橋本裕の日記
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| 2007年01月11日(木) |
I am the teacher |
今年もらった年賀状のなかに、「A happy new year!」と英語で書いてあったものがあった。それを手にしながら、ここで使われている冠詞の「a」は何者だろうと考えた。完全な文の形でかんがえてみよう。
I wish you a happy new year. (新しい年が、よきおとしでありますように)
もちろん日本語では英語の「a」に相当する単語はない。文法的には「a」は不定冠詞とよばれる。定冠詞「the」がひとつしかないものや1人しかいない人を表すのに対して、「a」はその名前の通り、たくさんあるなかのひとつや、誰か1人を表す。
一般論からすると、「a year」は「たくさんあるなかのひとつの年」ということになる。しかし、これではなんとなくしっくりしない。これは文を整えるための形式的な使用だと考えれば気が楽だが、文頭にある「a」にはもっと強いメッセージがあってよい。
そこで考えたのが、「a」のもつ「まるごとひとつ」という意味である。これは「一年間まるごと」という意味ではないかと考えた。だから、「A happy new year!」は「1月1日から12月31日まで、1年間まるごとが幸福でありますように」というずいぶん欲の深いお願いなのだ。
だから「A happy new year!」は、「明けましておめでとう」とはまったく意味が違う。たんに「新しい年を迎えておめでとう」と言っているわけではない。今後1年間が幸せであるようにと祈っている。その雄大な気持がこの文頭の「a」にこめられているわけだ。これがわかると、これまで何でもなかった「a」が大きく感じられる。そして文章が生き生きしてくる。
日本人にとって、単数・複数に加えて、この冠詞「a、the」がむつかしい。日本人が英語を口にできない大きな理由がここにある。「みかんが好きです」という文章を口にするのでさえ、「a orange」にするか「oranges」と複数形にするかを迷う。「A happy new year!」も「Happy new year!」や「The happy new year!」ではないのかと迷うだろう。こんなことを考えていたら何もいえなくなってしまう。
(1) I am a teacher. (私は先生です)
(2 )I am the teacher. (私が先生です)
外国人に日本語の「は」と「が」の意味の違いを説明するのは難しいが、これはおおよそ「a」と「the」の意味の違いに対応している。「は」の場合には「a」を使い、「が」の場合は「the」を使えばよいわけだ。
もちろん言葉は使われる状況の中で意味が決まる。状況しだいでは、(1)、(2)の例文を次のように訳することもできる。
(1) I am a teacher. (私はどこにでもいる教師の一人です)
(2 )I am the teacher. (私こそが教師です。教師の鑑です)
さて、私も「I am the teacher.」と生徒や保護者の前で胸を張ってみたいが、「You are a teacher.」と言い返されていまいそうだ。
(今日の一首)
ゆるやかに日が長くなるありがたさ 寒き中にもしのびよる春
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