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2006年02月13日(月) 【読書】「錬金術」C・ジルクリスト/世都セレナ

私は「錬金術」というのを、イカガワシイ金儲けみたいな
通俗的なこととは考えていない。
ましてやビジネス本や株の本のタイトルに持って来るには
あまりにも陳腐だし、本来の「錬金術」が持つロマンティックな世界を
壊すから、止めてほしい。

私は高校生の頃、澁澤龍彦を愛読する文学少女だった。
だから、「錬金術」というものの存在は知っていたし、
神秘学のことも存在は知っていた。けれど、
それよりも澁澤が紹介する世界で私を捉えたのは
マルキ・ド・サドなどの中世フランスにおける
エロティシズムだった。私はあの世界が大好きで、
ああいう世界に憧れた。特にサドの「悪徳の栄え」のヒロイン
「ジュリエット」は私の理想を具現化する存在で、
私はいつも「ジュリエットみたいになりたい」と夢を見ている。
けれど「錬金術」のロマン的な部分は紹介されていなかったと思うし、
私にとっては「そういう学問があるんだ」程度の存在だった。

そして紫端様から世都ファミリー入りを許されて、
「世都セレナ」という美しい名前を授かったとき、
「錬金術を研究して下さい。」と言われてとても驚いた。
そういうのがあるのは知ってるけど、なんかすごく難しそう。
私に調べられるかなあ、と思った。

自分で色々本を調べ、声楽家でもあり錬金術を研究しているという
C・ジルクリストという人の「錬金術」という本と出会う。
澁澤の本を多くを出版している河出から出ていることもあって、
その本を一冊目の「教科書」にすることにした。
それは運命の出会いと言っていい。
私はその本で、猛烈なショックを受け、錬金術に恋した。

「なんてロマンティックな科学」!!
ジルクリストは、著作のかなり最初の方で
錬金術に於けるシンボリズムを紹介したのだ。
実際は、門外漢に秘法が流出することを避けて
暗号で記すという方法をとっているのだけれど、
物質と物質が結びつくことを「王と王妃の結婚」と表すのだ。
そして、総ての工程が適切に進んでいる場合は、
それらはすべて色彩を示す。すなわち、白や赤や黒である。
更に、再生の兆候として「孔雀の尾」という虹色を我々に見せるという。
この辺りに、私は現代科学には全く見られない(と思う)
ロマンスを見いだした。そして、私は「錬金術」に恋をした。

ジルクリストは、翻訳者が良いのか、とても平易で解り易い
文体で「錬金術」を紹介した。
最初から暗号的に難解に具体的なことばかり書かず、
「錬金術」という学問の輪郭線を易しく描いて、
それから錬金術に於いて最も魅力的といえるシンボリズムを紹介したことで
私は錬金術に容易に入って行くことができたのだ。
ま、ジルクリスト氏はしゃべりたがり屋さんというか、
話したいことがたくさんありすぎるようで、
その章に表題として掲げたこと以上の事に話が発展することが多かったので
自分なりにまとめるときに、何度も事前に読んでおいて
省いたり、他の章に移し替えたり、表題を変えたりする必要があった。

その程度の欠点しかないから、初心者が錬金術の魅力に触れるには
なんの支障もないし、そもそも文体が平易で解り易いのが最大の長所。
これなら中学生程度でも錬金術の魅力に触れられるはずだ。
小学校高学年くらいでも理解できると思う。
ジルクリストの「錬金術」という本は、
錬金術に初めて触れる人々に錬金術を紹介する格好の入門書と言える。


荒井慶騎と世都セレナ