ケイケイの映画日記
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2007年01月05日(金) 「大奥」


明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い致します。

今年の映画初めの作品。優先順位下位の作品ですが、寝正月など夢のまた夢の主婦の身のワタクシ、「リトル・ミス・サンシャイン」も「酒井家のしあわせ」もじっと我慢。近場のラインシネマでは目ぼしい正月映画はほとんど観てしまい、残るはこれだけ。予測通りの出来で、テレビ放映待ちでも充分かとも思いますが、もうね、お正月に映画館で観られるならね、何でも良かったのでね、満足しています。一点演出に激怒した部分がありますが、それ以外はそれなりに面白かったです。

時は江戸時代、6代将軍家宣の急死により、幼い家継が7代将軍となり、後見人として、お側用人の間部詮房(及川光博)が実権を握っていました。大奥も家継御生母の月光院(井川遥)と、6代将軍の正室であった天英院(高島礼子)との間に確執があり、月光院は常に中傷の渦の中におり、心の拠り所は間部詮房 と、大奥総取締りの絵島(仲間由起恵)だけでした。天英院一派は、男女の関係にある月光院と間部の間柄に気づき、二人を失脚させるため、まずは片腕の絵島を陥れるため、歌舞伎役者の生島(西島秀俊)を近づけます。

大奥史上最大のスキャンダル・「絵島生島事件」のお話。「大奥」フリークではなくても、ご存知の方も多いかと思います。歴史上、ねねVSお茶々、お江の方(家光生母)VS春日の局など、女同士の確執はたくさん描かれていますが、概ね骨格は皆同じ。権力争いの中、女の意地と根性がぶつかり合い、格調高く描けば、女の業の深さと哀しみや歓びが深々と描かれますが、今回はそれはさておき、見どころは意地悪の応酬と女の性の乾きを、ちょっとお安く描いていたところだと思います。

私は岸田今日子が「ほぉ〜おくでは〜」と震えるような妖しいような声でナレーションをしていた、大昔のも観ていました(当時小4くらい)。時々再放送のを観ると、これが陰険でいやらしく、本当に女って怖いねー!と言う感じと、女に生まれた哀しみが充満しておりますが、こちら現代版大奥、意地悪も真綿で首を絞めるようなものでもなく、とっても解りやすいです。現代の人は、意地悪の詫び錆びは解りにくかろうという配慮でしょうか?

性の乾きは、男を知る者はそれが忘れられず煩悩に苛まれ、知らない者は恐れや憧れがない交ぜになった複雑な感情を見せますが、これもいささか小粒で中身が薄いです。むかーし、「大奥丸秘物語」というのがあって、懐妊しない側室がよそでお種を頂戴したり(藤純子が演じる)、お中廊と部屋子が同性愛関係になり(岸田今日子&小川知子が演じる)、部屋子が上様のお手つきになり懐妊、流産を望む中廊に毒を盛られ、流産後の部屋子が自殺したり、年期付きのはずのお犬(下働き)が美貌のため上様の目に止まり、またまたお手つき(佐久間良子が演じる)、大奥から出られなくなり、恋しい許婚と別れなければならず、大奥に火をつける、などなど女の業の表現もバラエティに富み、且つエロも哀しみの色も多彩だったことを思えば、物足りないものでした。

今回の上様は幼少のため、お種も頂戴できないわけで、大奥と言う場所の意味を考えれば、もうちょっとディープに描いても良かったかと思いますが、その辺はテレビサイズでした。

出演者は、格不足と思っていた仲間由起恵が意外に健闘。絵島の賢さと清楚な芯の強さを好演していて、やっぱり大河の主役は伊達ではないなと感心しました。生島役の西島秀俊は、割と好きな役者ですが、生島かぁ〜?と予告編では疑問でしたが、これが良かった!男優における時代劇での目張りの威力を確認。もーねー、流し目が色っぽいのなんの。そらおぼこ娘の絵島が一目惚れするのも、さもありなんと納得。

月光院役井川遥は、昔のお話にならない大根ぶりからは、ずっとましでした。ミッチーは私は贔屓ですが、間部役は荷が重かった模様。月光院を本当に思っているのか、ただ己が保身のためか、もっと曖昧に見せなければならない訳ですが、その辺の演じ方が甘いです。知恵者の切れ者にも見えず、能役者上がりの艶もなし。阿部寛は大物に成り過ぎて、キャスティング出来なかったんでしょうね。

高島礼子は魑魅魍魎感が出ていて、かなり良かったです。惜しむらくは天英院は天子様の血筋のはず。そういう品には欠けていました。天英院派のお中廊・宮路の杉田かおるも良かったです。男に体をあずける天英院を蔑むような、嫉妬のような目で見つめる顔、生島を誘ったものの、トウのいった生娘(のはず)の、恥じらいではなく恐れが拒んでしまう様など、やっぱり上手い人なんだと感心しました。もうヨゴレ芸人のようなバラエティーには、出ない方がいいと思います。

と、中身の薄さを出演者の好演で補い、それでも足りないと思ったのか、藤田まこと、浅野ゆう子、柳葉敏郎、竹中直人なんかもちょっと顔を出しています。それでも大奥という華やかな場所を舞台にして入る割には、豪華絢爛のムードも小粒でした。やっぱり今は時代劇を演じられる人は少ないのですね、ちいさ〜くまとまっていました。

さて私が激怒した部分です。月光院がしばらく間部に会えず、煩悩の塊となり、床に伏してしまいます。何とも頼りない母親ですが、幼少の上様が見舞いに来ると、「あきさま、あきさま」と、うわ言で間部の名を呼び、側にいる我が子の名など、一言もなし。当然これは月光院のバカ母ぶりを表し、上様の孤独を描写していると私は感じました。が!次のシーンで何と絵島は、間部に「どうぞ月光院様をお見舞い下さい」と懇願していました。「それはならん」と言う間部に、今度は上様が「母上を見舞うてくれ。母上はそなたに一番会いたいのじゃ」という健気な言葉が出るに至り、私は口あんぐり。結果月光院を見舞った間部はそこでおしと寝、果たして生死を彷徨っていたかのような月光院は、見事ご快癒。

えぇぇぇぇぇぇ!!!!

一発やったら、ビョーキが治ったってぇ?はしたない表現で申し訳ないですが、何じゃこりゃ?、あんたセックス中毒ですか?と私は怒り心頭。女の煩悩でも何でも、好きにしてりゃあいいですが、子供を産んだら最後、ある程度子供が大きくなるまでは、母親は女より母親を優先するのが当たり前のはず。心細いのはね、月光院だけじゃありません。先君である父を早くに亡くし、帝王学も受け継げず、辛く寂しいのは上様とて同じ。まず自分の寂しさより息子の気持ち優先ではないかい?それを男旱で精気のない母親に、せっせとエッチのお膳立てをし、あろうことか、幼い息子もそれに加担させ、母の性の煩悩に理解を示すような脚本は、私は絶対認めません!

昨今幼児虐待がマスコミを賑わしていますが、私が一番腹だたしく思うのは、内縁の夫と称する者が、幼い子を虐待することです。どうして我が子を痛めつける男といっしょに居るわけ?断じてこれを女の性の哀しさなどど言ってもらいたくないし、理解したくもないです。今回の月光院の描写は、そんな風潮をなぞって肯定しているようにも感じ、私は猛烈に不愉快でした。

あー、すっとした!正月早々吠えてみました。
なんかまとまりない初回ですが、色々小粒で薄いですが、観るに耐えない作品ではなく、まぁそれなりでした。


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