読書の日記 --- READING DIARY
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 わたしを離さないで/カズオ・イシグロ

『わたしを離さないで』/カズオ・イシグロ
単行本: 349ページ
出版社: 早川書房 (2006/4/22) ASIN: 4152087196

内容(「BOOK」データベースより)
自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々がたどった数奇で皮肉な運命に…。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく―英米で絶賛の嵐を巻き起こし、代表作『日の名残り』に比肩すると評されたイシグロ文学の最高到達点。アレックス賞受賞作。


以前に原書 『Never Let Me Go』 を読んだけれども、ぜひ土屋政雄さんの翻訳で読んでみたかったので、図書館で借りて読んだ。原書でも最初は何の話だろう?と思ったが、やはり翻訳でも前知識がないと何の話かわからない。でも、土屋さんの訳で読んでみてよかった。もやもやしていたものが晴れた感じだ。

テーマは、読んでいるうちに少しずつ少しずつわかってくるのだが、それが学校の寮生活といったような当たり前の日常の風景の中に静かに織り込まれてくるので、何とも不気味なのだ。いきなりあっと思うわけではなく、徐々にそうなのか・・・いや、まさか?みたいな感じで、最後まではっきりしたことは書かれていない。

あまりに衝撃的なので、これはテーマを明かしてもいいものだろうか?と悩んで、原書の時には感想が書けなかったのだが、今回もやっぱりあまり詳細には書けない。しかも、文章に書かれていない部分が恐ろしいのだから(ホラーという意味ではない)、具体的に書きようがないとも言える。

登場人物であるヘールシャムの生徒たちは、一見普通の子どもたちなのだが、世間一般の人間とは決定的に違うところがある。とても怖い話なのだが、自分たちの運命を黙って静かに受け入れている彼らには、反抗心とかは芽生えないのだろうか?と疑問にも思った。

普通の人間のように育てられていながら、普通はそんなことはしないんじゃないかという部分もある。そのあたりはしっかり計算されて書かれているのだろうと思うので、そういう矛盾がまた、怖い。さらに言えば、普通という言葉で分けてしまっていいものかどうかさえわからない。

使命を終える・・・といった表現が、何ともぞっとする。ある意味でSF的な話だが、実際に起こりうるだろうという予感もあり、もしかしたらすでに起こっているかもしれないと思うと、なおさらぞっとする。それの是非はここで語ることではないと思うが、独特の静かな語り口でそんなことを書いてしまったイシグロは、すごいなあ!

2006年07月31日(月)
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 ルーンロード2 狼の絆(下)/デイヴィッド・ファーランド

『ルーンロード2 狼の絆(下)』/デイヴィッド・ファーランド
単行本: 451ページ
出版社: 富士見書房 (2006/05) ASIN: 4829175877

内容(「BOOK」データベースより)
「百人の人間から“嗅覚”の賦与を受けるのと、一匹の犬から受けるのとではどちらがよいでしょうか」。グロヴァーマン公爵はグボーンに仔犬を贈呈し、兵士やグボーン自身に犬から賦与を受けるよう進言した。しかし、それは忌み嫌われる“狼卿”になるということだった。激しい拒否を示すイオーメだが、我が子を守るために仔犬を受け取る。ミリマもまた、闘いのために犬からの賦与を受けることを決断するのだった―。グボーンは“地底の怪物”から人類を守るため、父の敵である大王アーテンとも手を組もうと試みる。その大王アーテンは“碧の塔”の賦与者を皆殺しにし、グボーンは賦与を失ってしまう。そしていま、さらにグボーンを誘い出すかのように軍をカリスに向けていた。さまざまな思惑をもった人々がカリスに集結する。そしてその地では“地底の怪物”たちの恐ろしい計画が進んでいた。グボーンと大王の前にあるのは、和平かそれとも全面戦争か―。



あっという間に読み終えられるだろうと思っていた「ルーンロード」が、やっと終わった。ファンタジーの上下巻で10日もかかるとは!こんなにかかるとは全く思いもよらなかったけれど、それだけ本に集中していないということだろう。

それに、この本はファンタジー特有の大判の単行本なので(ハリポタくらい?)、寝ながら読むのにも重たくて非常に読みにくい。どうしてファンタジーの単行本は大判にするんだろう?ほんとに、なんでですか、出版社さん?

ところで、この『ルーンロード2 狼の絆』はシリーズ2作目だが、不覚にも涙してしまうような部分もあって、予想外の展開だった。1作目はどちらかといえば馬鹿にしていたのに、2作目になったら、まるで作家が変わったみたいに面白くなったのが不思議。

1作目ではひよっこだった主人公のグボーンが、大地の王になった途端に、いかにも王らしくなったのも不思議だが、たぶんこの2作目は、邪悪な大王アーテン(絶世の美男子だが)が出てくるシーンが少なかったのが、面白くなった理由かもしれないなと思う。グボーンの周囲の騎士たちの描写なども多く、そんなことから、2作目はなんとなく「ドラゴンランス」っぽいのだ。

しかし10日もかけて読んだのに、これといった結末には至らず、当然続くわけだよね・・・という物足りなさが残る。最後に大地の王であるグボーンが大王アーテンを殺そうと思えば殺せたのに、わざわざ生かしておくあたり、3作目は大王大暴れか!という感じ。

この話の場合、力と力の戦いというよりも、頭脳戦、心理戦の趣があって、大地の王と大王アーテンのやり取りが、なかなか興味深い。そしてどんな話でも、涙するのは「自己犠牲」という精神だ。日本人は、結構これに弱いかも。ただし、「自己犠牲」の精神は美しいが、「自爆テロ」は無意味だ。

2006年07月28日(金)
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 ルーンロード2 狼の絆(上)/デイヴィッド・ファーランド

『ルーンロード2 狼の絆(上)』/デイヴィッド・ファーランド
単行本: 459ページ
出版社: 富士見書房 (2005/10/29) ASIN: 4829175869

内容(「BOOK」データベースより)
「目覚めよ!!」人類に迫る“闇の至高神”の脅威!!“闇の至高神”から人類を守るため“大地の王”となったグボーン。運命のごとく、さまざまな人間がグボーンのもとに集まりはじめる。一方アーテン大王軍は、その進路をミスタリアに向けていた。個性的なキャラクターたちが織りなすドラマティック・ファンタジー。


2006年07月21日(金)
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 A Stranger in the Mirror/Sidney Sheldon

『A Stranger in the Mirror』/Sidney Sheldon
マスマーケット: 320ページ
出版社: Warner Books Inc; Reissue版 (1993/06)
ASIN: 0446356573

内容(「BOOK」データベースより)
世界中から美女美男を吸い寄せ、彼らの人生をメチャメチャにしてしまう華麗な魔界、ハリウッド。そこに君臨するスーパー・スターは、スーパー下衆男だった。過去を捨て、名前を変えて、ハリウッドに出るジョセフィンを待っていたものは?孤独な中でついに出会ったひと組の男女の運命を、天上の星たちは“吉”と定めるか“凶”と書くか?殺人は事故になるか?宿命の男女を乗せて、豪華客船がいま出帆する。

2006年07月18日(火)
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 New Orleans Nights: Pure Chance / Insatiable/Julie Elizabeth Leto

『New Orleans Nights: Pure Chance / Insatiable』/Julie Elizabeth Leto (著)
マスマーケット: 454 p ; 出版社: Harlequin Books (Mm) ; ISBN: 0373837062 ; 2 Bks in 1 版 (2006/05)


2作合本。1冊で2冊分楽しめる!・・・っていいような、悪いような。1作目が面白くなかったら、2作目も期待はできないってことだし。(^^;

で案の定、あんまり面白くない。確かに知ってる場所や店などが出てきて、なるほどとは思うものの、だから何?という感じでしかない。というか、この程度なら、一度ニューオーリンズに観光に行けば、誰にでも書けるくらいの知識でしかない。新たな発見も何もないって感じ。そうだったのか!と驚くこともなさそう。

この前の本もそうだったが、ニューオーリンズの「街角からジャズが流れてくる」といったイメージは大嘘だ。はっきり言って、もっとも観光客の多いバーボン・ストリートでは、ロックががんがん。朝はザイデコがんがんだ。ジャズはそういう店の前までわざわざ行かなければ聞こえない。

ましてや、静かなジャズなどは、店を閉め切ってやっているから全く聞こえない。観光客のいないところでは、儲からないから音楽などやっていないし。人が集まる広場とかでは、ストリート・ミュージシャンがサックスなど吹いているけれど、そういうのがとりあえず「街角からジャズが流れてくる」といったイメージになるんだろうか。

でも、ニューオーリンズはジャズもロックもほとんどの音楽の発祥地だから、べつにロックががんがん鳴っていても、おかしくはないのだ。しかし小説的には、ジャズの調べが流れているほうがイメージ的にはいいんだろう。でも、それこそフィクション。大嘘なのだ。

2006年07月11日(火)
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 Down in New Orleans/Heather Graham Pozzessere

『Down in New Orleans』/Heather Graham Pozzessere (著)
ペーパーバック: 出版社: Kensington Pub Corp (Mm) ; ISBN: 0821752820 ; (1996/04)


個人的好みではあるけれど、南部本は確率的に面白いものが多い・・・とはいえ、やはりハズレはあるもので、今日読み終えた南部本、それも期待のニューオーリンズものはハズレだった。内容は、ロマンチック・サスペンス?

かなり昔に一度読んだのだが、再度読んでもストーリーに全く覚えがない。唯一記憶が戻ったのは、私の好きな石鹸「Coast」が出てきた部分。「Coast」に「Eye Opener」というニックネームがあるというのを、この本で知ったのだったっけと思い出したのみ。そんな調子だから、昔読んだときも面白くなかったのだろう。面白かったなら、それなりに覚えているはず。

作者の Heather Graham Pozzessere は、現在は Heather Graham になっていると思うのだが、別人かしらん?たぶん同じ人だと思うけれど、調べたからといって、特にどうするわけでもないので、まあいいか。

今までに読んだニューオーリンズものとしては、ジュリー・スミスのスキップ・ラングドンシリーズが一番面白いかなあ?と思う。なぜなら、まるでガイドブックのように、観光スポットや有名な店の名が出てくるからだ。てことは、別に文学的でなくても、あるいは内容がどうでも、そういう部分が多ければ多いほど楽しいということになるかな。

しかし、これは在りし日のニューオーリンズの姿を忠実に描いているわけだから、今となってはこれは重要なことではないかと思う。今日読み終えた本などは、フレンチクオーターにジャズが流れている程度の描写しかなくて全然物足りないし、バイユーも出てきたが、それはまさに、濡れ場に必要だったからにすぎない。

だいたいが、別にニューオーリンズが舞台でなくてもいいだろうと思うような話が多いのだが、ニューオーリンズを舞台にすることで、そのイメージを付加する効果を狙っているのだろう。

2006年07月07日(金)
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 Never Let Me Go/Kazuo Ishiguro

『Never Let Me Go』/Kazuo Ishiguro (著)
マスマーケット: 出版社: Vintage ; ISBN: 0307276473 ; (2006/01/01)

Book Description
『日の名残り』『私たちが孤児だったころ』で高い評価を得た作家が送る、感動的な小説。心に残る友情と愛の物語の中で、世界と時間を巧みに再創造してみせる。

現在31歳のキャシーは、イギリスの美しい田園地方ヘールシャムの私立学校で、子ども時代を過ごした。そこでは子どもたちは外界から保護され、自分たちは特別な子どもで、自分たちの幸せは自身だけでなく、やがて一員となる社会にも、非常に重要だと教えられていた。キャシーはこの牧歌的な過去とはずいぶん昔に決別したが、ヘールシャム時代の友人二人と再会して、記憶に身をまかせることにする。

ルースとの交友が再燃し、思春期にトミーに熱を上げた思いが恋へと深まりはじめる中、キャシーはヘールシャムでの年月を思い返す。外界から隔絶された穏やかさと心地よさの中、少年少女がともに成長する幸せな場面を、彼女は描写する。だが、描写はそんな場面だけではない。ヘールシャルムの少年少女育成のうわべに隠れた、暗い秘密を示唆する不調和や誤解。過去を振り返ってはじめて、3人は自分たちの子ども時代と現在の生き方の真実が見え、それに対峙せざるを得なくなる。

『Never Let Me Go』は単純に見える物語だが、そこに徐々にあらわにされていくのは、驚くべき深さで共鳴する感情だ。カズオ・イシグロの最高作にあげられるだろう。

2006年07月05日(水)
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