Land of Riches


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 2026年04月15日(水)   初期衝動 

競馬を見始めたのは今年なので、JRAとNARの違いもよく分かっていません。
JRA(中央)のレースは週末に年がら年中あって、平日にあるのは地方競馬と呼ばれるもの。
大井に競馬場があるのは、羽田空港へのアクセスにモノレールを使う(京急は一度のみ)ので
もちろん知っていましたが、まさか下車する日が来るとは思っていませんでした。
(空港以外は即売会で流通センターに1回、観劇で天王洲アイルが数回あるだけ)

実は競馬を始める前、昨年12月に大井には行こうとしていました。……イルミネーションに。
都内のスポットは通勤ルート上が多く、非日常感を求めた結果メガイルミを知りました。
会社の福利厚生で平日なら無料だと知り、候補日もピックアップしていたのですが未遂。

冬から春になり、私を大井に導いたのは馬券に印字される騎手名でした。JRAでは馬名だけ。
(そもそも馬名だってオグリキャップが大ブームを巻き起こすまで入っていなかった)
JRAではスマッピー投票に移行したので、マークシートも久しぶり。塗り間違えてしまい、
シート返却してスタッフに心配される有様でした。あと大井はPayPayで馬券が買える…。

JRAとNARとで取り決めたダート交流重賞競争にはJRAの馬や騎手が出場できます。
フォーエバーヤングはじめダートでいくつも賞を取っていて、かつ父が調教師をしている
大井競馬に瑠星さんが1鞍だけとはいえ騎乗すると知って、退社後にモノレール乗りました。
かつて騎手だった父の応援も兼ね、競馬に興味ない3歳下の妹を内馬場に連れ出していた彼。
当時、父の英光さんより勝っていた戸崎さんを嫌っていたのは有名な話です。

大井にはシアターHという劇場もできて(まだ観劇経験無し)駅前にはモールもありました。
しかし降りるなり馬由来の野生のニオイが立ち込めるという噂は本当でした。
さすがに府中や中山よりはスタンドも小さく、飲食店も少なめ。
スタンドとパドックの間にある別建物で買ったビールともつ煮もパラソルの下で食しました。
スターライトもつ煮がサッカースタジアムでも記憶にないぐらい美味しかったです。
(これを書いている今知りましたが、大井の名物グルメとして超有名らしい)
クラフトビールのゴールデンエールもお値段3桁でしたし、大満足でした。

パドックとスタンドは近く、かつレース間隔も慌ただしいので、本命レースの2時間以上前に
到着したのに、パドック見て馬券買えたのは1レース(10R)だけでした。普通に負けました。
深入りしないよう、馬券を買う材料をパドック・馬名・騎手・倍率のみに絞ってますが、
今のTCKで英光調教師めちゃくちゃ強くて、全レースの4分の1は勝利しているんです。
またまた今書きながら調べましたけど、この10Rも1着は坂井厩舎の馬でした(苦笑)

日頃の心掛けか、この日は天気が下り坂で、折り畳み傘を持って出社しました。
10Rまでは小雨程度でしたが、メインレース前から急に雨脚が強まりました。
競馬場は傘NGではないので、差しながらパドックを眺めていました。前方は写真ガチ勢が
ポンチョ装備で陣取っていますから、少し後方から。何周もする馬の、手綱部分には
ビニールのカバーがかけられていて、騎手が乗るような終盤まで外しません。

パドック周回の終盤、本馬場に移動するため雨装備で身を固めた騎手が騎乗します。
NARの勝負服は騎手ごと、JRAの勝負服は馬主ごと、いずれも鮮やかすぎる原色です。
斤量制限があるため騎手は全員細身で、食事制限からか皆とても若く見えます。

最近学んだのですが、騎手は騎乗機会も縁や営業で自ら勝ち取らねばなりません。
瑠星さんは競馬学校卒業時、大井に矢作厩舎(ハットマンのお父さん)があった縁から
ハットマンの弟子になり、そのハットマンがエージェント制に疑念を抱き、自厩舎の騎手を
育てようとしている(ただし超ハード)ゆえに、割と騎乗機会には恵まれています。
この日のハッピーマンも新馬戦から10回目となる、お手馬とも呼べる1頭でした。
(ハッピーマンの戦績も事前情報は一切仕入れず行った。生産牧場は最近炎上してたけど…)

ビニール装備に身を固めた瑠星さんが鞍上に乗り、ゆっくりとパドックを周回します。
スマホカメラのオートフォーカスが飛ぶ程の雨量。今スマホに残っている写真もボケボケ。
その写真見ても伝わってこないくらい……鞍上の背筋を伸ばした瑠星さんは美しかったです。
1頭だけパドック2周して、本馬場での返し馬も一番客席寄りでやっていました。

この人は自分が何者か…BCクラシック制覇ジョッキーとして耳目を集めると自覚していて、
それに相応しい振る舞いをしているのだと感じ、彼が競馬に賭ける覚悟に感嘆しました。

人間の女性にはデリカシーの欠落した発言を連発し、服のコーディネートも外注してますが、
(馬に対してはロマンティックなセリフもたびたび飛び出しているんですけどね……)
それらのセンスを奪ってまで神が競馬のステータスに全振りしたとも言われる瑠星さん。
ここ数年、正気を疑うローテーション(移動距離と日程)を繰り返していますけれど、
SNSで大井に行った翌朝(4/16)知って図書館まで読みに行った記事に答えはありました。

オーストラリア修行時代に、乗鞍にも恵まれず苦しかったとは知っていました。
……1鞍のために片道4時間ドライブ。それと比べたら、と彼は言うのです。
注目度が上がるにつれて増していく雑音も、競馬が命懸けであるのに比べたら、とも。

自分が誰だか知っている人は強いです。瑠星さんは騎手にしては長身の部類に入りますが、
その美しさは内面の覚悟と、競馬に全てを捧げるために染み込ませた「姿勢」ゆえでしょう。
(YouTubeの企画で体内時計15秒測定する時でさえ鞍上の姿勢を取るほど)

大井はナイター競馬として売り出し、照明には力を入れていて、クリスマス程ではなくても
イルミネーションも煌めいていました。それ以上に、強いメイン照明に照らされた雨粒は
まるでダイヤモンドを砕いて夜空から撒き散らしたかのように輝いていて、心奪われました。

結局ハッピーマンは14頭立ての9着(JRA勢では一番下。もともと人気は薄めの馬とはいえ)。
馬主に賞金が支払われる5着(いわゆる掲示板)にすら入っていません。見事な黒星です。
それでも、私は美しいものを見た…という感動を味わいました。綺麗な記憶のために、
馬券はサンリオのお店でわざわざ買ってきたチェキケースに入れてあります。
雨に濡れて少し歪んでしまった部分さえ、この夜を思い起こすトリガーになるでしょう。

2026.4.18 wrote


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