「思考」...rainman

 

 

大人のドア - 2007年04月29日(日)

 


暗い寒い夕暮れの団地の廊下で

蛍光灯の下でしゃがみ込んで

セーターの上でジャンパーの下に

小さい猫を抱いて


すぐ後ろのドアを開けたら

ドアを開けたらサヨナラだ


それから二十年


雨が降る自動販売機の置いてある

ボロいアパートの玄関で

ダンボール箱の中でタオルに包まれて

震えていたそいつを

両手で包み込んだ


誰か誰かと探していた

誰が誰だったのかをわかっていながら


無理で押してドアを開けてやった

とっくに死んだはずのそいつを

抱きしめてやった

一緒に外にいた子どもも抱きしめてやった





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野良犬にあるもの - 2007年04月28日(土)


 

白い痩せた犬が

腹を空かしているように見えたのは

自然なことだった


友達と冷蔵庫からミルクを取ってきて

皿に入れて

鼻先に突き出してやった


アバラの浮いた汚れたそいつは

音を立てて舐めた

もう一回入れてやった

うんともすんとも言わなかった


自転車置き場の日陰で

陰の外は生きているのか死んでいるのか

やたら陽気でやたら静かで


犬はあんまり大人しくて

引き止めていたかったのに

しばらくしたら行ってしまった

うんともすんとも言わずに


野良犬にあるのは

食べられるものと食べられないもの

野良犬は他のことを考えてはいない

ように見えた

野良犬の他のことを考えることができない

ように思えた


夜どこで寝たのか

朝どこへ行くのか

昼誰と会うのか

夕方には

決まってさよならするのか


引き止めたかった

知らないことがそのまま行ってしまいそうで

引き止められても

知らないことばかりがやって来るに違いなくても

一緒に居たかった

一緒には居られなかった

そうすることが

あまりに一方的なことだと

きっと直観で感じていたに違いない

違いない



野良犬にあるもの

食べられるものと食べられないもの

ああだったらこうだったらと

考え続けるに違いない

それは我々にあるもの






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そんなんいらんし - 2007年04月27日(金)

 


そんなんいらんし

見たらええやん

そんなんいらんし

触ったらええやん

そんなんいらんし

食べてみいな

そんなんいらんし

喋ってみいな

そんなんいらんし

楽にしてええんちゃうか


生きるって

なんかもっと野生的やと思う

生きるって

もっと洗練されててもええんとちゃうか

野生って優しい気がする

洗練って厳しい気がする

誰も傷つけんか

誰もを傷つけるか


たぶん気のせいで

大事に思ってることって多いと思う

たぶん気のせいで

なくてもいいもん探してたりしてるんちゃうか

たぶん気のせいで

なくても困らへんのに


苦労するのは不幸になることと違うと思ってる

意外と楽でわかり易いことやと思うで


そんなんいらんし

捨てたらええやん

そんなんいらんし

自分で作ってみいや

そんなんいらんし

自分で考えてみいな

ほんまに欲しいもんは

結構少ないと思うで





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前世 - 2007年04月26日(木)




俺は死刑囚だった

首をはねられ殺された

罪と罰と後悔と自責の念に


愛することを知らずに

愛されながらも裏切り

傷つけ殺した

それを何度も繰り返した


そこかしこで逃げまわり

辿りついたところで

同じことを繰り返した

そうして終には捕まり

死刑台へと引きずり上げられた


そんな気がしてならない

そんな気がしてならないのは

今もそれを繰り返しているから


醜い自分に吐き気をもよおす

一体何と比較しているのか

死刑の前の日

俺は書いた

「次に生まれ変わることがあるならば」

その言葉が今生の俺を責めたてる

「愛するとはどういったことかを知るために」

その言葉が今生の俺を生かす

「生きよう」

それが苦しみとなる


罪と罰と後悔と自責の念

愛そうとすることにさえ

それを感じるのは何故

愛することとは

それを越えて行くことなのか


今日の終

俺は死刑台に上がる

明日こそはと何度も繰り返しながら




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