anxious for Heaven

鳥かごなんて、最初からなかった。

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2008年11月24日(月) 裏・小人の靴屋
久しぶりに記憶が飛んだ。

ここしばらくは、来るかな、っていう予兆を感じるたびに、必死に抑えこんでいた。
だから、いつぶりだ?
とりあえず一年以上であることは間違いがない、そのくらい。

娘がたちの悪い風邪を引き、毎日看病したり、病院へ行ったり。
夜中は吐いたもので窒息しないように、なんて気を配ると、熟睡できないし。
空いた時間で、来月の引っ越しの為の荷造りをしていたりしたら。
あっさりと風邪を移され、しかもあっという間にこじれてしまった。

体調が悪いと、あまりよくない夢を見る、心の暗部を引きずりだされるような。
そんなことも重なって、久々に、すぅっと、記憶が飛んだ…4時間くらい。

娘の昼寝の寝かし付けをしていて、気付いたら、夜だった。
荷物置場と化した、洋間のソファで目を覚ました。
寝起きの頭で2〜3秒訝しんで、…すぐに状況を理解する。
1階に降りると、冬寿がPCに向かっていた。
話を、聞く。

『台所見てみ〜?』

はっと振り返ると、ピカピカになった台所が。
コンロは油汚れから錆まで綺麗に落としてあり、艶々していて。
臭いに弱いから、と、普段は冬寿任せの排水溝は、一番底まで磨いてある。
捨て損なった調味料の小瓶なんかも、洗ってゴミ袋にまとめてあったり。
普段、私が後回しにしてきた作業や、冬寿に任せてきた作業や。
私じゃあまり気付かないような所まで、きっちりと掃除が行き届いていた。

すごく几帳面だな、『誰だろう?』

誰の仕業かは、冬寿がすぐに教えてくれた。
そっか、一番年の離れた妹のようで、一番長い付き合いの彼女か。

話を聞くと、娘の面倒は、ずっと冬寿が見ていたらしい。
『彼女』も少しだけ、娘に手を振ったりしたらしいんだけど。
娘は、何かを感じていたのか、いつもと違う『愛想笑い』をしていたらしい。
うーん。

この子が大きくなったときに、『そういう事態』が起きたらどうするの?
それを考えて、怖くて、正直、不自然な労力まで使って抑えこもうとしていた。

でも、そういうのが良くない、らしい。
そこで無理をすることは、想像以上の負担みたいだ、自分自身にとっても。

子供の面倒は『あなた』にしか見ることが出来ないんだから
他のことは他人に頼んでしまっても構わないんだよ

…という伝言付き。
自分でもわかっていたようで、本当には納得出来ていなかったことを、改めて。

この子が大きくなったとき、一体何と説明すればいいのか?
それを思って、怖がって、いつのまにか、必死に目を背けようとしていたこと。
だけど。
多分これは、限りなく減らすことは出来ても、ゼロにはならない問題。
だったら、少し違うふうに考えなきゃいけない、のかもしれない。

いつのまにか、忘れていたな、自分が、周りが、自分達が決めた方向性を。
それは、目を背けることじゃなくて、共生することだったはずなのに。
否定することじゃなくて、受け入れて、より良くしていくことだったはず。

忘れてたな、初心。
そして、一番大事なこと。

娘に何と説明するかは、少し時間をかけて考えよう。
腕の傷に突っ込まれたときなんかは、本当のことを言うつもりだった。

辛かったんだよ、でもね、みんなが助けてくれたんだよ。
そうやって立ち直った過程を否定したくないから、だから、大事な傷なの。
でも、傷のせいで、たくさんの人を心配させたし、自分も嫌な思いをした。
だから、あなたには、こんな傷は背負ってほしくないんだ。
だから、ね。
どうしようもなく苦しくなる前に、誰かに話そう?
一人で悩まないで、打ち明けて、相談しよう?

…そっか、自分で改めてまとめていて、思った。
これも、同じなんだな、って。
なんだ、簡単なことじゃないか。



とりあえず今日は(正確には昨日だ、もう朝になるもの…)
小人さんに、ありがとうを伝えたいな、と思う。
曇ったシンクを磨いてくれたこともそうだけど、でもそれ以上に。
心の曇りを拭うきっかけをくれたことに対して。



それに、この状態をもう何年も一番近くで見て
それでも、個を認めて、同時にひとつでもあると言って
投げ出さず、甘やかさず、きちんと支えてくれる冬寿にも



人に助けてもらうには
それに値する人間でいよう

一緒にいられると思ったのは
たぶん、間違いじゃない。
written by:Kyo Sasaki
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