橋本裕の日記
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| 2006年09月18日(月) |
命が担保の消費者金融 |
9月13日の朝日新聞朝刊によると、消費者金融大手5社(アイフル、アコム、プロミス、武富士、三洋信販)が05年に受け取った死亡保険金は3万9880件で、そのうちの1割にあたる3649件の死亡理由が「自殺」だったという。
お金を貸すとき、顧客の「命」を担保にして保険をかける。顧客は返すことができなくなると、自分の命を犠牲にしてお金を返す。こんな残酷なことが今、この国で行われている。
金融庁によると、保険加入から1〜2年以上たつと、保険金を受け取る際に死亡診断書の提出が省略できる。したがって自殺を理由とした支払いが、この調査結果よりも多い可能性もあるという。
こうした「命を担保」にした保険(消費者信用団体生命保険)は20年以上前からはじまり、原則として消費者金融の借り手全員に加入させている。しかし、実際は借金の申込書と一体化しているため、生保加入に気付かない加入者がほとんどらしい。
消費者金融の利用者数は、04年の一年間で2000万人の大台を越えている。平均の借入金も100万円を越えている。大手4社だけで営業収益は年間3500億円を超える。
消費者金融やクレジット各社が供与した金額は、住宅ローンをのぞいて、03年の段階ですでに73兆円になる。いわば国の予算にも匹敵する金が支払われているわけだ。とうぜん、それ以上のお金が消費者から金融各社に流れている。なお、消費者金融の顧客の4割以上が年収300万未満の低収入層である。そして8割以上が年収500万未満である。
米雑誌「フォーブス」によると、昨年05年の富豪リストの第二位がアイフルの社長、第三位が武富士前会長、第五位がアコムの会長で、いずれも5000億円を越えている。
貧者からさらに富を奪うこうした仕組みが、中・下層階級の貧困化に拍車を掛け、格差社会の現実をさらに厳しいものにしている。個人自己破産者の数はこの10年間で4倍にふくれあがり、05年には18万4千人をこえた。多重債務者は350万人もいる。
これらの消費者金融会社に資金を貸し付けているのが、大手の銀行や保険会社、外資である。銀行は0金利で資金を調達し、これを消費者金融をとおして、30パーセント近い高利貸しをしている。
しかし、新聞もテレビもこうした「悪魔のビジネス」を批判しようとしなかった。その理由はこれらの業界から莫大な宣伝費を受け取っているからだ。その額は年間800億円にもなるという。これだけお金を払い込んでくれる気前の良いスポンサーに対して、新聞もテレビも、マスメディアは批判は出来ない。
金融ジャーナリストの須田慎一郎さんの「下流喰い」(ちくま新書)にこんなエピソードが紹介されている。二、三年前に彼が新聞の夕刊に「メガバンクともあろう存在が、そもそもサラ金と組むとはいかがなものか」と持論を述べたところ、広告代理店がいきなり、新聞社の広告出稿を全面ストップすると圧力をかけてきたのだという。
<代理店の言い分は、いつも同じである。 「そんな記事を載せたら、広告を引き上げます」 「今後のお付き合いに支障がでますけど、いいんですか」 電通、博報堂といった大手の広告代理店は、寝技に長け、印刷所にまで手をまわして、出版社の許可なく早刷りのゲラなどを易々と入手してしまうこともあるという。私の記事の場合は通常のクレーム、警告などでなく、もっと露骨なものだった>
<格差社会の暗部で、弱者が借金漬けにされている。デフレ経済下、大手消費者金融会社は低所得者層を貪り、肥大化してきた。いま、その甘い蜜を求めて大手銀行と外資企業が争奪戦を演じている。その一方で、多重債務に陥った利用者は、ヤミ金に全てを奪われた挙句、深い闇に沈められる>
今年4月14日、アイフルは国内1900店全店の業務停止命令を受けた。不正が検察に摘発され、広告を自粛するようになって、ようやく批判が本格したという感じだ。ここにきて朝日新聞、毎日新聞、東京新聞はさかんにその罪状を書き立てているが、金の切れ目が縁の切れ目ということだろうか。これも遅きに失したという感じだ。
私の知る限り、消費者金融の問題を当初から詳細に報道し続けたのはNHKの「クローズアップ現代」くらいである。私がこの番組を大いに評価するゆえんだ。
ところで、小泉構造改革の大応援団になったトヨタの年間の宣伝費は810億円あまりで、消費者金融各社の合計をもしのいでいる。マスコミがトヨタや経団連の提灯記事を書きたくなるのも分からぬではない。なお、マスコミが次期首相確実と書きたてている阿倍官房長官の奥さんは、泣く子も黙る大手広告代理店「電通」の出身らしい。
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