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夢の図書館新館

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-- 2006年07月25日(火) --

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『かぎのない箱』

「フィンランドのたのしいお話」という副題のとおり、 フィンランドの昔話を集めている。 著者のジェイムズ・クロイド・ボウマン(1880-1961)はアメリカの昔話研究家。

共著のマージョリー・ウィリアムズ・ビアンコ(1881-1944)は、イギリス生まれのアメリカ人作家。 著書に『ビロードうさぎ』の絵本シリーズなどがある。 ビアンコとウィリアムズが同一人物というのは調べてやっとわかった。

原書には、40編ほどの物語が収められていて、 そのなかから瀬田貞二がセレクトした7編が訳されている。 もともとフィンランドのおばあさんから聞き書きしたものだそうで、 作家が加わることによって、一般の民話よりも登場人物に個性が与えられ、 「愛」の妙味に魅せられるようなトーンをもった作品となっているように思う。 訳者の文体がそれらをさらに魅力的にしていることは言うまでもなく。

フィンランドは正式にはスオミ共和国。 スカンジナビア半島の内側、バルト海の奥にある、叙事詩『カレワラ』の国だ。 もっと親しみやすいのは、『ムーミン』の国でもあるということ。 歴史的にはスウェーデンと強く結びついている。

「ユルマと海の神」は、無情な海の神に3人の娘を奪われる百姓ユルマの 家族の物語。知恵のある末の娘は、海の神をだまし、海の底から姉たちを連れ帰る。 青ヒゲ譚やフォックス氏の話を連想させる怖さと、人間の知恵が海の神に打ち勝つ爽快さ。 「見てはいけない」という誘惑に逆らえなくても、知恵があれば乗り切ることができるのだと思えば、ゆく道の希望になる。

「かじやセッポのよめもらい」には、前半から中盤にかけての冒険譚とは一変して、男女の心理を問いかけるかのような展開が起こる。 セッポとカトリーナは冒険が終わってすぐに結婚するのではなく、しばらくは別離の状態におかれるのが興味深い。どの段階で入った要素なのかわからないが、全体を損なわずに物語としての完成度を高めている。(マーズ)


『かぎのない箱』著者:ボウマン&ビアンコ / 訳:瀬田貞二 / 出版社:岩波書店1963

2003年07月25日(金) 『Harry Potter and the Order of the Phoenix』
2002年07月25日(木) 『オペラ座の怪人』(その2)
2001年07月25日(水) 『死の接吻』

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