橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2002年08月11日(日) クラゲのまじない

 クラゲに刺された皮膚の炎症がひどいので心配になって「クラゲの毒」についてインターネットで調べてみた。日本の海岸にもっともなじみ深いのは、ミズクラゲやアカクラゲだが、日本海には無色透明の「キタカギノテクラゲ」がいる。

 体が透明で傘の直径が15〜25mmと小型なため目に付きにくい。海藻類の繁茂した磯回りを泳いでいて、特にクラゲらしきものも見当たらないのに、露出した皮膚にピリピリした痛みを感じたときは、このクラゲによる被害が考えられるという。

 私がこれまで受けた被害はほとんどこれらのクラゲのようだ。しかし、二日目になってもまだ私の顔は膨れ上がり、お岩さん状態が続いている。妻は私の顔を見て、赤く膨張した鼻に腫れ上がった唇が三角に突きだした案配が、「カラス天狗」にそっくりだと言う。

  たのしみはクラゲの毒で腫れた顔
  カラス天狗と皆で笑ふとき    

 こんなにひどい目にあったことははじめてだ。顔面ということもあるが、クラゲの種類も違っていたのかもしれない。そこで、もう少し調べてみた。そうしたら、アンドンクラゲの名前が浮かんだ。これは北海道以南の日本海および青森県以南の太平洋に棲息していて、遊泳力、刺胞毒ともに強いことで知られているという。刺されると激しく痛み、火傷に似た炎症を起こすらしい。まさに私の顔が火膨れのケロイド状態である。どうも、これの可能性がつよい。

 このクラゲは英語圏では「海のスズメバチ」(Sea Wasp)と呼ばれ恐れられているという。この仲間には毒の強いものが多く、国内では沖縄近海に時として死亡原因となるハブクラゲ(Chiropsalmus属)が、オーストラリア北部沿岸には最強の殺人クラゲ;キロネックス(Chironex属)が生息しているという。こんなおそろしいやからに刺されたのだとしたら、たしかにたまらない。

 クラゲに刺された場合は、いきなり拭い取ろうとすると、まだ発射していない刺胞を広範囲に広げてしまうため逆効果となる。タオルや手ぬぐい等(素手は不可)のきれいな部分で患部をつまむ様にして、皮膚に残った触手を取り除くのがコツらしい。

 その前にアルコールやアンモニア水を患部(触手)に振りかけて無害化しておけばより安全だという。そう言えば、私は小学校で蜂やクラゲにさされたら、ションベンを掛けろと教わったような気がする。トイレに駆け込んで、自分の小便を顔になすりつければよかったのかも知れない。

 浜茶屋の人に助けを求めたら、キンカンを貸してくれた。これを顔に塗ったらよけいに痛くなったので、あわてて水で流したが、あとで薬局の人に聞くと、キンカンは顔や局部に使ってはいけないとのこと。やはり、小便を塗るのが一番いいのかもしれないと思ったが、これはちょっと相手が妙齢の薬剤師だったので訊きそびれた。

 ただ面白かったのは、浜茶屋で顔を洗っていると、近所で漁をしているという老人がやってきて、「私なんかどれだけクラゲに刺されたかしれない。私の言うとおりするれば治るので安心しなさい」と言って、私を砂浜に坐らせ、ある治療をしてくれたことだ。

 その治療というのは、砂浜の上に指で○を書いて、その中に漢数字の九をひとつ書くというそれだけのことだった。ちょっと拍子抜けだったが、老人に言わせると、これが一番よくきく治療法で、彼等浜の漁師はこの流儀でなおしてきたそうだ。

 患部が広範囲にわたる場合や頭痛・嘔吐・発熱・呼吸困難などの全身症状がある場合には直ちに医師の処置を受ける必要があるそうだが、私の場合は、発熱や呼吸困難などの全身症状までは至らなかった。これはたしかに老人の「まじない」が利いたのかもしれない。

 インターネットで調べると、「クラゲに刺されたら、基本的にはただ痛みをこらえるしかない。治療法はなにもない」と書いてあった。そうすると案外この老人の治療法は合理的だったとも言える。

 キンカンを塗ったり、湿布をしたりと、余計なことをすれば症状を悪化させるばかりだが、しかし何もしないのでは、パニック状態に陥っている被害者に安心を与えられない。そこで「おまじない」が登場するわけだ。老人の教えてくれた「まじない」と言葉で、私は随分気持がらくになった。

(参考サイト) 「毒をもつ生物」 
         http://www1k.mesh.ne.jp/asamushi/doku2.htm

<今日の一句> ふるさとの クラゲに刺され 天狗顔  裕 


橋本裕 |MAILHomePage

My追加