ケイケイの映画日記
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2004年09月16日(木) 「スウィングガールズ」

先週の土曜日から公開のこの作品、日曜日にはあのシネフェスタがお昼の回は満員で入れない、の情報を得て、急遽予定変更で今日観てきました。なるほどー、レディースデーでもない日に一番大きな第4スクリーンで、ヨン様の「スキャンダル」並みの入りでした。

私がこの作品を観たかったのは、「ウォーターボーイズ」の矢口史靖監督作と言うより、ズバリただいま私イチオシの若手女優・上野樹里ちゃんが主演だからです。「ジョゼと虎と魚たち」「チルソクの夏」と、いずれも地方都市を描いた作品で方言を使っていた彼女、今作でも山形の女子高生に扮しています。私が感心するのはどの役柄も微妙に違っているのに、彼女は地のように見えながら的確に表現し、その上役柄よりも、まぎれもない「上野樹里」の輝きを、観客に強く印象づけます。今回も70年代のちょっとおませだけど熱い体育会系少女だった、「チルソクの夏」に似た女子高生役ですが、現代のイマドキの女子高生のちゃらんぽらんさを出しながら、若さの特権である純粋さも、イマドキ風に軽めに出していました。

彼女のみならず、主要メンバーのトランペットの貴地谷しほりは、ちょっとはずすと意地悪系になりそうです。とっても美少女なので、そちらの方にばかり目がいきそうですが、主要メンバーの中で一番個性が出しにくい良江役を、素直に演じていました。トロンボーンの本仮屋ユイカは、地味な役柄ながら存在感を存分に発揮。すごいなぁと感心していたら、来春からのNHK朝ドラのヒロインだそうです。ドラムの豊島由佳梨はこれがデビュー作。ちょっと田畑智子似の将来有望のコメディエンヌぶりで、初出演でこれだけキャラを立たせたのは立派。ドラムソロもすごく上手でした。ピアノの平岡裕太は、女性陣に圧倒されたか、少し平凡です。映画・テレビ両方の「ウォーターボーイズ」を観ると、今若手の男子は粒揃いみたいなので、彼にも是非頑張って欲しいです。

ストーリーは至って単純。ひょんなことから全く楽器を演奏した事もなかった女子高生達が、いやいやジャズを演奏するはめになり、次第に魅せられ頑張って行く過程を、大いに笑わせながら青春している様子を見せてくれます。ストーリー展開は雑と言うか、そんなわけないだろうのご都合主義で運ばれますが、横断歩道を渡るときの音でジャズのリズムを習得するシーンの若々しさや、イノシシ退治のベタだけど笑わせてくれるシーンなどが、それを忘れさせてくれます。

大いに笑ったけど感動は薄いなと思いきや、ラストの演奏場面で私は号泣。そういえば「スクール・オブ・ロック」でも、私はラストの演奏場面で泣いたなぁと思い、でもこっちはだいぶ薄口ですがねぇと思いつつ・・・。

あぁ、これは子供達が幼稚園の運動会で、年長さんの鼓笛隊が立派に演奏して見せてくれた時の親の涙だと思い当りました。子供さんがおられる方は心当たりがあるかと思います。楽器を持ったこともなかった子が、一生懸命練習して立派に演奏しきる、その成長の様子に親は感動し涙します。

彼女達も楽器の演奏経験もなく4ヶ月特訓して、この作品では吹替え一切なしで、演奏しているそうです。うちの息子もトロンボーンを少しかじっていますが、あれだけ楽器が使えるようになるのは、大変な練習量だったと思います。まして音合わせはそれより大変。彼女達の心の一体感が手に取るように伝わり、それがストーリーと重なり感動を呼んだと言うわけです。蛇足ながら、彼女達の演奏が幼稚園児並みと言う訳ではなく、素人の私の耳にはとても上手でした。純粋さが同じと言う事で。

元気ハツラツ、栄養ドリンクのようなやる気を、疲れた大人にももたらしてくれる作品でした。


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