Noir/ Rouge noir
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2007年02月20日(火) 蠱惑という名の物語を読む/荒井慶騎

英国人リチャード・コールダーの小説「The Allure」を読み返している。
1991年に出版されたこの作品集は現在絶版らしく、
アマゾンでは定価の四倍近くのプレミア価格で販売されている。
「The Allure」はフェティッシュなSF小説だが、
童話的なテイストも色濃く、
自動人形などがでて来る辺りが俺好みである。

コールダーは現役で小説を書き続けているのだろうか。
俺にはもう「風景」が見えないのだ。
美しいと感じられる風景が見えない。
幻視者のみが美しい小説を描くことができる。
しかし、幻視者が美しい小説を描けるとは限らない。
姉貴は幻視者ではあるが小説を書くことが困難であるようだ。
彼女には美しい風景が見え、それを人に伝えたいという欲望があるのに、
それを文章に翻訳するという作業ができない。
仕方なく姉貴は、現実に起こった事柄や、
現実に自分が考えたこと、思ったことなどを文章に翻訳することで
「文章を書く」という作業欲を満たしているようだ。
しかし、そんな姉貴が今日突然ブログを閉鎖してしまった。

厄年を去年終えた筈の姉貴は、去年末からずっとついていなかった。
だから精神的に非常に不安定になっており、
8年半に及ぶ交際をしている彼氏にも疑いの目を向ける程おかしくなっている。
誕生日に親に買って貰ったブランド物の手帖を紛失したそうだが、
それはきっと「ついていない」のではなく、精神的な不安定から招いた不注意だろう。

幻視することができる姉に小説の書き方を教えて、
俺は筆を折って沈黙したいところだが、まだまだそうもいかなさそうだ。

おたくの人が書いたという或る本を姉貴から拝借した。
その本は、人間と恋愛するよりもアニメキャラに萌えて生きて行く方が
平和な生き方だと書いてあった。俺は深い感銘を受け、俺もそうして行こうと決めた。
俺が愛する女性は今後ただひとりだけ。その名は小松崎リエ。
俺はリエの姿だけを胸に抱いて生きて行く。

「私は孤独だった。慰めはトクシーヌだけ。
 彼女はこのハートに熱愛という名の無期刑を宣告したのだ。」

リチャード・コールダー「トクシーヌ」より(浅倉久志 訳)


荒井慶騎と世都セレナ