天国と地獄
お互い裁判が続いて、何週間もロクに会えない時には、確かに「体が二つあればいいのに」なんて御剣と話していた。 三人いれば、仕事をする僕と、御剣といちゃいちゃする僕と、家でぼーっと寝ている僕に分けられるのに、と言ったら御剣に真顔で「寝ているくらいならもう一人も私の相手をしたまえ」と言われた。 でも、だからって、これはないんじゃないかな。 「どうした成歩堂。顔がひきつっているぞ」 「どうした成歩堂。うム。息が苦しそうだ。襟元を緩めてやろう」 「どうした成歩堂。ああすまん。ベルトも苦しいのだな」 三つの声が重なる。 「いや、だから、その」 僕はぱくぱくと口を開けて言葉を紡ごうとするも、目の前の三人の御剣の視線を一手に受け、まるで蛇に睨まれた蛙のようだ。 「なんで御剣が三人なの?」 なんで……僕が三人じゃないんだ! だいたい、いつもだって御剣のほうが圧倒的に体力があるせいで、会えば息絶え絶えにされるのは僕のほうだってのに。 三人の御剣。三倍の御剣! 頭の中でぐるぐると考えているうちに、三人の御剣の手が、僕のアヤシイところをもぞもぞと這い始める。 「ひゃぁっ!」 ひっくり返った悲鳴はもちろん僕のものだ。 「み、みつるぎ」 「なんだ?」 また御剣の三重奏。 「あの、み、耳っ」 「ああ、ここが感じるのか?」 ふっと僕の耳に息を吹きかけた御剣が、そう言って今度は耳朶を軽く食んだ。 「……っ」 ちりりと走った胸の痛みは、胸に顔を寄せている御剣がワイシャツの上から小さな尖りを爪先で引っ掻いたからだ。 じんじんとした痛みのあとに生まれた疼きに、僕は身を震わせた。 「む……」 震えた唇につい、と御剣の指が当てられ、その輪郭をなぜられる。 「うム。こちらもおいしそうだ」 情欲に目を光らせた御剣の唇が近づいて、僕はその色気あふれる男っぽい顔にのぼせて目を閉じた。 「わ!」 と、御剣の唇を待っていた僕の顎をぐいと捻られて、耳を嬲っていた御剣に頬を舐められる。 「キミはあとだ」 キスを阻止された御剣が、むっとしてもう一人の御剣を睨みつける。 御剣VS御剣の攻防は、おそろしく冷ややかで怖い。 「あ……ん!」 張りつめた緊張を解いたのは、僕の情けない嬌声。 熱心に胸を弄っていた御剣が、シャツをはだけて直に触れてきたからだ。 「私が先だ」 「いや私が」 「では間を取ってここは私が」 人の体をあちこち撫で回しながら、三人の御剣が順番を言い争っている。僕の息子さんはもうすでにかなり何というかアブナイことになっているのだけど、とてもその窮状を訴えられる雰囲気でもなく、されるがままの生殺し。 「あん」とか「やん」とか、あるまじき嬌声が僕の口から漏れていたけれども、もうそんなこともどうでもいい。 御剣三人がかりで嬲られるのが、天国なのか地獄なのか。それが問題だと思いつつ、僕は六本の手によって昇天した。 ◆ ◆ ◆ 「……という夢を見たんだよ」 うなされる僕を揺り起こしてくれた御剣に、僕は夢の中身を話した。 「ほんとにさ、御剣が三人だなんて、僕は腎きょで死んじゃうよ」 「うム。夢は己の潜在意識や願望を反映すると言うからな」 そうそう。僕はまだ死にたくないし、御剣とももっとこうスローな感じでのんびり愛し合うのがいいと思うんだ。 「なるほど。キミの願いはわかった」 さすが御剣だ。僕の気持ちをちゃんと理解してくれ……。 「二回では足りなかったのだな。済まない。成歩堂の体に負担かと思って控えたのだが、今後は三回にしよう」 「へ?」 「では早速、昨夜の不足分を補うことにしようではないか」 言いながら、意気揚々と僕のスウェットを脱がし始めた御剣に逆らうことなど、もちろんできなかった。 おしまい。
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