読書の日記 --- READING DIARY
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 壁のなかの時計─ルイスと魔法使い協会/ジョン・ベレアーズ

『The House With a Clock in Its Walls』の翻訳。ルイスと魔法使い協会シリーズ(1)
交通事故で両親を失ったルイス少年は、おじのジョナサンの家に引き取られる。おじさんの家には、たくさんの時計があった。やがておじさんが魔法使いだと知ったルイス。おじさんばかりでなく、隣のミセス・ツィマーマンも魔女だった。二人とも、何か重大な秘密を隠しているようなのだが…。

ルイスが学校に行くようになると、タービーという友達ができる。タービーはスポーツも万能な人気者だったが、太ったルイスは野球さえ満足にできないので、タービーに馬鹿にされてばかりいた。何とかタービーの興味を引こうとして、丘のてっぺんにある墓地で、魔法を使ってみせることを約束してしまう。見ては行けないと言われていたおじさんの本から、魔法の呪文を勉強したルイスは、自分でも知らないうちに霊廟の中の魔女を呼び出してしまう。彼女はアイザック・アイザードという邪悪な魔法使いの妻で、世界の終りを次げる時計を動かして、この世界を破滅に導こうとしていたのだ。そして、魔女とミセス・ツィマーマンとの戦いが…。

この本の挿絵は、エドワード・ゴーリーである。挿絵のイメージも加味されて、不気味で恐ろしい雰囲気となっている。得体の知れない車に追いかけられたり、死んだはずの人間が真夜中に訪ねて来たり…。特に派手な見せ場はないものの、じわーっと怖いのである。主人公のルイスは根っから弱虫で、よせばいいのに、いろいろな所に首を突っ込む。そうして怖い思いをして、すぐ泣いたり、失神したりするのだが、徐々にルイスがいとおしくなってくるのが不思議。ルイスはマナーのきちんとした、とても良い子で、全然さえなくてヒーローにはほど遠いのだが、すぐに泣いたりしてしまうところが、子どもらしくてかわいいじゃない!という感じだ。しかし、最後に魔女をやっつけるのは、ルイスなのだ。

ところで、主人公ルイスと書いたが、2巻、3巻を見ると、主役はむしろミセス・ツィマーマンのようだ。この後のミセス・ツィマーマンの活躍に期待したい。2巻にはルイスのガールフレンドも出て来るし…。

余談だが、この中に出てくる、灯りをともせる「栄光の手」、ハリー・ポッターの2巻にも出てこなかっただろうか?ローリングは、この物語もチェックしていたかもしれない。


2001年07月06日(金)
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 「ちいさいロッタちゃん」&「ロッタちゃんのひっこし」/アストリッド=リンドグレーン



リンドグレーンは、『長くつしたのピッピ』の作者。
このロッタちゃんのお話は、映画『ロッタちゃん、はじめてのおつかい』の原作。末っ子のロッタちゃんは、いたずらであまえんぼう。このロッタちゃんと家族の間の出来事を、子供の目から描いた楽しい本。子どもの心理が、大人の思惑を含まずに、生き生きと描かれているのが新鮮。

リンドグレーンは数々の物語を、自分の子どもたちに話して聞かせたとのこと。やはり児童書は、お父さんやお母さんの深い愛情の入ったものが、不朽の名作となるようだ。トールキンの『指輪物語』もしかり、ローリングのハリポタもしかり。本が売れるとか売れないとか以前に、子どもを楽しませたいという純粋な気持ちがあるからだろう。子どもは、そういった本当の愛情を、敏感に感じるのかもしれない。

しかし昔のものだから、訳が少し古めかしい。
ロッタちゃんが自分のことを「あたい」と言ったり、「○○なのさ!」などという言葉遣いをしたりするのに違和感を感じる。おてんばな感じを出しているのだろうが、今の子ども達に、そのニュアンスが伝わるだろうか?そろそろ新訳を出してもいいのでは?

2001年07月07日(土)
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 ハヤ号セイ川をいく/フィリッパ=ピアス

セイ川の近くに住むデビッドは、大雨のあと、川でカヌーを見つける。どこから流れてきたのかと、カヌーに乗って川を行くと、持ち主であるアダムという少年に出会う。カヌーで遊ぶうちに、二人の間は固い友情で結ばれ、やがてアダムの祖先の宝を探す冒険へと発展する。

古き良き児童文学といった趣に冒険・ミステリーの要素が加わった物語。
デビュー作であるのに、ピアスの語り口はすばらしい。よく考えられた筋立てで、子どもがわくわくするような冒険と秘密に満ちている。主人公の二人の少年の性格の対比もはっきりしているし、彼らの家族の情景も目に浮かんでくるようだ。それに、この二人の少年の素直でお行儀のよいこと!私は個人的にこういう少年たちの物語は好きである。

変に悪ぶった不良少年の話は、あまり好きではない。なので、『ハックルベリー・フィンの冒険』などのピカレスクものよりは、こういったwell manneredな子ども達の話のほうが、ずっと心穏やかに読める。

またこの時代、父親の存在の大きさというのは、絶対的なものがあったのだと改めて思った。例え、死んでいようが生きていようが、である。そういった家族の描写を読むのも、心が安らぐような気がする。かなり分厚い本で、途中中断もしていたのだが、半分以降は一気に読んだ。


2001年07月08日(日)
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 その他児童書

姪用に用意した本。どれもかわいくて面白い。

『長くつ下のピッピ』/アストリッド・リンドグレーン
内容(「MARC」データベースより)
世界一強い女の子ピッピのとびきりゆかいな物語。となりの家に住むトミーとアンニカは、ごたごた荘でサルと一緒に自由気ままに暮らしているピッピがうらやましくてなりません。90年刊の新版。


『リサひこうきにのる』/アン・グットマン
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リサが1人でパリからニューヨークへ向かいます。初めての飛行機での1人旅では、いろんなできことがおこりました。リサの席は「ブルーレディ」(青い洋服を着ているから)のとなり。でも、リサがゴソゴソしすぎたのか、どこか別の席へ行っちゃった。広々としたシートでおひるねでもしようかと思ったら、なんとトレーにのった機内食がでてきました。それだけではワクワク度が足りないのか、今度は映画(「カウボーイズ・フォーエバー」)が始まります。スクリーンが見えなくて前の座席にもたれたら(リサは小さな犬だから)、おっと、オレンジジュースの入ったコップを倒してしまいました。でも、大丈夫。「ひこうきレディ」がトイレの洗面台でリサを洗ってくれたのです。おまけに、飛行機の操縦室にも連れて行ってくれました。(パイロットさんたちはリサに、石鹸のいい匂いがするね、と言ってくれました。)座席に戻ったころには、リサは「すっかりきれいになって」アメリカに到着です。ストーリーはとっても単純。

本書の魅力は、アン・グットマンの愉快で愛情のこもったストーリーと、あちこちに飛び散ったオレンジ・ジュースのしずくやとてもキュートな洗面台など、ゲオルグ・ハレンスレーベンの細部にまで神経の行き届いたすばらしいイラストにある。飛行機に乗る前の子どもたちにはもちろん、だれが読んでも楽しめる絵本。実にゆかいな「リサとガスパール」シリーズ。


『そらまめくんとめだかのこ』/なかやみわ
出版社/著者からの内容紹介
雨降り続きの毎日。やっと雨があがって、そらまめくんたちが、いつもの広場まで行ってみると、そこは大きな水たまりになっていました。グリーンピース兄弟は、ベッドを船にして遊ぶことを思いつきます。みんなで楽しく遊んでいるのですが、そらまめくんは、ベッドをぬらしたくないので、わがままを言ってピーナッツくんのベッドにむりやり乗り込みます。するとバランスをくずしてどぼーん! 水たまりにおっこちてしまいました。 

でも水の中はお花でいっぱい。みんなでもぐって遊び始めると、迷子のめだかのこに会いました。なんとかして、めだかのこをもとの小川まで帰してあげようと、そらまめくんたちは、知恵を絞ります。そして、ベッドの中に水を入れて小川まで運んであげることを思いつきます。 だれのベッドで運んだと思います?それは、誰よりも大きくて、水もたくさん入るそらまめくんのベッドでした。わがままを言っていたそらまめくんも、めだかのこのために一肌脱いだというわけです。やるね!そらまめくん! 待望の『そらまめくんのベッド』の続編、単行本化!!



2001年07月09日(月)
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 The House With a Clock in Its Walls/John Bellairs

ルイスと魔法使い協会シリーズ(1)
交通事故で両親を失ったルイス少年は、おじのジョナサンの家に引き取られる。おじさんの家には、たくさんの時計があった。やがておじさんが魔法使いだと知ったルイス。おじさんばかりでなく、隣のミセス・ツィマーマンも魔女だった。二人とも、何か重大な秘密を隠しているようなのだが…。

ルイスが学校に行くようになると、タービーという友達ができる。タービーはスポーツも万能な人気者だったが、太ったルイスは野球さえ満足にできないので、タービーに馬鹿にされてばかりいた。何とかタービーの興味を引こうとして、丘のてっぺんにある墓地で、魔法を使ってみせることを約束してしまう。

見ては行けないと言われていたおじさんの本から、魔法の呪文を勉強したルイスは、自分でも知らないうちに霊廟の中の魔女を呼び出してしまう。彼女はアイザック・アイザードという邪悪な魔法使いの妻で、世界の終りを次げる時計を動かして、この世界を破滅に導こうとしていたのだ。そして、魔女とミセス・ツィマーマンとの戦いが…。

この本の挿絵は、エドワード・ゴーリーである。挿絵のイメージも加味されて、不気味で恐ろしい雰囲気となっている。得体の知れない車に追いかけられたり、死んだはずの人間が真夜中に訪ねて来たり…。

特に派手な見せ場はないものの、じわーっと怖いのである。主人公のルイスは根っから弱虫で、よせばいいのに、いろいろな所に首を突っ込む。そうして怖い思いをして、すぐ泣いたり、失神したりするのだが、徐々にルイスがいとおしくなってくるのが不思議。ルイスはマナーのきちんとした、とても良い子で、全然さえなくてヒーローにはほど遠いのだが、すぐに泣いたりしてしまうところが、子どもらしくてかわいいじゃない!という感じだ。しかし、最後に魔女をやっつけるのは、ルイスなのだ。

ところで、主人公ルイスと書いたが、2巻、3巻を見ると、主役はむしろミセス・ツィマーマンのようだ。この後のミセス・ツィマーマンの活躍に期待したい。2巻にはルイスのガールフレンドも出て来るし…。

余談だが、この中に出てくる、灯りをともせる「栄光の手」、ハリー・ポッターの2巻にも出てこなかっただろうか?ローリングは、この物語もチェックしていたかもしれない。


2001年07月10日(火)
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 The Vile Village/Lemony Snicket

(A Series of Unfortunate Events Book7)

「不幸シリーズ」7巻目。
バスに揺られて、カラスが群れ飛ぶ、老人ばかりの奇妙な村にやってきたボードレールきょうだいは、おかしな規則に守られたその村で、「なんでも屋」のヘクターに引き取られて暮らすことになった。そのヘクターの家の前で、オラフ伯爵に誘拐されたイサドラの詩を発見する。何はともあれ、友達を救おうとするきょうだいの前に、またしてもオラフ伯爵が立ちはだかる。

今回の最大の謎は、凶悪犯オラフに間違えられて、殺されたジャックス・スニケットとは何者か?ということだ。きょうだいの両親の死の真相をも知っているかのようなスニケットであったのだが…。

ヘクターに助けられて、無事その村から脱出できるかと思われたが、謎に満ちたまま、またしてもダンカンとイサドラと別れなければならない3人。村に残された3人は、これからどうなるのだろう?

はなから8巻目に続く予感をふくみながら、3人のきょうだいの不幸話が続く。それでも親友を思いやる彼らの気持ちが涙を誘う…。しかし、いつにも増して素っ頓狂なオラフ伯爵の扮装がおかしい。

この巻で、クラウスは13歳になり、サニーがひとりで立てるようになる。
この先も、まだまだ不幸な目に会いながら、彼らは成長していくのだろう。
合掌!


2001年07月11日(水)
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 蝶の舌(BOOKPLUS)/マヌエル・リバス

ラテン文学の短編集。この本が原作となった映画は、大変評判がいいようだ。しかし、映画になった表題作「蝶の舌」を含め、何も残らない本だった。いいとも悪いとも感じない。逆に、悪ければ悪いなりに記憶に留まるから、そういう作品は、それはそれでいいのかと改めて認識させられたような感じ。こんなに何も残らない本というのは、内容が全く記憶に留まらないので、いいのか悪いのかわからない。

なによりも、それぞれの話が中途半端な気がして、どれを読んでもフラストレーションがたまる。そして、さらに言えば、話の意味が不明だ。
短編の名手サマセット・モームの言葉を借りて言えば、日常を切りとって投げ出しただけの、D・H・ロレンス的な作品だと思う。そこに何らかの手を加えてこそ、作家、あるいは小説といえるのでは?という思いがしてならない。オープン・エンディングにして、余韻を残すというのともまた全然かけ離れた作品だと思う。ガルシア・マルケスが最高の小説だ!と誉めている言葉が嘘っぽい。


2001年08月01日(水)
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