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2002年08月02日(金)
■Brainstorming 中■

本日、朝から夕方までバイト。

相変わらず暇だったので、卒論について考え込んでいた。

以下はその Brainstorming の内容。

ホント、ただのメモのバックアップです。

ですので、文字は小さくしてます。

気になる方は、フォントサイズを大きくしてご覧下さい。


 単文における研究は数多くなされているけれども、それよりもっと大きな表現単位として、談話(Discourse)が上げられるけれども、それに関する研究というのは多くない。省略に関しても、等位接続の文における省略現象、つまり、統語的な視点から旧情報は削除される(Deletion)ことは、Quirk et. alなどによって、よく知られている。また、等位接続の文であれば、構造からして、省略部分の復元は容易である。ところが、談話レヴェルでの省略となると、復元は簡単なことではない。簡単でないが故に、誤解が生じ易くなっている。以下の例を見ていただきたい。


 本稿で扱う省略とは、会話における共通知識が削除された現象のことである。
 先日、図書館員と以下のようなやり取りを行った。
 [本を持った筆者に、館員が話し掛けてきた]
  館員:それ、いいですか?
  私:(しばらく考えた後に)いいですよ。
  館員:ありがとうございます。

 しばらく考えたのは、そこにステップがおいてあり、館員が、どちらを貸して欲しいと求めているのかが分からなかったからである。もう1つ注目すべき点として、館員の発言において、何の前置きも無く、「それ、(をお借りしたいが、)いいですか?」と省略現象が起こっていることである。そして、私も、彼女が何かを貸して欲しいという依頼を、即座に理解している点である。私が分からなかったのは、館員が何を貸して欲しいのかということであり、その依頼自体は理解している。


 省略とは何か。何を目的で省略を行うのか。その省略された部分を、どのようにして復元し、認知するのか。最後に、省略現象にさらなる関心を寄せ、組織化された形、つまり、一つの文法事項として指導されるべきであることを提言したい。談話レヴェルにおける省略にはあるTopicが存在し、それを意識させることで、マクロの視点によって論理的に物事を捉えようとする効果が出ることを結論としたい。


 我々が会話をする際には、効率性を高める傾向がある。楽に物事が進められるのであれば、そちらを優先するのが人間というものであろう。その方法の一つとして、省略現象があげられる。一般に、会話に参加している者の間で「言う必要は無い」とされる内容が省略される。我々は、よほどのことが無い限り、その省略された部分を補い、会話を進めることができる。では、どのようにして、その部分を補うのであろうか。これが第一の疑問点である。


 省略表現とは、実に定義のしにくいものである。そのせいもあってか、英語の文法辞典を開いてみても、Ellipsisとか、DeletionとかGappingといった様々な単語が割り当てられている。このことからも、この現象が、いかに規定しにくいものであるかがわかるであろう。省略とは、普段意識しない現象ではあるが、意識しないほどに多用されているということを暗に示しているのではないだろうか。本論文では、省略現象とは何か、実際にどのような場面で省略を行うのか、その省略が多用される場面として、野球の実況中継を取り上げ、日米の比較をしてみたい。

 それから、これらの理解の手順(認知過程)なんかを考えていくには、「推論」(inference)について考える必要がある。我々が会話をする際、脈略のない話をすることはまずないワケで、基本的に「結束性」(cohesion)のある内容になってるはず。で、そんな会話の内容を文字にしてみると、目に見えて結束性のあるものと無いものが存在する。というか、普段は、目に見えて結束性のある会話をすることはあまりない。抽象的なお話はここまでにして、教科書からの例文を提示してみる。

  A: That's the telephone.
  B: I'm in the bath.
  A: O.K.

 このやり取りにおいて、文章を一つ一つをみる限りでは、まるで結束性が見られないが、会話としては、問題なく通じる内容になっている。では、なぜ通じるのか。それは、目に見えない・言外の結束性が存在しているからである。その目に見えない・耳に聞こえること無い部分を足したものが、以下のやり取り。

  A: That's the telephone.(Can you answer it, please?)
  B: (No, I can't answer it because) I'm in the bath.
  A: O.K. (I'll answer it)

 カッコ内の answer という語によって、各発話につながり(=結束性)が生まれているのである。では、どのようにして、この結束性が生まれるのであろうか。この answer がこの会話での命題(proposition)になっていて、そのおかげで、一見脈略の無いようなやり取りが、結束性をもった会話になっているといわけである。会話の中で、「省略されている部分に結束性がある」、だから通じる。これはなかなか興味深いことではなかろうか。


 問題は、どういった状況で、目に見えた結束性/目に見えない結束性が現れるのかということである。もっと簡潔に言うなれば、「省略の条件」という感じだろうか。どういう状況・文脈で、省略をするのかしないのか、そして、省略した際に、相手に推論(inference)の作業をさせるのは、一体どんな場合なのか、この辺りを探ってみたい。


 この会話では、括弧内に示したように、「電話に出るか出ないか」ということが、topicになっていることが分かる。これをDiscourse Topicと呼ぶ。このDiscourse Topicが結束性を生むのである。このDiscourse Topicを会話の当事者同士が共有していることが、会話成立の最低条件となる。この最低条件が満たされるには、何が必要なのであろうか。それが、文脈である。


 ここで、省略の条件を考えてみたい。どのような場合に、省略が可能となったり、省略が不可能となるのであろうか。「相手に利益になることは大きく表現せよ」、というLeechのポライトネス理論があるけれども、それに則ると、相手に食事を勧める際の命令文であれば、主語等を省略することは充分に可能だと言えよう。一方で、お互いの社会的距離(Social Distance)が離れている場合などでは、丁寧表現を用いる必要が出てくる。この場合には、比較的省略可能な表現があったとしても、むやみに省略することはなく、全てを表現することを求められる。つまり、省略しようとすると、逆に失礼な表現として受け取られてしまう可能性が高い。なぜ省略が起こるのについて考えさせ、省略された部分を復元させることは、文と文のCollocationを考えることにもつながる。より豊かな表現を可能にさせることができるのではないだろうか。


 敢えて、推論をさせることもある。それは、相手にとってより鮮明な印象を残したい場合に用いられる。プロポーズで見受けられるような、敢えて表現しないことも、一種の省略表現であり、そこを推論させて、自分の伝えたいことを、相手により深く印象付けようとしているのである。このことからも分かるように、推論と省略は、実に密接な関係にあることが分かる。


 文を一つ一つを細かくして研究がなされることは非常に多い。学校文法も一文一文を訳して理解することばかりを続けてきた。言語とは、コミュニケーションの為の道具であり、細かな文法事項に対する考察も必要不可欠ではあるけれども、さらに重要なのは、それを如何に運用するかである。したがって、言語使用に着目して研究がなされるべきである。


 私は、この省略現象が、一種の文法事項として使われるべきであると考える。前述したように、意識がほとんどされないような現象にこそ目を向け、学ぶことで、より高度な言語運用能力が身につくと思われるからである。Discourse Topicという会話におけるテーマを発見し、マクロの視点で物事を理解することが、英語教育だけでなく、あらゆる分野で求められる能力だと思われる。私たちは、意識することなく、全体を捉えようとしていることが分かる。ここを意識させることで、Readingのおける要点把握など、第二言語習得の上で能力向上を図ることができるのではないだろうか。





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