「マルキュウで待ち合わせてさぁ」

　会社のバイトのコたちが話しているのをフと聞きました。

　皆さんご存知の通り、「マルキュウ」というと渋谷駅前のＳＨＩＢＵＹＡ１０９というファッションビルの略称でございます。
　マクドナルドを「マック」、スターバックスを「スタバ」などは当然ですし、中にはファーストキッチンを「ファッキン」と略すチャレンジャーな方もいらっしゃるワケです。

　そんなバイトのコたちの会話でフと学生時代を思い出してしまったワケです。

　１０年以上前の学生時代、実家に帰省した時のコトでございます。
　大学進学で上京して何年か経ち、久しぶりに高校時代の友人たちと飲みに行ったワケです。皆がサワーやチューハイを頼むなか、「ドライマティーニ。ヴェルモットはノイリー・プラットのフレンチ・エクストラ・ドライで」と注文するボクの洗練された振る舞いや仕草、言葉遣いに地元の友人は、「東京に行って変わっちまった」だの「郷土の心を捨てちまった」などと揶揄されつつも楽しくおサケを嗜んでいたワケでございます。
　懐かしさも手伝い、２軒、３軒とハシゴしていくのですが、そこは田舎でございます。２２時だというのにすでにチェーン展開している居酒屋しか開いてはおりません。次はドコに行こうかと歩きながらボクが、「この時間だと駅前の『つぼ八』しか開いてないだろ」というと、ほどよく酔いが回った高校時代のレスリング部の同期のオオカワくん（会って３日の相手と無理矢理結婚してしまうアグレッシヴさん）が東京への対抗意識がそうさせたのか、ここぞとばかりにしたり顔でボクの顔におツユを飛ばしながらガなったワケです。
　「シャンコバ、東京じゃまだ『つぼ八（はち）』なんて言ってんのか？　コッチじゃそんなカッコワルイ言い方しねーんだよ。コッチじゃ今、『つぼエイト』って略してんだよ！」
　オオカワくん多い多いー。略してなーい。（←言い放ったあとの驚くほどのカッコワルさにその後のオオカワくんが荒れたのを誰が責められましょうか）