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2002年07月01日(月)
■結束性(cohesion)と省略(ellipses)を考える■

先月は、教育実習に伴う長期休載にも関わらず、31票もの投票を頂きました。
どうもありがとうございました。


□■□


 本日、授業1コマとバイト。


 今日の授業は、Senior English Workshop という大層な名前だが、やってることは、Reading。しかしながら、普通の Reading と違うのは、最終的にペーパーを出す必要があるという点。我が大学は、卒論が必須ではないので、この授業で英文を書かせようってワケです。


 で、来週までに Introduction を完成させて提出しなくてはいけないのだが、いまいちネタが浮かばない。卒論と同じ内容でも OK なのだが、卒論のテーマさえも…。というか、シンドイかもしれないが、卒論と同じ物を書く気は無い。単純にオモロくないからね。それにしても、我ながら、英語に対する問題意識が薄いですなぁ。とまあ、そういうワケで、ヒントは転がっていないだろうかと、日々の授業で聞き耳を立てているのだが、今日は卒論のテーマになりそうなネタを発見。


 我々が会話をする際、脈略のない話をすることはまずないワケで、基本的に「結束性」(cohesion)のある内容になってるはず。で、そんな会話の内容を文字にしてみると、目に見えて結束性のあるものと無いものが存在する。というか、普段は、目に見えて結束性のある会話をすることはあまりない。抽象的なお話はここまでにして、教科書からの例文を提示してみる。


  A: That's the telephone.(AとBの両方が認知している電話なので、定冠詞 the を使用することにも注意)
  B: I'm in the bath.
  A: O.K.


 この文、まるで結束性が見られないようだが、読んでみれば通じていることはお分かりですわな。なぜ通じるのか。それは、目に見えない・言外の結束性が存在しているからなのであります。その目に見えない部分を足したものが、以下のやり取り。

  A: That's the telephone.(Can you answer it, please?)
  B: (No, I can't answer it because) I'm in the bath.
  A: O.K. (I'll answer it)


 どうでしょうか。カッコ内の answer という語によって、各発話につながり(=結束性)が生まれているのが、見て取れるだろうか。この answer がこの会話での命題(proposition)になっていて、そのおかげで、一見脈略の無いようなやり取りが、結束性をもった会話になっているというワケであります。会話の中で、「省略されている部分に結束性がある」、だから通じる。これはなかなか興味深いことではなかろうか。筆者だけ?


 そこで、どういった状況で、目に見えた結束性/目に見えない結束性が現れるのかを調べてみようか、と思いまして。もっと簡潔に言うなれば、「省略の条件」という感じだろうか。どういう状況・文脈で、省略をするのかしないのか、そして、省略した際に、相手に推論(inference)の作業をさせるのは、一体どんな場合なのか、この辺りを探ってみようかな、と思う今日この頃。




【Reference】
  H.G.Widdowson (1978) Teaching Language as Communication. Oxford University Press, p.29


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