ケイケイの映画日記
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2006年06月18日(日) 「DEATH NOTE デスノート」前編


父の日の今日観て来ました。息子達三人は父親孝行もせず、さっさと遊びに行ってしまい、代わりに私が趣味とお父ちゃん孝行を兼ねて、映画に引っ張り出しました。角座のチケットが一枚余っており、前に夫が観たいと言っていた「デスノート」に決定。日本橋で降りてチケット屋で1400円なりのチケットを買いました。これで私の電車賃460円を足しても1860円なりで、夫婦50割引より安くついたぞ(夫は定期券で途中下車)。「少年ジャンプ」で連載のコミックを映画化したもので、私は原作は未読です。何でも息子達によると、原作は「ジャンプ」ではなく「ヤングジャンプ」で連載した方が良さそうな代物だとか。結構期待して観ましたが、うーん、稚雑な点が目につき、映画の方はヤンジャンではなく、ジャンプ風の作品でした。監督は「平成ガメラシリーズ」の金子修介。

頭脳明晰で将来は警視総監を目指している夜神月(ヤガミライト・藤原竜也)は、警視庁のHPに不正アクセスし、犯罪者が野放しになっている実態を知り、法の限界を悟り激しい無力感に襲われます。そんな時「デスノート」と書かれたノートを偶然拾います。ノートの書いてある通り、一人の犯罪者の名前を書くと、その犯罪者は心臓麻痺で死亡します。こうして人の命を操るようになったライトは、次々と犯罪者を処刑していき、「キラ様」と呼ばれ、世間から救世主扱いされます。この前代未聞の大事件を解決すべくインターポールより天才的頭脳を持つL(松山ケンイチ)と呼ばれる少年が、警察庁に送り込まれ、二人の戦いが始まります。

冒頭からライトがキラになるまではテンポよく見せ、快調です。ライトの闇の処刑人ぶりは、性犯罪者、汚職、無差別殺人などで、法の網をかいくぐって無罪になった犯罪者を裁くので、観ていて確かに納得も出来ます。しかしその犯罪者が捕まると裁判も何もなしで殺してしまうのが、如何にも短絡的でちと疑問符がつきます。犯罪には必ず背景があり、裁判がある限りその審議も必要ではないか?と、ライトの恋人詩織(香椎由宇)のように、私も感じました。有無を言わさぬライトの裁きに、少々傲慢な感じがしたからです。

デスノートは死神(声・中村獅童)の落し物で、以来死神はデスノートの所有者にだけ見え、ライトの傍に住み着きます。この死神はCGなのですが、これがちょっとコミカルを通り越して、漫画っぽい。こういう設定はかぶりもんでも難しいので、無難なのはCGなのでしょうが、大昔の東宝の特撮物や子供向けドラマの「マグマ大使」や「仮面ライダー」など、今観ても魅力たっぷりのかぶりものを着た人間が扮し、チャーミングでした。反ってその方が良かったかも。これは昔を懐かしむ私の懐古趣味かも知れません。

死神に取り付かれたのか、行動が暴走するライト。権力を握ると人間は、最初の志どこへやらになりがちですが、彼にもそれがあてはまります。最初は犯罪者ばかりを狙い撃ちしていたはずが、自分の身を守るための行動に出て、その神気取りの様子には怒りを感じます。

頭が切れて生活にも自分の境遇にも何不自由ない子の、対警察への挑戦状のようなゲームに話が変換していくのですが、人の命を自在に操るので、はっきり言って不快です。ここは不快感を持っても良い箇所だと思いますが、ライトの心が段々とではなく、一気に悪魔的になっていくので、最初の志からの変貌の様子が希薄で、元からこういう傲慢な子なんだという印象です。もっと丁寧にライトの心の移り変わりを描いた方が良かったかと思いました。

対するLも食事らしい食事は取らず、お菓子ばっかり食べる引き篭もった青白い子で、どうも好きになれません。そんなに賢そうにも見えませんでした。原作もそうなんでしょうが、私には気持ち悪かったです。こんな小童(こわっぱ)二人に大の大人達が翻弄されて、頼りなくて情けない思いがしました。

数々の頭脳的なプレイ、のはずなんですが、私には駆け引きも強引に思え、だいたいデスノートのあんな定義では何でもありじゃんと、余り面白くありませんでした。何故かFBI捜査官が出てきますが(一応インターポール介入事件)、FBIってこんなバカじゃなれんだろうというくらいお粗末。尾行はバレるは、単独で何でも進めるは、あげくにあの結果。ハリウッド作品で数々のFBIの優秀さを見ている私には、ありえん展開です。

結局Lのセリフの「キラとボクは同じ。幼稚で頭がいい」の、幼稚な部分が目立つ作品でした。主演の藤原竜也は童顔のまま美しさを保ちながら成長し、永遠の美少年という感じで、キラの役には合っていました。松山ケンイチも「男たちの大和」とは打って変わっての変貌ぶりで、将来有望株みたいです。他ではキラの母親役の五代路子がいただけません。少ない出演場面で重要なシーンはありませんが、演技がオーバーで目立ちすぎ、鼻につきます。「ヨコハマメリー」でも、彼女のインタビューシーンだけ、一気に「芝居」になっていて、少々白けましたが、あれはドキュメント。こちら本職でのお仕事なんですから、2度続けて見せられたので、書いておこうと思います。作品の優劣には、案外こういう何気ないシーンが好感度をアップするもの。Lの執事的な役の藤村俊二など、飄々とした演技が自然な空気を醸し出し、とても良かったのですから。

でもナンだカンだ言っても、多分後半も観ると思います。


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