ったのは、収穫でした。

冒頭に「この作品は事実を元にしたフィクションです」と出てきますが、昔はこんなものがなかったら、本当に信じたんでしょうか?だって看守が男ばっかりなんて、ありえません!二作目の「第41雑居房」も是非見るつもり。だって白石加代子が女囚役なんだって〜!


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