【Realistic Pillow】
秋野京



 Eternity



遠くで鳴り響く、サイレンの音。
満月の夜。6月21日。
工藤邸の自室の窓を開け放つ。
夜空に舞う純白の翼を見止めて、そっと溜息をつく。

「こんばんは、小さな名探偵」
目の前に降り立った怪盗キッドは、不敵な笑みを零した。
「待っていてくれて、ありがとう」
跪いたキッドと、目線の高さが同じになる。
「…観念して、俺に捕まりに来たんだろ?」
再び怪盗の口元から笑みが零れる。
「まさか。逢いに来たんだよ、コナンくんに」
逢いたかった。
そう言って笑う怪盗は、瞬きの間に素顔に戻っていた。


「なぁ、永遠って信じてる?」

手の中の、キラキラ輝く宝石を持て余すかのように転がしながら、快斗が呟く。
その瞳は、どこか非現実的な何かを映しているようで、ぞくりとする。
こんな顔をする快斗は、今まで見た事がない。
怪盗キッドの見せる、月のような冷たい空気とも。
黒羽快斗の見せる、太陽のような暖かな空気とも違う。

何が快斗をそうさせているのか。
その答えは、快斗の手の中の宝石で間違いないだろう。
今日のターゲットはビッグジュエルの1つなのだとは、快斗本人から聞いていた。
怪盗キッドは、ビッグジュエルと呼ばれる宝石をメインに狙っている。
その詳しい理由を聞いた事はないけれど。
突然『永遠』などという単語を持ち出した、快斗の真意を量りかねる。


何が正しい答えかなんて分からないけれど、思ったままを口にしてみた。
「…俺は、信じない」
「そっかぁ、信じないか」
自嘲気味な呟き。
ピントの合っていなかった快斗の視線が、少しずつハッキリしてくる。

「俺が探しているのは、永遠を約束してくれる石なんだけど」
ギュ、と快斗が手の平の大きさ程の宝石を握り締めた。
「…これも、違ったんだよね」
苦笑いする快斗の顔は、今にも泣きそうだ。

手を伸ばし、白くなる程に強く握られた快斗の手に触れてみた。
俺よりも大きな手。
けれど、頼りなく感じてしまう、今の快斗の手。
引き寄せて、小さく口付ける。

「永遠なんて知らないけど。
こうして少しずつ、お前と時間を重ねていきたいとは…思ってる」
驚いた、快斗の視線を真っ直ぐ受け止めながら。
少しでも、俺の心が伝わるように。
もう一度、口付ける。

『永遠』なんて存在しなくても。
共に過ごす時間が積み重なって。
共に過ごす時間が永く続いていけばいい。
そう思っている自分は探偵として。
江戸川コナンとして、どうかしているとは分かっている。

けれど。…けれど。


「信じていい?」
ようやくいつもの微笑みを零す快斗に、心の中で安堵の吐息をはいて。
「俺を、誰だと思ってるんだよ」
言った瞬間、抱き締められた。

「…コナンくん、大好き、愛してる」
至近距離で、重なる視線。

「ずっと好き。永遠に愛してる」
重ねられた口唇。

かつん、と快斗が持っていた宝石が床に落ちる音。
それは、二人が紡ぐ永遠の開始を告げる音のようだと。
遠ざかりそうになる意識の中で、ぼんやりと思った。



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補足つっこみ(情けない…)
自分の誕生日にまで、お仕事しちゃう快斗w
きっと自分の元に現れるだろうと確信してるコナンw
待ち合わせしていなくても、工藤邸が二人の逢瀬の場所にw
とりあえず、ハピバ快斗♪
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2010年06月21日(月)
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