| 2012年11月22日(木) |
「日の浦姫物語」 @シアターコクーン |
「井上ひさし誕生77 フェスティバル2012」の第7弾作品として上演される「日の浦姫物語」をやっと観劇。 座席は、1F B列 10番台後半の上手ブロック端近くのS席。うん、けっこうイイ席♪ 上演時間は、18:30〜21:35(休憩15分)なので、2時間50分くらいかな。
【作】 井上ひさし 【演出】 蜷川幸雄
【配役】 大竹しのぶ・・・ 日の浦姫 藤原竜也 ・・・ 稲若/魚名(太郎)
辻 萬長 ・・・ 藤原成親 たかお鷹 ・・・ 藤原宗親 立石涼子 ・・・ 三味線弾きの女/侍女月小夜/帝の御姉君 木場勝己 ・・・ 説教聖/僧/和尚/白河帝
【あらすじ】 藤原道長が「この世をば我が世とぞ思ふ望月の 欠けたることもなしと思へば」と詠んだ7年後の平安の時代。 薄汚い説教聖と赤子をおぶった三味線女が「日の浦姫物語」を語りだす。
奥州 米田庄。母の死と引き換えに生まれた稲若と日の浦姫は、仲のいい美しい双子の兄妹。 2人は15歳になり、父が亡くなった日にふとしたはずみで禁忌を犯す。 たった1度の過ちで日の浦姫は身ごもり、打ち明けられた叔父の宗親は日の浦姫を引き取り、都へ遣られた稲若は旅の途中の事故で亡くなってしまう。 日の浦姫は美しい男の子を生んだが、最後の血筋となった姫の秘密の露見を恐れた宗親の進言に従い、子供に手紙と鏡を持たせて運命を神と仏に預けて、泣く泣く海へ流す。
18年後、孤児の太郎は両親を探す旅に出る。 米田庄に立ち寄った太郎は、棟梁としてこの地を治める日の浦姫が近隣の豪族当主に言い寄られ、家臣を当主との弓の勝負で次々と失い、危機に陥ってることを知る。 日の浦姫の窮地を救った太郎は、初めて目にした日の浦姫に恋をする。 罪の意識と稲若への想いから独身を貫いてきた日の浦姫だったが、次第に惹かれていく気持ちを抑えきれず、2人は結ばれ子供を授かる。 幸福な日々を過ごすが、太郎が大事に隠していた手紙と鏡を見つけた日の浦姫は、2人が親子だったことを知ってしまう。 混乱しながら、自分の子だったことを見抜けなかったことを呪ってら己の目を突く日の浦姫。 太郎も母と見分けられずに恋した両目を突き、2人は別れ別れに。
18年後、魚の形をした岩で18年を過ごした魚名(太郎)は、帝の夢のお告げの通り院主となる。 盲目の僧 魚名に心からの懺悔をすると奇跡が起こり病が治るという評判を聞き、病人の介護をして生きてきた日の浦姫が訪れる。 己の盲目を治してもらおうとしない老婆に懺悔を勧める魚名。 いつしか2人は相手が誰なのを知る。 心から語り合ったとき、奇跡が起こって2人の目が見えるようになる。 18年前に身ごもった子は美しい娘となり他家へ嫁ぐことになり因果が切れ、2人はやっと親子として互いを想い合う仲になれたのであった。
語り終えた説教聖は、三味線女が妹でおぶった子供は罪の子であると告白する。 日の浦姫の話に心を動かされたらと同様の赦しと喜捨をねだるが・・・
これだけ近親相姦につぐ近親相姦な話なんだけど、どろどろしないで軽妙で笑えてユーモア満載作品になってるのは井上ひさしならではだな・・・と感心しちゃった。 すっかり井上ひさし作品だってことを忘れていた私だったんで、思い出すまでアレ〜?て思ってたよw 初演で日の浦姫を演じた杉村春子の名作「女の一生」の有名な「誰が選んだのでもない 自分で選んで歩いた道ですもの」というセリフがあったり。さすがあてがきの井上先生ならでは!って感じだったなと。 18年間、魚が運んでくる海藻だけを食べて1人で過ごした魚名が人としゃべることを忘れ、会話が魚の名前だけになったりするシーンはラップ調になっててw 叔父の宗親が、兄弟で愛し合って子をもうけたことで義理の父になるとか間柄を延々と語るシーンが面白い!! それは、親子で愛し合った日の浦姫がややこしい間柄になった太郎との子供と3人の関係を理路整然と語り「なぜこんなにすらすらと説明できるのかというと2度目だからです」って言っちゃうシーンで相乗効果を生んで、面白さで爆発しそうになっちゃう〜!
蜷川演出。 今回は美しい美術と歌舞伎の様式美が目に嬉しかった。 平安時代の十二単、狩衣、元結掛け垂髪などのいでたちも美しかったし♪ 説教聖の話から物語が始まったシーンの切って落とされた薄白幕を黒子が空中で受け止め、梅の木の下の残り雪に姿を変えたのが本当に綺麗。 流される子供を乗せた小舟が漕ぎ出す川から海の様が美しい。 物語が紡がれるのは一間なんだけど、奥に数本の柱が立ってるだけで広い邸宅を思わせる。 いつも凄絶さを伝える表現としか見ていなかった流血を赤い糸演出は、2人が目を突くシーンで使用されて。 日の浦姫が両目に当たる部分に赤糸を括り付けたヘアバンドのようなゴムを付けて語るシーンは凄みがあるのに、同じように後ろを向いて赤糸を両目から垂らそうとヘアバンドを付ける太郎の姿に笑ってしまうのは井上ひさし戯曲だからなんだよね!!そして、自分の演出をギャグとして扱う蜷川って凄いなって思っちゃったよ!!だってもう、両目から赤糸垂らしてる2人の姿に大爆笑なんだもんよ〜〜!!ww そんなに笑っちゃうシーンじゃないはずなのに〜!!兄との子と交わった罪に驚き嘆くシーンなのに〜!!でも笑っちゃう〜〜!! ライオンキング(@劇団四季)で、嘆くメスライオンたちの目に白く長細い薄紙が垂れてたのを爆笑を堪えながら見ていたのを思い出しちゃったじゃんか!! そしてラストシーン。語り終えた説教聖を責める人々が現代人の姿なのはどうなのかな〜って思ってしまった。 すごく違和感があったんで、違う演出が見たかったかな・・・。
さて、キャスト。 まずは久々の大竹しのぶ様〜〜〜!! さすがです。やっぱりさすがです。 15歳のあどけない少女が、さすがにちょっとだけやりすぎ感がなきにしもだったけど、とっても可愛い!! だからこそ、兄を亡くし、母となり、短期間で少女から大人になって憂いを秘めた姿が哀しく美しかった! 独身のまま凛々しい30代の領主として生きてきたのに、恋に悶える女に変わるのも見事! そして、すべての煩悩から解き放たれたように子供の幸せだけを願う老女の姿に癒しと赦しを感じました。 「役が憑依する」っていうのは彼女のような素晴らしい役者にしか私は言えないかなぁと思っちゃったり。あんまり軽々しく言えない言葉だなぁと。
相手役を務めた藤原竜也は、う〜ん・・悪くはないけどそんなに良くもなく(^^;) 無邪気なだけの稲若は可愛いんだけどねぇ。罪の告白をするシーンはいつもの調子だしねぇ。 貴族の若君だからルックスはいいんだけど、なにせ出てるシーンが短いからねぇ。 ぼろ布をまとった太郎が旅に出て若武者姿になったときは、さすがにほうっとため息が出たり。 あと、殉教のキリストのように髭ボーボーでぼろ布をまとった魚岩での魚名の連れて行かれる時のふとももまであらわな足がキレイだった!!あれは聖者だ!と呼ばれても納得の美しさ♪ しのぶや蜷川が「雑」って言ってた竜也のまさぐり方は、激情を感じることは出来てもたしかに色っぽくなかったかも☆ 色気や背徳感などが必要な作品ではないかもしれないけど、ちょっと残念かな。 僧侶姿になっちゃうとミーハーでルックス重視の私には見どころが・・・になっちゃうんだけど、奇跡が起きて盲目の目が開くシーンは素晴らしかった!! ゆっくり開いた目が白目。視線の定まらない両目は黒目がカメレオンのようにとんでもない方を向いているんだけど、だんだんに焦点が合っていって。やっと見えた日の浦姫の顔をじっと見つめる視線がとっても温かい。 こういう芝居させると天下一品だよ!ここはさすがでした!!
三味線まで弾いちゃう立石涼子、日の浦姫を支え続けるたかお鷹も素晴らしかったんだけど。
でもやっぱ、説教聖を演じた木場勝己は凄かった。 え〜っと、この作品の主演は木場勝己だよね?え!違う??そんなことないんじゃん?? ってなことを本気で思う素晴らしさですよ! 表の主演は大竹しのぶだけど、影の主演は木場勝己ですと言ったっておかしかないだろっ! 語り口の見事さ、物語の端にずっと佇んでいる存在感の出し方の上手さ、歌舞伎の附け打ちや効果音担当までこなす芸達者ぶりには脱帽ですよ!! 本当に素晴らしかった!!ブラボー!!
カーテンコールで出てきた竜也はハゲヅラを取っただけの僧侶姿。 ヅラをとっただけで、寝かせてた前髪がまっすぐに突っ立ってるのが妙に可愛い。 平日ソワレだからなのか、カーテンコールは3回くらいで客席もけっこうあっさりしてる感じ。 う〜ん、こんなもんなのかねぇ?(^^;)
オイディプス悲劇を下敷きにしてるであろう近親相姦がメインの話だから、取り扱ってるテーマは「タブー」 語られた日の浦姫物語は赦しと癒しがあってめでたしめでたしとなるけれども、語り部の2人に向けられたのは現実的な非難であって、それは投げつけられる石つぶてとして表現される。 不偏の愛として赦されるのは物語だけで、現実は甘くないって皮肉が込められているのかなと。 でも2人はそんなことにへこたれずに喜捨をねだる。ここも木場の見せ場の一つ。 そんな姿に人の業や強さやしぶとさを表現したかっただろう作者の気持ちを感じちゃった。
次の観劇予定は千秋楽なんだけど、座席があんまり良くないんだよな〜。 ムリして都合をつけた今日の席で見た舞台を目に焼き付けたまま終わりにしてもいいような気持ちともう1回見たい気持ちが拮抗してるんだよね(^^;) 見終わった直後に「絶対もう1回見るんだもん!!!」って気にならないのは、タブーを扱った作品に退廃美や苦悩や狂おしい想いや緊張感を求めてしまう己の業が満たされないからなんだろうね。 だって、日の浦姫の娘が今度は魚名と!?って一瞬思っちゃった私だったもんね(苦笑) う〜ん、どうしようかな〜
|