ケイケイの映画日記
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2006年07月05日(水) 「カーズ」(吹き替え版)


ブラボ〜、ジョン・ラセター!昨日レディースデーでもない平日に観た甲斐がありました。ラセター監督のピクサー作品は、今までずっと末っ子と観ていたのですが、息子も中2となり今回はもう観ないそう。「Mr.インクレディブル」なら私一人でもいいのですが、今回は車が主人公。ちょっとおばさん一人観はきついかも?と思っていたのですが、何とポール・ニューマンがアフレコしてるんだって!せっかく一人なんだから、絶対字幕で観ようと思っていましたが、ラインシネマはオール吹き替え。

何で!!!

私にとっては今も現役の大スターの彼ですが、世間様はそうじゃないのね。仕方なしに一応吹き替え版で押さえておきましたが、これがやっぱり素晴らしい!高水準の作品ばかり連発するピクサーに、はずれなしでした。吹き替え版で悔しいので、ニューマンの勇姿をどうぞ。彼は元レーサーでもあるって、若い人は知ってるかな?お若い時はパリジェンヌも魅了したようで、あの「エマニエル夫人」にも、「特別出演」してたんですのよ、おほほー。



若き天才カー、ライトニング・マックイーン。彼の夢はレースの最高峰「ピストン・カップ」に優勝すること。その決勝でカリフォルニアに向かう途中、ふとした事故からから脇道にそれてしまった彼は、小さな寂れた町”ラジエーター・スプリングス”に迷い込んでしまいます。風変わりな車たちが暮らすこののどかな町に滞在するうち、レースに勝つことだけが一番だと信じていた、自己中心的なマックイーンの心に、段々と変化が見られるようになってきます。

一作ごとにCGの腕を上げるピクサーですが、この作品も本当に美しく素晴らしいです。カーレースの場面など実写と遜色なく、クラッシュ場面など見応えたっぷり。ボディの光具合もきちんと表現しています。ラジエーター・スプリングスの風景も、昔風のアメリカの片田舎を表して、懐かしさいっぱい。いえ、行ったことないんですが。私が子供の頃観ていたドラマや映画の世界なんです。ルート66(アメリカの国道)も出てくるしね。ドライブで走る背景、美しく雄大な滝など、何時でも観ていたい気分です。しかしリアリティばっかり追求していないのが、ピクサーの良いところ。擬人化した車たちは愛嬌たっぷりで個性的。その温もりのある姿は、昔ながらのアニメーションの親しみ易さを失っていません。

最初ジコチューな俺様ぶりを見せ付けるマックイーンですが、これはどうも若気の至りで天狗になっているようです。傲慢だとか腹が立つとかはあまり感じません。彼が勢いに乗っているから周りに集まってくるのだ、本当は親友どころか、友達もいない様子をさりげなく見せ、彼さえ気づかぬ寂しさを滲ませる描写が良いです。そういう子供達にもわかり易い伏線のおかげで、マックイーンの誠実な正義感の芽生えに、自然と感情移入出来ていきます。

マックイーンという名は、もちろんスティーヴ・マックイーンから。彼もレーサーとして有名でしたね。ニューマンがアフレコするドッグ・ハドソンは、ハドソン・ホーネットという車種からですが、これも往年のハリウッドスター、ロック・ハドソンをもじっているのでしょう。この辺のお遊びが心憎いです。

少々とろいけど正直者で楽しいクレーン車のメーター、都会の生活に疲れてラジエーター・スプリングに癒され住み着いた、”キャリア・ウーマン”のサリー、イタリア生まれ(?)タイヤ屋で、フェラーリが世界一と思っているグイドとルイジ、他にもオーガニックのオイル屋、V8(キャンベルですね)の看板も楽しいフローの喫茶店風のお店はガソリンスタンドなど、擬人化した車たちの姿もみんな、理解しやすい人間世界の縮図といっしょ。中でも過去の挫折から逃げている町の名士ドック・ハドソンの姿は、若きマックイーンの成長物語に彩りを添える以上の深みを加え、この辺の描きこみの子供だましではない丁寧さが、ピクサーの強みだと思います。

マックイーンはレーシングカーなので、カッコよくスピードは出せるのですが、でこぼこ道のカーブは上手く曲がれず、レースには不必要なヘッドランプもバックミラーもないため、野に放たれると途端に不便。この描き方に上り詰めるのに必至だと、大事な物を見失うぞという教訓を、さりげなく感じました。老いたドックや引退間近のレース王キングの扱いに、老人や年長者を敬う気持ちが表れていて、それも嬉しく感じました。そしてマックイーンの行動に対して、大スポンサー・ダイナモの彼への申し入れは、企業の良心というものが、世の中の平静を保つには、必要不可欠なのだと感じました。企業倫理というやつですね。いわゆる勝ち組さんたちには、是非ご覧いただきたく思いました。

戦い、友情、恋、敬意、礼節、隣人愛などがわかりやすく描かれ、観終わればてんこ盛りなのに、観ている間はずっと楽しくウキウキ、終わりには自然と涙がこぼれて、とっても爽快感が味わえるという、正にアメリカ娯楽映画の王道作品。それプラス、ニューマンやマックイーンなど、往年のハリウッドスターへのオマージュも感じられる、アメリカ映画好きには堪えられない作品です。どうぞ大人お一人様でも恥ずかしがらずにご覧下さい。

では最期にレーサー姿のマックイーンの姿をどうぞ。そういえばニューマンとは、「タワーリング・インフェルノ」で共演していましたね。


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