Land of Riches


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 2017年04月24日(月)   わんこ 

今日は有休取って、里見八犬伝の東京楽に行ってきました。
本当は楽を見るつもりなかったんですけど、最初に取ってたチケットをなくしまして(泣)
慌てて取り直しに行った時点で、平日昼間しか残ってなかったんですよ…。

まずは八犬伝の前に、昨日付の刀ミュの補足。
脚本家さんは、自分がネタばらしをすることは観客のノイズになる、
調べた小ネタはこそっと混ぜる、見た側の想像する余地を残す…と
まるで私が駄文を書くスタンスと一緒(技量は大違い)だと唸りました。
それにしても想像にぶん投げ過ぎだと思いますが、みほとせは!(苦笑)

話を戻して…八犬伝はテニミュで跡部を演じた青木さん(犬山道節)と、
刀ステで長谷部を演じた和田さん(犬田小文吾)が同じ板に立つということで、
勇んでチケ取りました。平成になって翻案された八犬伝、今回が三度目の上演で、
今を時めく山崎賢人さんの初主演が3年前の前回上演でした。

再び山崎さんを主演(犬塚信乃)に据え、周囲のキャストを入れ替えしての再演で
推し俳優にお声がかかったわけなのです。三度目とあって、演出はともかく
ストーリーは知られてる扱いとなっており、和田さんのブログでも見終わった後に
幸せな気分で帰れるものではない、と書かれてたので、覚悟はしてました。

名前は同じでも八犬士や周囲の人々の置かれる立場は感情的により近い関係へ
置き直され、浜路を信乃と犬川荘助が奪い合ったりします。
この過程で信乃は義父(と友人の荘助)を斬ってしまうのですが、
そんな自分に孝の珠が付きまとうのは皮肉でしかないと呪い続けます。

他の犬士も、それぞれの珠の要素を備えているから選ばれたわけではなく
(小文吾はじめ、数人は身についていると誤認していますが)
実は欠けているからこそ選ばれており、持ち主が不足を自認し、
無念や後悔を抱いて失った命を捧げて初めて世を救う力となります。
ドラゴンボールじゃなくてむしろ聖杯戦争かよ。

今回の舞台の世界では無念が最も強烈なエネルギーとして機能しており、
無念があれば死者も蘇る(玉梓もその配下も)レベルという設定。
里見義実に一方的に恨まれて死んだ玉梓の瘴気を祓うには
ベクトルは違えど、エネルギーとしては同質の心残りが必要だったわけです。
それは隠され、犬士たちは互いに引き合う性質に導かれ、富山に集います。

和田さん演じる小文吾は弟と妹(原作では妹とその夫だが幼い子供に置き換え)を
盲目的に愛し庇護するがゆえに二人の未来を奪ってしまいます。

仕官の道を閉ざされた兄に代わり世に出ようとする弟を厳しく怒鳴りつけ、
妹には客人である信乃と犬飼現八をもてなすよう言いつける兄ですが、
実は二人を溺愛していて、信乃たちが舞台の中央で物語を進める間も
脇で台詞もなく、弟妹を大切にしている(現八に稽古をつけられる弟を見守る、
信乃たちの戦闘中は二人を守っている等)動作を繰り返しています。

その積み重ねがあるからこそ、観客は小文吾の「悌」らしき兄弟愛を知るし、
だから戦闘の巻き添えになって弟と妹が死んでしまった後の慟哭が胸に刺さるのです。
私、劇場で泣いたり滅多にしないんですが、頬に涙が伝ってました。
この後、小文吾は弟妹の敵を討つ一念だけで犬士として行動し、
最後は敵と相打ちとなり、実際は弟妹によって生かされていたことを悟るのです。

犬士は欠落を抱えるがゆえに、信乃を筆頭にこの世がどうなろうと
どうでもいいという、やけっぱち、刹那的なキャラクターが多いです。
小文吾も敵が取れれば後の難しい(?)ことには興味がありません。
ただただ真っ直ぐなので、和田さんはときどきに起こる事象に対して、
小文吾ならこうするだろうという小さなリアクションを続けます。
犬士の中で二人目にこの世を去るのは…まあ立場的に仕方ないかな…。
(最初の犬村大角の時点で、主役以外全員死ぬオチは見えた)

青木さん演ずる道節は、この舞台では丶大法師の育児放棄された息子設定です。
父の帰りを待ち続けた母を想い、父への恨みを募らせた結果、玉梓サイドにつきます。
(玉梓サイドの主要戦力が、ブリーフィングでは隅で外を見ているような道節と、
玉梓自害時に忠誠を誓って死んでいった里見家の家臣なのは皮肉と言えば皮肉)

八犬士を集める事しか眼中にない父との対峙を望み続け、大太刀を振るう道節。
納刀にも一苦労しているのがうかがえましたが、見事な殺陣を見せて下さいました。
うっとり。社長がフォローしたからってとうらぶ出演説があるけど、
出たら凄く強い男士になるんでしょうね。もう2.5次元に出るようなレベルの
俳優さんではなくなってきてると思ってますが、割と期待してます(こら)


一度目は手を抜いた父はその無念を見抜かれて蘇生させられ、二度目の勝負で相打ち。
途中からオチが見える様式ではあったんですが、それでも三度も上演されるということは、
この物語には人の心を打つ要素があるんでしょう。最終的には主役以外
全員デッドエンド、その主役も全てを失ってどう生きていけばいいのか
探しに行かなければならないという有様だったりするのですが。

道節の大太刀、小文吾の斧以外にも十手や木の棒、槍と多彩なリーチの武器が混在し、
足場である岩場も人間が誰かを乗せたまま動いたり回ったりしながらという
ダイナミックな殺陣は、割と危険度の高そうでもあります。
実際、主演が岩から落ちてしまった日もあるとtwitterで見ました。
和田さんが毎日のようにブログで無事に終われて良かったと書くだけはありました。
無事に東京凱旋公演を迎えて欲しいものです。


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