東京の片隅から
目次きのうあした


2021年03月12日(金) 右や左の

ちょっと前に、駅のコンコースに座り込む男性がいて、具合が悪いのだろうか駅員を呼んだ方がいいだろうかと遠目で思ったのだが、次第に見えてきたのが彼の前に置いてある空き缶。
我が目を疑う。子どもの頃、新宿のガード下で見た風景だった。

彼がそこにいたのはその日だけで、翌日にはもう姿がなかった。何かの罰ゲームであって欲しいと思うが、その日そこにいたのは確かに事実で、ものすごい衝撃を受けた。

今は21世紀だ。日本はそこまで戻ってしまったのか。彼がいた場所を通るたび、今夜は屋根の下で眠れているのだろうかとしばらく思う日々が続いている。


2021年03月11日(木) もう十年、まだ十年

あの日から10年。
あのときは育児休業が終わりかけで、保育園も無事決まって、そろそろ入園準備と職場復帰準備をしなきゃなぁと呑気に構えていた。
あのときからずいぶんいろいろなことがかわってしまったように感じる。


2021年03月10日(水) ストレス

目下一番胃が痛いのは子どもの勉強のこと。考えると夜も眠れなくなる。当人とまーさんがぐうぐう寝ているのが余計腹が立って眠れない。
勉強についてあれこれ言うが、実際に勉強を見ているのは私なので、結局悩んでいるのは私だけなのか。
悩み損と思いつつも、やっぱり胃がいたいものは胃が痛いのである。しばらくご無沙汰だった胃薬とまたすっかり旧交を温めている。
女性の平均寿命は男性よりも長いことになっているが、私の場合は育児ストレスで確実に縮んでいると思う。長生きできる気がしない。学校の勉強に苦労しないだけでずいぶん育児はイージーモードになるんだな、と思う。


2021年03月09日(火) J-POPと読解力

子どもが松本隆作詞の歌を聴いて「意味がわからないところがある」と。
そもそも小学生だから語彙力が追いついていないところもあるけど、「星降る夜」的な比喩表現がわからないらしい。
今のところ読んでいるのは子ども向けのお話かライトノベルをぼちぼち、児童文学にやっと手が届き始めたかなというところなので、文学的表現にも慣れていないんだろうなぁと思う。
いろいろな本を〔時には背伸びして〕読むと言葉の引き出しが増える、そうするといろいろな歌の意味もわかるようになるよ、と説明したが、理解できたかどうか。

もう曲を聴くのは配信が主体、歌詞カードを読むなんて子とはよほどコアなファン以外にないだろう。そうなるとマスへのヒットを狙うならより簡単な直接的な言葉になっていくのではないかと思う。今でもアイドルはそういう傾向にある。
そう考えると、松本隆のすごさを感じる。トップアイドルにあの歌詞を歌わせてヒットチャートの上位にいたというのはすごい。


2021年03月08日(月) リサイクルできません

会社のリサイクルボックスに「FAX用紙はリサイクルできないので入れないで下さい」というステッカーが貼ってある。
このリサイクルボックスは入社して程なく導入されたものだからもうかれこれ20年くらいは現役だろうか。ステッカーは当初から貼られている。
今の若い子たちはこの「FAX用紙がリサイクルできない」意味がわかるのだろうか。
要するに感熱紙はリサイクルできない、ということなのだが、FAXが複合機に置き換えられ普通紙で印刷できるようになって久しい。最後に感熱紙のロールを交換したのはいつだ?


2021年03月07日(日) 深爪

マスク生活で口が隠れているから、爪を囓る癖がどうにかならないかと思っていたのだけど、在宅で水仕事が増えたこと、手洗い消毒の繰り返しでささくれが増殖したことなどで、いくら保湿しても結局手はカサカサだし、爪はすぐ割れる。むしろ事態が悪化したような気がする。


2021年03月06日(土) 「アレックスと私」

ペパーバーグ「アレックスと私」読了。
ハードカバーででたときに読み損ねてそのままになっていたが、ハヤカワから文庫化された。ノンフィクションシリーズで、「ソロモンの指輪」から始まっている。納得のラインナップ。
「天才ヨウムアレックス」のことはどこかで知っていた。ディスカバリーチャンネルだったかもしれない。
著者とアレックス(とその他のヨウム)の日々がエッセイとして綴られるのだが、根気強い学習実験に脱帽。そして研究費を獲得するため書類を提出し、研究を続けるための場を求めて全米の大学や研究機関を点々とするその境遇に、任期付き研究者の友人たちを思い出して胃が痛くなる。
これまでにないジャンルの研究だと教員の枠がなかったのもあるだろうし、当時の大学はまだ男性社会だから、女性研究者である著者は採用を後回しにされがちだっただろうし、それにあちらはキリスト教世界、人と動物の境界が曖昧になることに対する感情的な忌避感もあっただろう。
本の冒頭にアレックスの生前の写真が何枚も載っているのだが、真面目な顔をしているときと、何か悪いことを考えていそうなときの顔つきが全然違うのが、元インコ飼いとして笑える。鳥は結構感情が顔に出るし、自己主張のある生き物だ。


2021年03月05日(金) 普通じゃない

子どもよ、普通のお母さんは箱一杯に刺繍糸を盛っていたりアンモナイトの化石が引き出しに入っていたりしないし、普通のお父さんは家のデッキでスキー板にホットワックスかけたりしません。


2021年03月04日(木) 誕生日

また一つ歳を取った。といってもあまり変わりない日々だ。50になるといろいろ違うのかな。


2021年03月03日(水) 「柿の種」

寺田寅彦「柿の種」読了。
中学受験の日曜テストで「団栗」を読んだのが寺田との出会いだ。それにしても「団栗」は衝撃的だった。問題文を解いた後も何度も暗記するほど読み返し、問題文は後で処分してしまったので作者名を探すのに往生し、そのうちきょうだいが同じ問題を解き始めたので作者名が再確認でき、以来、折に触れ読み返すときがある。
理系の人らしき冷静な嗜好と漱石門下らしい余計なことをぐるぐる考えてしまう感じ(笑)ニヤニヤしながら読む。この人は近くにいると絶対面白いはず・・・。短文の中にちょいちょい顔を出す「お父さん感」が微笑ましいのであった。


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