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世界が終わる日 - 2002年07月20日(土)
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もう3日になる。
太陽があの位置から動かなくなって、もう3日だ。
TVもラジオも新聞も、何事もない振りをしている。 陽が沈まなくても、いつも通りの番組を流し、いつも通りの記事を載せている。
陽が沈まないのに、だ。
3日前から、僕は一歩も外に出ていない。 外に出てはいけない気がするのだ。 それが何故かは分からない。 でも、確実なのだ。外に出てはいけない。
エアコンが、変な音を立てている。 思えばエアコンはこの3日間、動きっぱなしなのだった。 外に出てはいけない。そして、窓を開けてもいけない。 そんな気がしたまま、3日間。 エアコンはこの部屋を常温に保ち続けている。
恋人にも、電話してみた。 やっぱり彼女のところでも、太陽は沈んでいない。 考えてみればあたりまえだが、それを聞いて、少しほっとした。 が、それが分かったところで何になるというんだ。 「絶対に外に出てはいけないよ」と伝えて、受話器を置いた。
そういえば、電車が動いていない。 この窓からは、10分に一本は都心に向かって走る電車が見えた。 ところが、あの3日前から、よく考えてみれば電車は全く走っていない。 いつものニュースなら、電車が止まればそれなりに騒ぐはずだ。 TVをつけてみたが、ミニモニ。があっけらかんとはしゃいでいる。 嫌気がさして2秒で電源を切った。
ネットでも、いろいろ調べてみた。 でも、何も出てきやしない。 TVや新聞と、まるで一緒だった。 太陽が沈まなくなったというのは、どういうことなのか。 はっきりしている。地球が自転しなくなったということだ。 ・・・んなこたぁない。 森田和義の真似で打ち消してみる。 恋人ならこんなものまねでも笑ってくれるだろうけど、 今はそんなときじゃないと思い直す。
突然、 町中にサイレンが鳴り響いた。 今まで聞いたサイレンの中で、もっとも大きく、もっとも激しく、もっとも悲しげな音で。 サイレンは、数十秒鳴り続けて、そして止んだ。
静寂。
結局そのサイレンは鳴っただけだった。 それ以上の注意を喚起するでもなく、重要な情報を知らせるでもなく。
太陽が沈まないことが、こんなにも辛いことだとは、思わなかった。 正直そんなことを考えたこともなかったという方が正確だろう。 いや、辛いのは、太陽が沈まないからではないような気がした。 太陽が沈まない理由が分からないからなのではなかろうか。 人はいつでも理由を欲しがる。 それが容易に与えられなければ、余計に欲しがるものだ。
そして、たいていの場合、それを知ることで不幸になるのだ。
その繰り返しなのだ。
ふと時計に目をやると、もう午前零時を回っていた。
身体が灼けるように熱い。
エアコンが止まっている。 パソコンも、TVも、コンポも、スイッチを押しても何の反応もしなかった。 電気が止まったのだろう。
身体が灼けるように熱い。
けれど、外に出てはいけない。窓を開けてはいけない。
身体が灼けるように熱い。
「悪い夢だ」とつぶやいてみた。
ひどく悪い夢だ。
僕は部屋に横たわり、目を閉じる。
身体が灼けるように熱い。
もう一度「悪い夢だ」と口にしてみた。 その声は、動かない太陽に飲み込まれていく 太陽は、より大きく、輝きを増していくように見える。
悪い夢だ。
眠ろう。
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