橋本裕の日記
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2006年05月29日(月) トヨタの借金は10兆円

 もし、年収1400万円の人が、1億円借金をしていたら、おそらく健全な財政体質とは言わないだろう。しかし、日本の自治体や企業のなかには、こうした借金体質を抱えるものが多い。

 たとえばトヨタといえば、年間の純利益が1兆3722億円もある世界的超優良大企業である。しかし、このトヨタが10兆円もの借金を抱えていることはあまり知られていない。

 トヨタの場合、貸借対照表にある「有利子負債」の合計は、10.4兆円である。一方で資産が28.7兆円あるので、「有利子負債比率」は36.2パーセントということになる。

 これはソニーの10.4パーセントや、松下の7.6パーセントと比べてもかなり高い値である。一般に10パーセント以下が、健全な財政体質だと言われている。

 「貸借対照表」で見る限り、トヨタの財政体質はそれほど堅実とはいえない。借金しない企業として堅実財政が売りだったトヨタだけに、これはちょっと意外なことである。

 ベストセラー「さおだけ屋はなぜ潰れないか」の著者で、公認会計士の山田真哉さんは、貸借対照表から浮かび上がってくるトヨタのイメージについて、「週刊現代」6/3号にこう書いている。

<トヨタの場合は、借金を重ねつつ、借りた資金で事業拡大に務めていると言っていいでしょう>

 なぜ、借金をしてまで図体を大きくするのか。その答えは「買収されないため」であろう。この十数年間で企業をとりまく環境は劇的に変化した。小さな会社は簡単に大きな会社に呑み込まれてしまう。借金をしてでも、大きくならざるをえないわけだ。

 山田さんはトヨタについて、会計士の立場から他にも意外なことを指摘している。それは、トヨタは世界企業だと言いながら、営業利益のほとんどは日本で出していることだ。つまり1.8兆円ある営業利益のうち、1兆円あまりを日本市場で稼ぎ出し、北米での利益は5千億円に満たない。

 さらに興味深い事実がある。それはトヨタが金融事業部門でも1兆円もの売り上げ高を出していることだ。消費者金融大手三社(アコム、プロミス、武富士)の売り上げが1.2兆円だから、トヨタが金融業者としても屈指の存在であることがわかる。

 もっとも企業が本業で赤字を出しながら、金融部門で儲けているのはアメリカのGMもそうだ。もはやほとんどの巨大企業が実質は金融産業化していると言ってもよい。

 たとえばソニーはエレクトロニクスが売りだが、実はこの部門は300億円の赤字である。一方で金融事業は1900億円もの利益を出し、全体で1913億円の利益の大半は、ソニー生命の金融商品が稼ぎ出しているわけだ。

 先日発表された郵政公社の決算をみると、売上高(経常収益)が23兆円で、純利益は1兆9千億円を越えている。これは第2位のトヨタ(1.37兆円)、第3位の三菱UFJ(1.18兆)よりもはるかに大きい。しかもその利益の大半を株式運用益(1.24兆円)が占めている。

 ついでに今話題のソフトバンクを見ると、営業利益の稼ぎかしらは一応「ヤフー」からあがる広告収入を主な収入源としている「インターネット・カルチャー」の740億円だが、じつはこれとは別に株式投資でもっと大きな利益をあげている。「投資有価証券売却益」をみると、これが1700億円もある。つまりソフトバンクもまた、副業の投資事業で企業の利益の大半を稼ぎだしているわけだ。

 なお、山田さんは企業の体質を測るのには、売上高ではなく、「儲ける力」を表す「収益性」をみなければならないという。トヨタの収益性は約10パーセントだが、住友金属工業はその2倍の20パーセントほどもある。

 さて、もう一度、有利子負債比率に話を戻そう。トヨタの36.2パーセントという高い値は大丈夫だろうか。これについて、山田さんはこう書いている。

<企業にとって借金は身体を蝕む「ガン」ではありません。言うなれば、体に負担をかける「脂肪」みたいなもの。脂肪が多いと雪山で遭難したとき、長生きできるかも知れませんから、必ずしも悪いとは言えないのです>

 トヨタは巨大借金企業だが、日本やアメリカもまた巨大借金大国である。山田さんなら、これらの借金大国の実力をどのように読み解くのだろうか。


橋本裕 |MAILHomePage

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