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月はガラスの向こうの僕はまた - 2004年06月28日(月)
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また月だ。
他人の身体に少しでも触れないように自分の身体を歪な風に曲げて吊革にしが みつく僕はドアに嵌め込まれたガラスの向こう側に変な齢の月を見つけてつぶ やく。もちろん声には出さないで。
僕が他人の身体に少しでも触れないように自分の身体を歪な風に曲げて吊革に しがみつくために乗っているこの特急は100キロメートル毎時だ。西を西を西 を目指しそして、
まだ月だ。
と呟く僕が乗っている相応の質量を持った鉄の塊がさも得意げに轟音を奏でな がら鉄の上を滑りいくら往っても同一の速度で併走してくるあの変な齢の月は 100キロメートル毎時だ。もちろんこれは特別早い訳ではない。
目の前で座ってスポーツ新聞を読むいかにも痩過ぎの女性と視線を落としたら 目が合ってしまったので目を逸らしたら今度目が合ったのは五反田の個室付特 殊浴場の御嬢様。これもまた気不味くって、
また月だ。
と呟く僕は併走してくる月の速力が大きい時ほどそしてその齢が狂しい時ほど 人類の深い浅はかさと築き上げてきた物の強固な脆さを感じて戦慄してしまう のである。と言ってみたところでこの特急は幾つもの駅を遊び人のように弄び そしてすっ飛ばしていくのであって五反田の御嬢様は依然上半身裸のままこち らに微笑んでいるようだが僕はとっくにガラスの向こうの、
月は100キロメートル毎時。
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