| 2007年01月30日(火) |
電車で居眠りを我慢して書いた小話 |
雪の下
静かだ。
あの耳の中でおんおんと共鳴する盛大な鬨の声も、力の限りに吹き鳴らさせたほら貝も何もかもが純白の繭の中に閉じ込められてしまったようだ。
収穫を終えると同時に仕掛けた戦は思った以上に長引き、すっぱり切られた刈穂の田の上にも、慣れぬ野の戦と寒さの為に調子を狂わせ、命を落とした海の強者たちの上にも、雪は優しく降り積もった。
雪は景色を白く染め上げ、所々に見える枯れ木の黒がそれを一層引き立てた。 あたりは喪の一色だ。
元親は、それに感謝した。
海で死なせてやれなかった仲間達の、悔いの残った死に顔を見やる余裕を持つには彼はまだまだ若すぎたし、戦いの後にはいつも挫けてしまう性格は、城の奥で公卿の姫君のように引き篭っていた頃から本質的には何も変わってはいないのだ。
本当は。
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「下らぬ」
元親の問いに、眉ひとつ動かさず、元就はそうとだけ言った。
雪の下、屠った屍は春に腐れて膨れ上がるのを待っている。 戦を締めくくるための誓いの血判の滴で汚れた指先を雪に擦り付けて拭う。 指先の体温で溶かした雪が、固まった血の結晶を緩めながら流れていった。
元就に同意を求めたのだ。
雪の下、眠る将士達を、哀れに思い、寒かろうと思い、 出来ることなら敵味方区別せず等しく掘り起こして暖かな海に帰してやりたいと。
そもそも元就に同意を求めることが間違っていたのだろう。
それでも聞きたかったのだ。 それは自分の潔さに自信が無いからなのかもしれないと、元親は思った。
「死人を植えたら生きた人が咲くとでも思っておるのではないか。 貴様はたまにたわけた妄想にふける」
「たわけてなどいない。こんな山の中で死んでいった仲間が哀れなだけだ」
「元親が海で屠った山育ちの命もあろう」
元就は鼻であしらった。
死に対する彼なりの道理は徹底している。 元親のように状況によって哀れにも怒りにも形を変えることが無い。
おそらくは、それが納得できる状況であれば自分の死も感情に飾り立てようとはしないのだろう。それが元就の強みであり、覚悟でもある。元就の下に身を置く物があの冷徹な戦ぶりの中でも離反しないのは、将たる元就に揺らぎが無いからであろう。
ひそかに思っていたことだ。 元就と分かり合えないという感情は、裏返してみると元就の域まで精神が熟しきっていないことへの焦りであり、彼が駒と呼ぶたびに吐き気がするこの嫌悪は憧れと紙一重のものではないか。
しかしそれは元親だけの秘密である。 毛利では長曾我部は率いられない。毛利とは違うのだ。
気がつかぬうちに、随分黙っていたようだ。元々黙り癖がある。 元就の前では考え無しに言葉が舌を滑りでて行くが、今夜はそんな気も起こらなかった。
珍しく元就が言葉を紡いだ。
「雪に血がしぶく。それを貴様は雪に咲く花にも例えよう しかし我にはそれは血にしか見えない。 それをそれとしか受け止められぬ。 血は血、死は停止。我の生来のものであろうな」
「でも元就、おまえは戦の後 すぐに坊主を呼んで敵味方関係なく弔うじゃねえか」
「供養は残された者たちのためにするのだ。 命永らえた者はすぐに次の戦に取り掛からねばならぬ。 明日を地獄への下り坂にせぬように、今日の禍根は今日断ち切る。 貴様のようにいつまでもくよくよと雪の下の屍と対話する女々しさは いずれ己の命取りにもなろう」
「それでも、それでも元就」
雪の下、屠った屍は春に腐れて膨れ上がるのを待っている。 元親の迎えを待っている。元親にはそう思えてならない。
「俺は雪が融けたら、野郎達を海に連れて帰る」
「勝手にしろ」
自分の道理が結局は受け入れられなかったことにはあまり興味を持たなかったようだ。元々反する魂が惹かれあってここにいる。元就はそれ以上は何も言わなかった。
で、と問われても困りますが・・・。 珍しく居眠りを忘れてせっせとこんなものを携帯に残して、なんか自分が純情極まりないような気分になりました。
☆ばなさん☆ 加藤濃いよな。加藤濃いから蘭丸にまで気が回らなかったわ。で、さっき録画見たら、とりあえずあれは蘭丸ではないと確信持てたわ。 つかスペインに行っちゃうの!?あそこに元就はいないのに・・・!! 旦那さんのお仕事なら仕方ないけどなあ・・・。残念!近いから遊べると思ってたのに!でも春までは元就を謳歌してくださいよ。
眠るか・・・。
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