Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2018年10月29日(月) なかむらしょういちさんFBコメント

なかむらしょういちさんFBコメント


昨日「四谷茶会記」で行われた「タダマス会」。ゲストはNYを拠点に大活躍されている作曲家であり、ビッグバンドリーダーでもある狭間美帆さんでした。11月に新作アルバム『DANCER IN NOWHERE』を発表される狭間さん、土曜日にはコットンクラブでのライブもあったという事で、客席にもジャズ評論家の村井さんやフォトグラファーの常盤さんをはじめ、豪華な顔ぶれが揃っておられました。多田さんが「この会がスタートした時はお客さんが二人しかいなくて・・・」と回想しておられたのが嘘のような盛況でした。

当日の選曲リストは益子さんが茶会記のホームページにUPされている(https://bit.ly/2zbIFMh)ので、詳細は省きますが、私にとってこの会の魅力は、ホストであるお二人の曲やサウンドに対するとらえ方の違いを体験できる事にあります。益子さんが盤や曲のチョイスをして、多田さんがそれに対するコメントをする、という形式で進行していくのですが、多田さんのコメントは遠慮なく「好き嫌い」を出してくれるし、私のような音楽の素人にもイメージが掴みやすい言葉で語ってくれるのが良いですよね。共同でやっておられる企画でも、予定調和的な同調感が全くなくて、どんなコメントが出るか、というスリルがあるところが好きなんです。

ゲストであるミュージシャンの方のコメントも様々なのですが、この日の狭間さんはこれまで自分がお会いしたゲストの中でも自らの音楽への考え方と、この日かけられた曲・サウンドへの好みを明快に語ってくれたように思います。そして、益子さんの作られているセットリストへのチェックも入念で、録音スタジオやエンジニアの名前なども細かく目を通しておられて、そのサウンドの傾向にも的確なコメントをされていたのが印象的でした。

例えば、この日のリストにある2枚目と4枚目、3枚目と5枚目のCDはスタジオもエンジニアも同じなのですけど、狭間さんはその音の違いを「新しい音」か否か、という言葉で表現されていて、私も「なるほどなぁ」と思ったりしたんですね。2枚目のジョナサン・フィンレイソンのCDと3枚目の北川京子さんのCDには共にアルコ・ベースが入っているのですが、そのサウンドはかなり違う。自分なりの感想を言ってしまうと、フィンレイソンのアルバムのアルコはこれまでのジャズでもよく聴かれた「ズリズリ感」と言うか、そういう擦過音がかなりオン気味に捉えられているのに対して、北川さんのアルバムのアルコはちょっとクラシックのチェロを思わせるような、間接音も含んだ空間に漂うような感じを上手く捉えている、という印象でした。

そんな感じで、狭間さんのコメントを追いながら曲を聴き進めていくと、狭間さんは特に「アコースティック楽器の音がどう捉えられているか」というところに凄く鋭敏な感覚を持っておられるな という印象が強かったです。それは狭間さん自身が「私のルーツは室内楽的なところにある」と言われていたことや、狭間さんのイメージしたサウンドを実現するために「奏者を選んで、その奏者に投げる」と言われていたことにも通じるものがあるのかなぁ、と思ったりもしました。

さて、この日のマイ・ベストは今や「時の人」でもあるらしい女流ギタリストのメアリー・ハルヴァーソンが絡んだ二枚。"The Maid with the Flaxen Hair"と、これは番外編でかけられたCDなのですが"Seed Triangular"です。

前者はあのビル・フリーゼルと組んでの、かつての名ギタリスト、ジョニー・スミスへのトリビュートアルバムです。私はこの日初めてビル・フリーゼルがジョニー・スミスの弟子であったこと(本人曰く「不肖の弟子」だそうですが)を知ったのですが、このギターデュオは凄かった。あのルースト盤で有名な「ヴァーモントの月」一曲をとっても、一人がメロディラインを比較的ストレートに弾き、もう一人がバックで様々な音=ある意味「ノイズ」とも言える音を入れてくるのですが、その「ノイズ」が精妙に構成された装飾音のようにメロディの良さを引き立ててくれるんです。これには参りました。

後者は、ジャズには珍しい「古楽器」というか、バロックフルート(クラシックで言うところの「フラウト・トラヴェルソ」ですかね)や19世紀に作られたバンジョーなどを駆使した作品なのですが、そのサウンドが非常に鮮明に捉えられています。特にマルチリード奏者のロバート・リーが奏でる木管の音が尺八のような幽玄さと空間を生み出しているのが衝撃的でした。今やクラシックの世界では「ピリオド奏法」はもはやポピュラーな存在になりつつありますが、録音の進化がこういう古き良き時代の楽器から新鮮なサウンドを引き出そうという奏者の意図を体現してくれる、というムーブメントがジャズ・シーンでも聴けるのは嬉しいですよね。

そういう音楽の録音手法にしても、発信手法にしても、色々な手段が著しいスピードで変化し、進化していく現在において、「作曲とは?」「即興とは?」そして「CDを作る目的とは?」という色々な角度からの刺激に満ちた問いかけと答えを、益子さんと多田さん、そして狭間さんのコメントから、何よりも福地さんと宮��さんがチューンされている往年の名スピーカー=アルテック・ランシングの奏でるサウンドから、受け止めることが出来たことは、一リスナーとしても、一オーディオマニアとしても刺激に満ちた体験でした。ということで、この日もまた、素晴らしい会に参加できたことに、心からの感謝を。

では、おやすみなさいまし。


(追加コメントから)


"Seed Triangular"はオフィシャルのアルバム・トレイラー映像がYoutubeに上がってました。日本のamazonではまだ買えないみたいなので、早速アメリカamazonに注文をかけてしまった私。ちなみにLP(ヴァイナル)も出ているみたいなので、そちらも興味あり。

Robbie Lee and Mary Halvorson - "Seed Triangular" Official Album Trailer

https://www.youtube.com/watch?reload=9&v=rn5KKzf77MM


多田さんがアフターアワーズにバーカウンターの方でかけられたこの平田王子さんのCDも素敵でしたね。多田さんが推されてたと記憶しているサックスの宮野裕司さんも素晴らしいし、帰宅して調べたらピアノが大口純一郎だったのを知って「なるほど」と思いました。これからもよろしくお願いします。

平田王子「No meio da viagem *旅の途中」

http://kimikohirata.chu.jp/product/008/



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