日記

2010年08月09日(月) 精霊モノガタリ途中経過その3

当初今回出てくる精霊と男の子を主人公にして書く予定だったんだけど、エピソードが出会いしか思いつかなくって・・・。
 たぶん、これの続きはもう書かない、というか書けないなぁ。設定自体はすごく気に入ってるから、キャラクターを別途考えて別の話を書くかなぁ。

その3をUP。
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 目の前には人とは異なる存在が人の形をして、浮いていた。
「う、うそだろう・・・」
 まるでよくできた人形だった。完璧な形状と素材で作られた人形。ただ、強い意志を感じる目とその存在感は彼女を人形と呼ばせない力を持っていた。
「俺に見えるわけがないんだ。幻覚か?」
「私は存在しているわ。嘘だと思うなら、私に触ってみるといいわ」
 そういって、完璧なその身に光を宿らせた。いっそう彼女の存在が強くなる。そして、やわらかく微笑む。
「でも、私は存在するのみ。力を使うのはあなた」
 光をまとって透き通るような白い手を彼女は差し出した、とても無邪気な笑顔で。
「さぁ、私の手を取って、約束を交わしましょう。私をあなたのものにして」
「え、手を取って、約束を交わす・・・え?」
 混乱した状態から抜け出せずに、言われた言葉をオウム返しに言うだけが精一杯だった。何が何だかよくわからない。
「・・・何度言わせればいいの。大人しく請うているのだから、黙って手を取ればいいのよ」
「え?」
 やわらかく微笑み語りかける口調だったのが、一変不機嫌な命令口調に変わる。
「さぁ、手を取りなさい。そして誓約を交わすのよ」
 有無を言わさぬ口調に、訳も分からないまま思わず差し出された手を握る。二人の間で力が流れた。
「これで、私はあなたのものよ。存分に使ってね、私の誓約者よ」
「せいやくしゃ・・・?」
 えーっと、今何が起きたんだろう・・・。そもそも、せいやくしゃって、何なんだ?
「あなた、何も知らないの?」
 何もわからなかったから、素直にうなずいて答える。
「知らないというか、認識できていない」
 彼女はあきれたといってため息をついた。
「じゃあ、私が一から説明してあげるわ。精霊がいることは知っているわよね」
 それを知らなきゃこの世界では生きていけないだろう。素直にうなずいた。
「精霊の力を使うには契約しなきゃだめだって事も知ってるわよね」
 これにもうなずく。
「人から精霊に行うのが契約。精霊から人に行うのが誓約って知ってるわよね」
 契約は知っているが、誓約なんて聞いたことがない。首を横に振る。
「誓約って何だ?」
「誓約を知らないの?」
「契約や契約者って言葉は知ってる。霊力をもち、精霊と契約した人間が契約者と呼ばれる。精霊の力を行使できる者」
「そうね」
「でも、誓約者なんて聞いたことがない」
「まぁめったに出ないから、人間では知る人も少ないのかもしれないわ。精霊が気に入った人間と契約することを特別に誓約と言うの。で誓約した人間を誓約者と呼ぶのよ」
「へぇー知らなかったよ」
「まるで他人事みたいに聞いてるけど、あなたは私の誓約者になったのよ」
「・・・え?」
「さっき手を取ったでしょ。あれで誓約完了。私はあなたの精霊になった。私の力はあなたのものよ」
「えーっと。俺、霊力ないんだけど」
「そうね。かけらほどしかないわね」
「だとすると、俺、精霊の力なんて行使できないんじゃ」
「問題ないわ。契約では人間側の霊力以上には力を行使できないけど、誓約であれば人間側に霊力なんて必要ないもの。精霊の力を思う存分行使できるのよ」
「へぇーそうなんだ。って、俺、精霊力を行使できるの?」
「だから、そう言ってるじゃない。もう、何て理解力のない頭なの。こんなのが誓約者だなんて、前途多難だわ」
 頭を抱えてため息をつく。
「だったら、何で俺を誓約者に選んだの?」
「そんなの気に入ったからに決まってるでしょ。もー、そのくらいわかりなさいよ」
「えーと、ごめんなさい」
 よくわかっていなかったが、とりあえず素直に頭を下げて謝る。
「いいわ、これから私がじっくり教えてあげるから。ばんばん力を使ってね」
 精霊力って、そんなにばんばん使うものでもないと思うんだけど・・・と思ったが、とりあえず口には出さないでおいた。
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次は過去編。


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