Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2015年11月29日(日) Tactile Sounds vol.20 橋爪亮督+山田あずさ ライブレビュー






ずっとひもじくてライブに行くことができないでいたが8千円の余剰金が出たところでそういえばタクタイルサウンズ、ふらふらと出かける、橋爪さんとデュオだっけ?ね、


4メートル近い大きなマリンバ、そこで驚異的なコントロールのセンシビティに裏打ちされた倍音の豊かな波。


さらに、橋爪亮督のテナーとソプラノが倍音マックスの次元が異なる(羽生結弦を思わせる)倍音が覆うのだ。


スカボロフェア(Simon & Garfunkel)とムーンチャイルド(King Crimson)が一緒になって空間を響かせる。なにをいっておるのか、われー。


な、なんだこれは!ECMが失ってしまった響きの原初性、生成におののく沈黙を手にするような、が、ここに出現しているではないか。


そう思って益子博之の顔を見ると、アイヒャーに聴かせたいですねー、と、言う。なんとタダマスの相棒は同じことを、本質を感じ取っていたのだ、はなはだうれしい、いとおかし、来なかったひと、見逃したなあ、


Jazz / Improvisation / Composition スケールを逸脱する、響きの、倍音のコントロールに優雅に舞う二人。


オタッキーなことを言うと、Dawn (ECM1146) が孕んでいた可能性を、もはや Mark Turner や Jan Garbarek を凌駕するヴォイスを獲得している橋爪こそが拓くことができた風景と言えようか。


マリンバ奏者の山田あずさは細身のかわいらしいお嬢さんだが、響きをコントロールできる能力の大きさはちょっとマリンバ奏者を超えているな、何なんだこの謎は、鬼気迫るというか。アフターアワーズで彼女のユニット nouon のファーストCD『KUU』を聴いたが、さすがコントラバスクラリネットの低音倍音の鬼を配置するという“正しさ”にぐっとくる。こちらはバラエティ&アラカルトな楽しいアルバムだ。


橋爪と山田のコンポジションが並ぶ。曲もいい。ううむ、曲もいいのだが、この倍音を録音できるものだろうか?ふと数年前に三善晃の合唱曲のもあれ状態に響く生きもののような光りを録音できるのか?と考えたことを思い出している。


それにしても。橋爪亮督にスポットをあてるこのタクタイル・サウンズに、山田あずさを初共演させたプロデューサー益子博之、よく思いついたというか、見つけてきましたね、というか。とんでもないことはふいに起こるのね。


会場の響きのあんばいも得難くて、全身で浴びるように、つい手のひらを向けて飛翔スタイルで聴き入ったライブなのであった。そんでもって今さらながらに、 Tactile Sounds 触覚する音楽そのものではないですか!と出来すぎなオチを言ってしまう始末。


この二人じゃなきゃ、このハコでなきゃ、という、なんとも、これを奇跡と言ってしまうのはあまりに凡庸、だけれど、化学反応がしていたよねー。


現代ジャズの地平は、前衛でも先鋭でもヴァーチュオーゾでもハイブリットでも流行でもなくって、なんてハナシを喫茶茶器記店主の福地さんとしたのだっけ?



帰ってきて山田あずさのプロフをみると、なんともやっぱりすごいのだった。


山田あずさ(やまだ・あずさ) 鍵盤打楽器奏者/作曲家

北海道富良野出身。桐朋学園大学音楽学部カレッジデュプロマコースにてマリンバを専攻、世界的なマリンバ奏者である安倍圭子、浜まゆみの両氏に師事。

2011年コンセール・ヴィヴァン新人オーディション合格。卒業後、WUJA BIN BIN、渋さ知らズ オーケストラなどのバンドをはじめ、自身のバンド MoMo、ATLAS、nouonで作曲も手掛ける。海外ツアーやマリンバ曲などの制作・録音、近年では、ドイツ在住のダモ鈴木(CAN)、舞踏家 蝉丸(山海塾)との共演、さらに、星野源やタクシー・サウダージなどヴォーカリストのサポートなど、活動の幅は多岐に渡る 。不定期で開催しているワークショップでは楽器づくり/音楽体験など、親子で楽しめる内容で好評を博す。

これまでに、スペイン のSAN SEBASTIAN JAZZALDIA、ポルトガルの FNN SINES2013、フランス のLA ROQUE D’ANTHERON FESTIVAL DE PIANOなど伝統ある海外フェスに出演、国内では六本木アートナイト、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャパン、神奈川国際芸術フェスティバルなどに出演。




Niseko-Rossy Pi-Pikoe |編集CDR寒山拾得交換会musicircus

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