【Realistic Pillow】
秋野京



 ハッピーバレンタイン快コ☆(一日遅れ)


「…コナン君ってさぁ」
もぐもぐ、自作のお菓子を口にしながら
快斗が切り出した。

「フォンダンショコラみたいだよね」

俺たちが今、まさに食しているのが
フォンダンショコラ。
快斗がつい先刻完成させたばかりで
ほかほか温かい。

俺の好みに合わせた、ビターな味わい。
今日がバレンタインだから、どうしても
食べさせたいのだと。
下校途中で無理やり拉致された。

「また何か変なこと考えてるんだろ」
熱いコーヒーを一口。
「変なことじゃないと思うケド…」
ぱく、とフォンダンショコラを口に
運ぶ快斗。

「絶対、変な事だって」
「違うって」
「じゃ、言ってみろよ?」
「えー。何でわかんないかなぁ、
名探偵なのに」
「…くだらない理由だったら怒るからな」
「コナン君、怒りっぽーい!」
「…誰のせいだよ…」
軽く快斗をひと睨み。

「初めてフォンダンショコラを
食べた時に思ったんだ、これって、
コナン君みたいだって」

「外側は、ちょっぴり苦いけど。
中には甘いチョコが詰まってる」

「いつも、すました顔をしてるけど。
本当は、オレの事大好きでしょ??」

にっこり平気な顔して笑う快斗が
憎らしくて。
「馬鹿言うなよ」
そうは言ってみたものの、間違いなく
赤い顔をしているであろう自分が、
恨めしかった。
「ま、今日はオレからの気持ちだから
ホワイトデー、楽しみにしてるね」

不意に図星を突かれると弱い、まだまだ
修行不足の自分を呪いつつ。
そしたら1ヵ月後はどんな手段で快斗を
慌てさせてやろうか。
そんな事を考えながら、中から溶け出した
チョコをスプーンで掬い取った。
まぁ、結局の所、オレが快斗に甘いのは
本当だしな。
(絶対、口には出したくないけれど)



2007年02月15日(木)
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