季節風
若葉



 ある2世

20年間憧れ続けてきたものを

手に入れようと思った



20年間で失ってきたものを

あと10年かけてでも取り戻すのだと意気込んでいた



一生懸命 足掻いて あがいて・・・



でも ある日

どうしても越えられない線を目前にして

ふと振り返ってみた



すると

20年かけて築き上げてきたものを

倍以上の早さで壊しつつあるのかも知れない・・・と

自分が哀しくなってしまった

2000年03月31日(金)



 ある日曜の昼下がり

微かに震える心臓にメスが入れられた瞬間、

真っ赤な噴水が噴き上がる。


みるみる血に染まって行く氷水の池を、

セルセーバーが吸い上げて行く。


そして、

リットル単位の濃厚赤血球で満たされた

人工心肺の回る音が、

手術室内に響いていた。




そういえば幼い頃、

「一度停められた心臓が再び動き出す瞬間に、

神の存在を実感した」と語った

元心臓外科医の経験を聞かされたことがあったっけ。


そういう感性を失わなかった人になら、

「信仰」という賜物が

与えられるものなのかも知れないな・・・。




そんなことを想いながら、

メスにこびりつく血液を黙々と拭き取っていた。

2000年04月04日(火)



 迷路

『憧れ続けてきたもの』は 無条件の愛情

『失ってきたもの』は 生きる喜びと自分らしさ



しかし

批判するとか擁護するとか

そういう次元の問題ではないのかも知れない



すべては 純粋に個人的な

あるいは家庭的な問題だったのかも知れない



今 この手で

共依存の連鎖を断ち切ることができたなら

すべては解決するものなのかも知れない…



だが

両親の信じていたものが

「我が家の秘密」を数倍に膨れ上がらせていたことも事実



そして それらが

数年後には次々と変化してゆくモノだったということも事実



そして

「変化」が起こる前に過ぎ去ってしまった私の「時間」が

もう取り戻せないものである ということも

事実なのだ

2000年04月09日(日)



 黄金律と共依存

「自分にして欲しいと思うとおりに、人にも同じようにする。」

そこから始まる病理もある。

2000年04月16日(日)



 傷口

最近

ほんのささいなきっかけで

わけもなく涙が止まらなくなることがある



幸せそうな親子を見かけた時

楽しそうにふざけ合っている学生達とすれ違った時

ハッピーエンドのドラマを観た時

桜の花を見上げた時

「思い出話」を文章化した時

両親の白髪が確実に増えていることに気付いた時・・・



頬を伝ってぼろぼろとこぼれ落ちる水滴を

なす術もなくぼんやりと眺めながら



こうやって

年齢相応に人間らしく

私らしくなってゆけるのだろうか・・・と

心の中で呟いてみたりもする

2000年04月23日(日)



 弱虫

言葉にすると 嘘になる

言葉にすると 縛られる

言葉にすると 傷つける

言葉にすると すべてが終わる


そんな気がする

2000年05月06日(土)



 疲労

すべては「終わりが来るまでの辛抱」のはずだった

しかし月日は流れ まだ生きている


長い長い 真っ暗なトンネルを抜けると

私は「大人」になっていた


心の奥に「子供時代」を封じたままで

2000年05月07日(日)
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