橋本裕の日記
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2001年12月07日(金) 簡潔さを求めて(2)

 簡潔に書くことについて、具体例を上げて考察しよう。与えられた文章は「私が妻と結婚して30年間の歳月がたった。したがって、私は妻に感謝したい」というものである。この文章を藤本流文章術で彫琢してみよう。

� 嶌覆鳩觝Г靴藤械闇�間の歳月がたった。妻に感謝したい」
 「私が」「私は」という主語を省くことで自然な文章になる。また、「したがって」という接続詞も省略する。

�◆ 嶌覆鳩觝Г靴藤械闇�間がたった。妻に感謝したい」
 「の歳月」を省いたのは、こうした「手垢の付いた常套句」をなくして、文章をすっきりさせたいからだ。

��「結婚して30年間がたった。感謝したい」
「妻と」を省いたのは、「結婚」は妻とするものだからだ。同様に、「妻に」も前後の文脈を考えて、省く。むだな修飾語を削ることで、文章が引き締まる。

�ぁ峽觝Г靴藤械闇�。感謝したい」
「がたった」は不要。さらに、「間」も省いた。

�ァ嶌覆箸裡械闇�。感謝したい」
「結婚」という抽象的な言葉を、具体的に表現すると、「妻とともにいること」だろう。そこで、「結婚して」という観念語を、「妻との」という具象的な表現に置き換える。これで、文章が魔法のように生きてくる。

 再び二つの文章を並べてみよう。
「私が妻と結婚して30年間の歳月がたった。したがって、妻に感謝したい」
「妻との30年。感謝したい」
 単語の数が半分以下になって、文意は明確、含蓄も深くなった。並べてみると、最初の文章が駄文であることがわかる。

 もとの文章の中で、ほんとうに大切な単語は、「妻」「30年」「感謝」という3つである。彫琢することで文章の精度や純度が高まる。対象に対する認識を深めて物事の本質を明らかにすることができる。簡潔な表現の力強さや含蓄の豊かさが、深い感動をよびおこす。

 一般に、日本語らしい自然な文章を書くために、次のポイントが大切だという。
�ー膰譴篝楝鎧譴鮠覆�
��慣用句などの月並みな表現を使わない。
�4愀源譴鮖箸辰進J犬話永犬砲垢襦�
�ぁ嵌燹廖◆嵌狃�」「その」「あの」などの代名詞や冠詞を多用しない。
�ゴ崚蟷譴筌�ノマトペ、形容詞などの修飾語を多用しない。
�γ蠑欷譴鯣鬚韻襦�(具体的な名詞、もしくは動詞で置き換える)

 私自身の感想を付け加えるならば、文章にとって大切なのは「間」ではないかと思う。文章を簡潔に書くことによって、「間」が生まれ、含蓄が生まれる。文章が生き生きとしてくる。

 そして、さらに大切なのは、明確な問題意識をもち、問題の本質を洞察する直感力をたかめることだろう。「人生についての二十一章」に書いた言葉を、私自身への自戒として、最後に引用しておこう。

「饒舌は彼がまだ問題の本質をつかんでいないことの証しである。物事の核心に触れた言葉は簡潔で、恐ろしい力がこもっている」


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