ケイケイの映画日記
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2005年11月28日(月) 「大停電の夜に」

本当はクリスマスが舞台というので、12月の半ばに観ようと思っていたのですが、29日に「炎のゴブレッド」をいっしょに観るはずの友人が仕事でダメになり、使用期限の迫るチケットを消化すべく、予定を繰り上げて今日観て来ました。うん、やっぱりクリスマス前が盛り上がる作品でした。

お話は一斉に停電が起こった東京のクリスマスの一夜が舞台。老若の12人の男女が織り成す群像劇です。不倫の清算、死期の近い父と息子、満たされぬ人妻、昔の恋人が忘れられない男、秘めた過去を持つ老婦人、片思いの若い女性、病魔に冒された少女など、多彩な面々がスクリーンを彩ります。

キャスティングは豪華で、ほとんどの人が観客に馴染み深いです。しかしそれが全てベストかというとそうでもない。お馴染みということは、それだけ観る方にも先入観があるということです。淡島千景は宇津井健と夫婦役ですが、最初妻が年上かと思っていたら、設定は夫75歳、妻68歳。実年齢は81歳の淡島千景を使いたいなら設定を変えるか、星由里子など美しい大物熟年女優に変えた方が良かったんじゃないかと、個人的に思いました。

多彩な面々と書きましたが、変に家がお洒落過ぎたり、一昔前のトレンディドラマのようなセットが目につき、そういう意味ではリアリティがありません。トヨエツが営むバーの路地は、異国風でムードがありました。そして停電といえばろうそくですが、映画を飾るキャンドルの数々がとても綺麗。薄明かりの中のカメラがとても美しく、女優さんがみんな綺麗に見えました。

たくさんのお話が、少しずつ絡まっていきます。確かに少々強引な持っていき方で、停電やクリスマスが生かされていないパートもありますが、私がこの作品を好きだと思えるのは、仄かにそこはかとなく、全ての登場人物に感情移入できたからだと思います。悪い人が誰もいなく、テレビもパソコンも電話も使えないとき、人は誰かと語たりあったり真剣に向き合いたくなるんだろうなと思えると、このお話たちはとても身近なものに感じるのです。散漫一歩手前で、私はOKでした。

トヨエツと田畑智子のかけあいの間合いがよく、楽しめます。一番好きだったのは、かつて愛した人への原田知世の思いやりを感じるけじめのつけ方でした。原田知世は決して美人ではありませんが大変美しく、スクリーンにとても映えます。少女スターだった時代を知る私には、なんだか嬉しく感じます。クリスマスのデートムービーにうってつけ、と言いたいところですが、どちらかといえば、夫婦の久しぶりの映画鑑賞に向いた作品ではないかと思います。


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